表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

超短編

ぼくと隣のお姉ちゃん




 ランドセルをしょって、挨拶して玄関を出るとお姉ちゃんがいた。

「おっはよー、今日も元気か~少年」

「おはよ、お姉ちゃ――ってなんで頭ぽんぽんすんの~!?」

 お姉ちゃんが手を離すと、ぼくは痛むこめかみを抑える。

「小さい小さい。もっと大きくなれ」

「ぐぬぬ……大きくなったらぽんぽんし返してやっかんなー!」

「期待してるぞ~」

 お姉ちゃんはそう言うと、コートを翻して学校に向かう。

 コートからのぞく制服がすごく大人に思えた。


「というわけで大人になろうと思うんだ」

「がんばれ」

 友人に話すと励ましてくれた。

「大人になるってどういうこと?」

「さあ?そのうちなるじゃん。のんびり行こうぜ」

 ゆっくり話す友人に見切りをつけ、隣の席にいた女子に聞いてみる。

「格好いいことよ」

「カッコいいか!よし、カッコよくなるぞ!」

 ぼくはみんなの前で宣言した。


「このかっこつけがー」

「どの辺が?」

 言われるたびに聞き返し、言われたところを修正する。


「昨日お姉ちゃんが男の人と歩いてた……」

「恰好いい人ってそういうこと気にするかな?」

「そうか!」

 うつむいていた顔を上げ、隣の席にいる女子にお礼を言う。


 ぼくは努力する。

 自分がカッコいいと思えることを。みんなから格好いいよと言われることを。

 お姉ちゃんが通っていた学校に入学した翌年、おねえちゃんは着物を着ていた。

「今日成人式なんだ~」

「つまりぼくよりおばさ……?」

「せめて年上って言え~!」

 お姉ちゃんはぼくのこめかみに握りこぶしをあてると、ぐりぐりしてきた。

「わかった!わかった!ぼくより年上の着物を素敵に着こなせるお姉さん!」

「なら、よし」

 急に手を放すと、お姉ちゃんはなぜか顔を赤らめてそっぽを向く。


 数年後、ぼくは高校の入学試験の結果を見に行く。

「あった!」

 親に携帯で連絡をし終え、校門を出るとお姉ちゃんがぼくを褒めてくれた。

「ふふ~ん。背も追いついたし、今までの分お返しするからな!」

「なんなら今やってみる?ぐりぐりとか」

 急に近づいてきた姉ちゃんに、なぜかドキドキししてしまう。

「ホント大きくなったね~、ってどうしたの?顔背けて」

 お姉ちゃんは昔と同じ笑顔で笑っていた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