エピローグ つまり、言いたいことは
―――と、こういった次第なのだ。
うん? 結局何が言いたいのか分からない?
なんと、予想外に理解力が乏しい人間だな、君は。
俺と同じようにめいちゃんも周りから浮いていることを思い悩み、隠して生きてきたということではないか。その心を察するや……、たった一人で秘密を抱えてさぞや苦しんできただろう。俺に打ち明けるのもどれ程勇気がいったことか……。
え? だから、なぜ俺がこんな話をしているのかが分からないって?
まったく、君の言葉には呆れるな。呆れすぎて言葉が出てこないよ。
いいか、俺はずっと、周りよりほんの少しだけ浮いているという秘密を抱えているのは自分だけだと思っていた。それがいかに孤独なことであろうとも、自分の正体をみだりに明かしたりしないのがヒーローの美徳だと思えば、いくらでも耐えられた。
しかし、めいちゃんは違う。
か弱いめいちゃんは守られるべき存在であり、俺にとってはヒロインそのもの。そもそも、孤独を抱えて生きること自体があり得ない女性なのだ。
そこで俺は思った。同じように浮いている人間が他にもたくさんいれば、これ以上めいちゃんを苦しめるものは無くなるのではないか、と。
これ程近くに同じ能力を持った人間が二人もいたのだ。他にいないとは限らない。むしろ、俺が思っている以上に多くの人間が、この能力を有しているかもしれない。
だから俺は、俺の最大にして最高の秘密を君に話そうと思ったのだ。話して、そして、君や、今君の隣にいる誰かを「仲間」にするために。
さあ、それじゃあ、立って試してみてくれ。
やり方はもう分かっているな? 近くにある紙を一枚、足の下に通してみるだけでいい。もしかしたら、気付いていないだけで君も浮いているかもしれないぞ?
何? もし本当にそうなら気付かないわけがないだって?
いいや、君は分かっていない。薄い紙一枚分というのは、本当にごく僅かな隙間なのだ。気付かず、普通に立っていると思い込んでいたとしても何らおかしなことではない。
思い出してみろ。ある時から急に足元がおぼつかなくなり、よく躓くようになったということはないか? やけに足が引っ掛かるなと思ったことはないか?
足に違和感を感じる、誰にでも起こりうるそれが兆候なのだ。その経験がある限り、可能性は十分にある。
どうしてめいちゃんのためにそこまでするのか、だと? ふん、そんなもの愚問だな。ヒーローがヒロインのために死力を尽くすのは当然のことだ。
さあ、騙されたと思って一度やってみろ。紙一枚分なんて、地面との接触度が浅いだけで簡単に通る。話を聞いていて、紙一枚なら簡単に通りそうだと君も思っただろう?
え? ああ、分かっているとも。もし君が失敗したとしても、君が真剣に試そうとしたことは他の誰にも話さない。俺はまた同じように、他の人間に俺とめいちゃんの話をするだけだ。
ああ、分かってくれるならそれでいい。よし、それじゃあ立ち上がってそこの紙を―――……。
―――ほら、君も試してみたくなっただろう?
―Fin―
これにて、本作は完結です!
倫太郎のヒーローぶり、いかがでしたでしょうか?
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