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大ピラミッドの石を積み上げることは不可能なのか?  ③

ここで、この話の前提になるものを整理しておこう。


まず、大ピラミッドを構成する石材について。

基本的に二種類の石種である。

正確にはその他に日干し煉瓦というものもあるのだが、今回のテーマから考えて除外してもいいだろう。


ひとつ目。

その大部分を占める石灰岩である。

そして、ここがひとつポイントになるのだが、石灰岩とひとくちに言っても、目の細かさによって特上から下まで様々な質のものがある。

そして、その最上級のものは非常に目が詰まっているものとなる。

そして、この最上級の石灰岩は当然採石できる場所が限られるが、そのような上質なものだけを求めないということになれば、エジプトの北部では砂漠の砂を掘り返せばどこでも手に入れることができる。


ピラミッドを構成する石材の種類のもうひとつが日本では墓石の素材でおなじみの御影石、花崗岩となる。

この花崗岩については利用する場所が限られる。

大ピラミッドでいえば、玄室だけ。

正確にはその上の重力軽減の間や石棺、それから通路封鎖用の石などにも花崗岩は使用されているが、全体から見ればほんの僅かである。

ついでにいっておけば、ピラミッドの頂上、キャップストーンが純金だったというのは正確な情報ではない。

大ピラミッドの頂上が純金ではないという直接的な証拠にはならないが、一代前の赤ピラミットのキャップストーンの破片が石灰岩だったことから、金メッキだったことはあっても純金製ということはないように思われる。


さて、花崗岩に話を戻そう。

こちらについてはエジプトの南部でのみ採石できるため、北部に集中する巨大ピラミッド建造に使用するには長距離運搬が必要となる。

しかも、硬い。

それこそ現代の機械などないのですべて人力で切り出すので手間もかかる。

そういうことでコスト的に大々的にこの石を利用するのは困難。

逆にいえば、ひとつのピラミッドでどれほどの花崗岩が使用されているかでその王の権力基盤がわかるともいえる。

たとえば、ギザの三大ピラミッド。

クフ王のピラミッドが150m近くあるのに対し、メンカウラーのピラミッドは60mほどしかない。

ただし、高価な花崗岩の使用箇所は圧倒的にメンカウラーのピラミッドの方が多い。

なにしろ、クフのピラミッドは最上級のものとはいえその外装に張りつけられたのは石灰岩だったの対し、メンカウラーのピラミッドはその三分一は花崗岩だったのだから。


ついでに言っておけば、外装に花崗岩を使用する理由だが、某日本人エジプト学者は上下エジプトの統一を示す的なことを語っていたが、これが正しいという根拠はなく、私自身がドイツの有名なエジプト学者ライナー・シュタデルマンにこれについて問うた時、答えとして口にした冗談交じりの「おしゃれ」というのは実は正しいようにも思える。

そして、この外装に花崗岩を使用する仕様はメンカウラーの父でギザにあるもうひとつのピラミッドの建造者カフラーと思われているが、実際はカフラーの先王でクフの後継者ジェドエフラーのアブラワシュのピラミッドである。


さて、とりあえず石種を説明したところで、今回の本題である。


これは一昔前まではテレビの影響、最近では動画の影響なのだが、大ピラミッドを構成していた230万個ともいわれる石はすべてナイル河を利用した船による運搬でギザまで運び込まれたと信じている者も多い。

だが、実際にそのような方法で運搬されたのは南部から運ばれる花崗岩、それからギザの対岸から運び込まれた外装用の上質の石灰岩だけであり、それ以外はすべてピラミッドの目の前から掘り出された石材が使用された。


つまり、水運で230万個の石を運んだわけではないのである。


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