バレンタイン
自身がROM専で参加させて頂いております「小説家の集い」のバレンタインデー企画に参加させて頂きました。
企画参加も小説を書くことも初めてですが、お手柔らかにお願いします。小学生の作文だと思って読んで頂ければ。
至らない点もあると思いますが、最後まで読んでいただけるとありがたいです。
キャラクター
沢島美幸・・・34歳。会社員。
天目海人・・・16歳。高校一年生。
天目佐恵子・・・海人の母親。
男女ともに落ち着かない日。お店が、世の中が、余計なお世話を焼く日。男女の戯れがやたら目に付いてしまう日。
二月十四日。
去年までの私ならもう縁のないイベントとして、考えないようにしていただろう。社内で会話が出ても基本的に流していた。
友チョコや義理チョコを配らないといけない雰囲気が一時期あり、面倒ではあるが付き合っていた。
だが、数年前新入社員の子が悲痛な叫びをあげる事態になってしまったこともあり、この面倒な社内文化はなくなった。
私としてはありがたいことだけど、想い人がいる子は口実がなくなってしまい不機嫌。男性社員も心なしかこの日は気が立っているように思える。
そうなるくらいなら食事にでも誘えばいいのに・・・。と考えてしまうが、まあ、あからさますぎて一歩が踏み出せないのだろう。
もはや他人事のようになっていたバレンタインだが、実は今年は違う。
午後休をとってある。
今日という日に半休を取ったこともあり周りには茶化されたが、周りには適当に誤魔化した。
今日は帰宅後、隣に住んでいる息子の面倒を見るのだ。
隣の天目家はシングルマザーで家を空けることが多く、息子がよく一人でいる。
一度面倒を見てあげた時に親子ともにえらく気に入られ、今では定期的に息子の面倒を見ている。
面倒を見始めた頃はまだ小学2年生で甘えん坊な可愛い子供という感じで、反応が可愛いこともあり時々からかったりしては反応を楽しんでいた。
けれど、年を重ねるにつれて男らしく振舞おうとしているのか、不器用ながらかっこつけることが多くなった。
反応が可愛いので変わらずからかって楽しんでいたが、いつしか胸の高鳴りを感じている自分がいることに気付いた。
自分がいたずらをする度に思った通りの反応を返してくれる。わざと不機嫌な態度をとると必死にご機嫌取りをしてくる。彼に何かをしてあげる度に感謝をしてくれる。
こちらがご機嫌取りをし、感謝はされず、たとえ自分がいなくなったとしても変わらず動き続けるであろう仕事と違い、面倒を見てあげている時間だけではあるが今この瞬間彼の行動を握っているのは自分だ。
心が満たされている感じがした。
どうやら私は支配欲が強く、自分より非力な可愛い子を支配していることにトキメキを感じてしまっているらしい。トキメキは平静を装っていても早い鼓動と少し荒い息遣いとして体に表れる。
高まった動悸を脳が錯覚してしまっているのか、彼のことが愛おしくなっている自分がいる。
愛おしい気持ちは日に日に強くなっていき、いつしか本当に好きになってしまった。
好きになってはいけない背徳感も後押ししたのか好きな気持ちはどんどん抑えられなくなっていく。
このままでは勢い余って押し倒して既成事実を作ってしまいそうだ。
いつから自分はこんな変態になってしまったのか・・・。
これはいけない恋だと自分に言い聞かせながら普段通りからかい好きのおばさんとして世話をしていた、そんなある日のこと。
「美幸おば・・・ちゃん・・・。僕と付き合ってよ・・・」
10才になった彼は突然告白をしてきた。
―時が止まったようだった。
懐かれているとは思ってはいたが、まさか両想いだったとは・・・。
今までの自分が興奮した時の思い出と彼の告白がグルグルと脳内で反芻する。
「・・・・」
「・・・だめ?僕のこと好き・・・じゃない?」
―ずるい!上目遣いで見てきて!襲いたくなるじゃない!
