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最強のハンター、神の光を拾う。〜滅びゆく世界で俺はもう一度守りたい〜  作者: 蛮ニル
第4章 合理の名で壊れるもの

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【第100話 届いた光】

挿絵(By みてみん)


 通路の照明が、ひとつ灯る。


 次が灯る。


 さらに奥で、もうひとつ。


 巨大な浮遊要塞の内部で、

 道は一本だけ生まれていた。


 ルコールは歩く。


 足音は静かだ。


 だが胸の奥が、重い。


 戦場では感じない重さ。


 これは――恐怖だ。


 間に合わなかったあの日と、

 同じになるかもしれないという恐怖。


◇ ◇ ◇


『……はやく』


 セラの声が、かすれている。


 意識を削っているのが分かる。


「分かっている」


 短く返す。


 だが足は自然と速くなる。


◇ ◇ ◇


 血の匂い。


 冷えた空気。


 重厚な隔壁。


 ここだ。


 手を伸ばす。


 指先が、震えている。


 自分でも気づかないほど、

 わずかに。


◇ ◇ ◇


 封印が外れる。


 最後のロックが落ちる。


 扉が、開く。


◇ ◇ ◇


 白い光が満ちる部屋。


 改造台。


 絡み合う導管。


 そして――


 中央に、拘束された少女。


◇ ◇ ◇


 時間が、止まった。


 足が動かない。


 呼吸が浅くなる。


 目を逸らせない。


◇ ◇ ◇


「……セナ」


 声が、崩れた。


 戦場で崩れたことのない声。


◇ ◇ ◇


 瞼が震える。


 ゆっくりと、開く。


 淡い光を宿した瞳。


 その色を、

 忘れたことは一度もない。


◇ ◇ ◇


「……ルコール」


 名前を呼ばれる。


 ただそれだけで、


 胸の奥に固めていたものが、

 一斉にひび割れた。


◇ ◇ ◇


 怒り。


 後悔。


 罪悪感。


 救えなかった夜。


 抱きしめられなかった記憶。


 全部が、押し寄せる。


◇ ◇ ◇


 ルコールは動けない。


 触れた瞬間に消える幻のようで、

 信じきれない。


◇ ◇ ◇


挿絵(By みてみん)


「遅い」


 セナが、弱く笑う。


 その言い方が、

 あまりにも昔のままで。


◇ ◇ ◇


 ルコールの喉が鳴る。


「……悪い」


 短い言葉。


 だが続きが出ない。


 本当は違う。


 遅いなんてものじゃない。


 守れなかった。


 連れ帰れなかった。


 失わせた。


◇ ◇ ◇


「……守れなかった」


 気づけば、漏れていた。


◇ ◇ ◇


 セナは、ゆっくりと首を振る。


「守ってくれたよ」


 息が浅い。


 それでも、はっきりと言う。


「兵隊さんが、あのとき……抱きしめてくれたから」


 ルコールの視界が、揺れる。


◇ ◇ ◇


「だから、わたし……怖くなかった」


 その言葉が、刃になる。


 自分を責める刃ではない。


 許す刃だ。


◇ ◇ ◇


 視界が滲む。


 瞬きをする。


 こぼれない。


 こぼれないが――


 確実に、限界は近い。


◇ ◇ ◇


 ルコールは一歩、近づく。


 拘束具に触れる。


 冷たい金属。


 だが少女の体温はある。


 確かにある。


◇ ◇ ◇


「……迎えに来た」


 やっと出た言葉。


 それだけでいい。


◇ ◇ ◇


 セナの瞳に、光が溢れる。


 泣かない。


 だが、光が滲む。


「うん」


 小さく頷く。


◇ ◇ ◇


「また、来てくれた」


 宝物を確かめるように言う。


◇ ◇ ◇


 ルコールは、ようやく正面から彼女を見る。


 細い。


 傷だらけだ。


 だが折れていない。


 心が折れていない。


◇ ◇ ◇


「当たり前だ」


 声は低い。


 だが震えは消えている。


「俺は――」


 一瞬、言葉が止まる。


 喉が詰まる。


 だが、言う。


「お前を、置いていかない」


◇ ◇ ◇


 セナの瞳から、ひとすじの光が零れる。


 涙ではない。


 光だ。


◇ ◇ ◇


 その光を見た瞬間。


 ルコールの中で、

 最後の堤防が崩れかける。


 だが耐える。


 ここで泣けば、

 彼女を不安にさせる。


◇ ◇ ◇


「……帰るぞ」


 強く言う。


 今度は、迷いがない。


◇ ◇ ◇


 部屋は静かだ。


 改造は終わっている。


 変異はまだ始まらない。


 今だけは――


 戦争も狂気も、

 二人の間に入れない。


◇ ◇ ◇


 要塞の最深部で。


 二つの光が、再び向き合った。


 拾われた光。


 拾いに来た光。


 まだ、嵐は来ない。


 だが近づいている。


 それでも――


 今この瞬間だけは、


 救いだ。


(第100話 了)


※他作品も連載中です。

勤労に感謝を。働き続けた男の、転生スローライフ

https://ncode.syosetu.com/n1113lt/

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