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マッチングアプリで知り合った男の本名が名は体を表す過ぎた件

作者: 朽木貴士

夜の街。

街灯やネオン、店内から溢れる電気などでギラギラと輝く、美しくも恐ろしい世界。


家路を急ぐ者、未だ働く者、路傍で立ち尽くす女、それに話しかけ、何処ぞへと2人で向かっていく男。


少し路地の裏に入れば、ドギツイ柄の入ったシャツの上からパキパキのジャケットを羽織い、更にそれを着崩したイカツイ顔の兄ちゃんが、地べたに這いつくばって許しを請う血みどろのナニカを、タバコをふかしながら踏み付け、その懐から財布を奪い去っていく。


そんな闇と欲望渦巻くキラびやかな世界で、人々は今日も我関せずと自らの日常を生きている。


「あんたが『りん』?」

「……。そう言う貴女は、『マコっち』さん」


 犬の像の前で、その台座に寄りかかりながら腕を組み目を閉じて立ち尽くしていた男に、一人の女が話しかけた。


「えぇ、そうよ。それじゃあ行きましょうか。にしても……見た目のわりに随分と可愛い名前をつけんのね。『りん』」


 『マコっち』と呼ばれた女の言葉通り、その男は『りん』などと言う名前が似合う風貌ではなかった。褐色肌で筋肉質、身長は2mにも迫る。The・漢! って感じだったのだ。


「本名ですから」

「ふぅん、そっか」


 女に深く立ち入る気はなかった。

 彼女たちは、ワンナイトラブ目的でマッチングアプリで知り合った関係だったのだ。




◇◇◇




「えっ……デカすぎん……?」

「いやいやいやいや!! キツイって! 無理だって!! ヤバいって!!?」

「あぁぁああああァァァァ!♡」

「はっ、えっ、ちょっ!? まだ出んの!?」

「もう無理もう無理もう無理もう無理もう無理もう無理!!! 流石に無理ぃぃ!!?」

「お゛お゛っ♡」

「はぁっ、はぁっ……すきぃ……♡」




◇◇◇




「ねぇ『りん』。やっぱさ、ワンナイトじゃなくてこれからも会おうよ。ねぇ、良いでしょ〜?」


 蕩けたような表情で、あまあまな猫撫で声で『りん』にしなだれかかる『マコっち』。

 彼女はすっかり、『りん』の虜になっていた。


「あぁ、構わないぞ。俺もお前のこと、もっと知りたいと思ってた所だ。結婚を前提に付き合ってくれ」

「えぇっ!? ちょっ、いきなりそこまで行く!? 私、普通にオトモダチからのつもりだったんだケド……」

「お前は俺を受け止めきれた大切な存在だ。手放したくないんだ。駄目か……?」


 顎クイしながら真面目な顔で『マコっち』を見つめる『りん』。


「ま、まぁ……良い、です、ケド……///」

「そうか。良かった……」

「なんか、いざ恋人ってなると照れるね……。あ、私、本名は真って言うの。如月真。あんたは?」

「俺は、糸色倫(いとしきりん)。今までと同じでりんで良い。これから宜しくな、真」

「うん! へへへ……」


 なんて返事をしながらも、真は一つ思うことがあった。


──名は体を表す過ぎないっ!?




 




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