了承してあげたい気持ちと押し倒したい気持ちを抑えつつ言った。
「あと6年・・・。海人君が16歳になった時にまだおばさんのことが好きだったら付き合ってあげる」
「約束だよ?絶対だからね?」
最近の子はませてるし、中学生活を送っている間に恋人でもできるだろう。その頃には自分は30歳を越したおばさんだ。
期待はせず変わらず彼の面倒を見てあげよう。そう言い聞かせながら以降も定期的に彼の面倒を見続けた。
―そんな彼が16歳になった。
「美幸おば・・・。美幸・・・さん。俺16歳になったよ。これで付き合える?付き合ってくれる?」
まだ彼は私のことを思ってくれていたようで、自分の誕生日の日に告白してくれた。
嬉しかった。
親にいつ会話が聞かれてしまうか危うい状況だったこともあり、返事はバレンタインの日にでもゆっくり聞かせてよと言われた。
どうやら、バレンタインの日は一日家に一人らしい。佐恵子さんに想い人でもできたのかもしれない。
佐恵子さんには「こんな日に面倒みてもらってごめんね」と言われたが、彼からしたら都合が良かったようで、終始にこやかだった。
そんな彼に返事として今日チョコを送る。
“もちろん本命チョコを返事として。”
世間的には終わっているが、両者の同意があれば法律的には大丈夫。多分大丈夫。多分。
考えれば考えるほど冷や汗が出てくる。
―けど、ずっと我慢していたんだし良いじゃない。ちゃんと16歳になるまで待ったんだから。才じゃなくて歳で表現しても違和感を感じなくなる年齢になるまで待ったんだから・・・。
自分は偉いと言い聞かせ、考えるのをやめた。
* * *
いつも通りの殺風景な部屋。大量の書類のある会社のデスクと違って、テーブルには何もない。
しかし、今日のテーブルはいつもと違ってにぎやかだ。
甘くしたコーヒーを入れたコップ二つとお菓子、装飾された小包みに、溶けたチョコでいっぱいのラップされたボウル。
委員会で居残りをしている彼を待ち夕飯を作る。
今日の夕飯はニラレバ炒めとサラダ、玉ねぎとじゃがいものみそ汁。
お弁当を買って済ませることが多かった自分だが、佐恵子さんに教えてもらい料理をするようになった。
彼の面倒を見始めて作ってあげたいと思うようになったからだ。
以降、自炊する機会も増え、それなりにレパートリーは増え味も安定するようになった。
―浮いた話のない上に自炊もしない私の将来が心配だと嘆いてた母も料理するようになってからは小言が減ったし、天目家さまさまだなー。
鼻歌交じりに料理を続ける。
やがて完成に近づいてきた頃、彼が学校から帰ってきたことを知らせるようにチャイムが鳴った。
「こんばんはー!」
「いらっしゃい」
「今日はよろしくお願いします」
「いいのよ。いいのよ」
「今日さー。学校でさー」
「―」
「―」
――――――――――――――――
―――――――――
――――…
いつも通りの日常。
ご飯を食べ終えた頃、ずっとテーブルにある包みをチラチラ見ている彼に話を振ることにした。
「今日はバレンタインだねー」
「・・・」
「・・・」
「み、美幸さん。俺16歳になったよ・・・。昔の約束覚えてる?」
─遂に来た。この時が。
「うん」
すぐに了承しないで、反応を見ることにする。
「そ、そのさ・・・」
「うん」
「お、俺さ。美幸さんからしたらまだまだガキだけど」
「うん」
「見合う男になれるよう頑張るから」
「うん」
「美幸さんに喜んでもらえるよう頑張るからさ」
「うん」
「そ、そのさ。美幸さん的にはどうなのかなーって」
「・・・」
「や、やっぱり俺じゃ無理かな」
「はい。こちらバレンタインチョコ」
「あっ!あ、ありがとう・・・ございます」
「本命だよ?」
「へっ!?あ、え?ってことは・・・?」
「ふふふ、いいよ。付き合いましょ」
「やった!ほんとに!?いいんだね?後からなしとかダメだよ?」
「はいはい。ふふふ」
彼はニヤニヤしながらスマホを触りだす。
友人に報告でもしているのだろうか。
私は嬉しそうにしている彼の顔をじっと見つめた。
彼は耳が赤くなっていく。
何度かこちらに視線が移るがすぐにスマホに戻してしまう。
「デートとか、これから恋人らしいこといっぱいしていこうね」
「う・・・、うん」
「恋人はいたことあるの?意外と女の子の扱いに慣れてたりするのかな?」
「あっ、いや、いたことないです」
「ご飯は美味しかった?」
「うん」
「精がつくよう頑張って作ったからね」
「え?う、う・・・うん?」
「そういえば今日はお母さんいないね」
「へ!?あ・・・」
不自然な敬語とつなぎ言葉が多くなる。
「・・・」
「・・・」
私が話しかけるのをやめると会話が止まった。
「・・・」
「・・・」
沈黙が続く。
緊張しているのかいつもと違い彼からなかなか話さない。
顔は赤く、頻繁にコップを口につけては離してを繰り返している。
私が顔をじっと見ているからか、視線はずっと泳いでいる。
「かいと君は照れ屋さんだねー。あんまり目も合わせてくれないし。これで本当にお付き合いしていけるのかなー?」
彼の顔に向けて手を伸ばす。
「あ」
自分の腕が当たりコップが倒れシャツにコーヒーがかかる。
白いシャツがじんわり黒く汚れていく。
まるで自分が純粋な彼を汚しているのを暗示しているようだ。
抑えきれず自分の息が荒くなってきてしまっているのを感じる。
そう。わざとだ。
上着を脱がすためにわざとコップを倒した。
─ああ。これから自分はこの子を汚すんだ。
まだまだいくらでも青春があるかもしれない彼を自分が汚してしまうんだ。縛ってしまうのだ。
後から私と恋人になったのを後悔するかもしれない。でも、その時はきっと学生時代は終わって手遅れで。
年増の自分が若い青春を奪ってしまうんだ。
気持ちに抑えがきかなくなってきて彼を急かす。
「ほら、服を脱いで。脱いで」
私が脱がそうとすると恥ずかしいのか急いで自分で脱いでいく。
華奢な上半身があらわになる。
「ところでぇ」
「逆チョコって知ってる?男の子が女の子にチョコをあげることなんだけど、今までバレンタインに縁がなかったからちょっと憧れあるのよねぇ」
「で、でも、俺・・・、チョコないよ・・・?」
「ふふふ」
思わず笑みがこぼれる。
ボウルから手一杯にチョコをすくい上げ、手を近づけていく。
「み、美幸さん・・・?」
「そのままじっとしてて・・・♡塗ってあげる♡」
チョコを彼の体に塗っていく度にピクピク動いている。
恥ずかしさからか彼は目を背けている。
心音が大きく、息遣いが荒くなっていくのを感じる。
「・・・いただきます♡」
――――――――――――――――おわり
今回、企画ということで「バレンタインに際して何か小説を書く」ということをしました。基本的にテーマとかは縛りを設けておらず、恋愛とかチョコとか何かバレンタインの雰囲気があれば何でも良いって感じです。
初めて書いてみたのですが、難しいですねー。
状況説明が多くセリフが少ない、説明とセリフを淡々と並べただけで緩急がない、なかなかコンパクトにまとまらない等手こずる要素が多かったです。何とか書き切りましたがこれは黒歴史になるんかなー?(笑)
ラノベを相方と作り出版するなんて妄想していた時もあり、せっかくなので挿絵的なものも付けてみました。デザイナーごっこするの好きなんです(笑)
・・・謎の光入れたし大丈夫だよね?文の内容はエロくないし。
「小説家の集い」はtwitter上で活動しております。LINEのオープンチャット上でもよくワイワイしておりますので、気になりましたらリーダーの天ぷらおうどんさん(@10PURA_OUDON)まで!みんな優しいですよ。