秘術魔眼開眼
かきだめ分はラストになります追放ものとしてなにがダメなんか教えてくれると嬉しいです
「いやぁ~~食った食った」
「そりゃアレだけ食えばな……」
俺とデーヴィッドは夜の街を歩いていた。
家が町から少し歩いた山の方にあるから、二人とも丁度いい酔い覚ましだと笑っていた。
「あー帰りたくねぇ~~」
「急にどうした?」
「今さぁ本家の子が里帰りしてきてるんだよ……」
「で、それがどうした? 可愛いいい子だったな……」
「デーヴィッド……茶化すなよ」
「で、何で帰りたくないんだ?」
デーヴィッドは乾いた土の上にへたり込んだ。
「俺は魔眼が無いからマナの流れが見えないだから、魔力はあっても魔術が上手に使えない……」
「それがどうした? 確かにお前は100年前の希代の大魔術師ランドル・ウォードの親戚だ。だが、お前が絶対に魔術師にならないといけない訳じゃないだろう?」
「でも幼馴染と約束したんだ。魔術師になるって……」
「今アイツは王都にある魔術師育成の学園に通っている……で、俺はどうだ? 学校に通ってお前と駄弁って、クソして寝るだけ……俺はもうどうしたらいいか判らないんだよ!」
「そうかなら丁度いい……その気持ちを後はぶつけるだけだ全力で行ってこい!!」
「でも」
「だってもクソもない。お前は魔術師になりたいんだろう? だったら何が何でも食らいつけ、才能があるやつより才能がないやつの方が多いんだからな……何事も経験って奴だ」
「デーヴィッド……」
イーノスはデーヴィッドを見上げると、デーヴィッドはニヤニヤとチェシャ猫の様に笑っていた。
「ほら迎えも来てるぞ」
デーヴィッドはそう言うと顎をクイっと動かし後ろを見ろと、俺に後ろを見るように促した。
「え?」
その顔に見覚えがあった。と言うよりは俺にとっては肝が潰れる思いだった。
「イーノス君……」
鈴を転がしたような美しい声音で幼馴染の少女マーティナ・ウォードが、イーノスに呼びかけた。
「マーティナ……お前どうしてここに」
「イーノス君がウォード家の会議に出席してないので、心配になって探しに来たんですよ……叔父さんも心配してましたし……」
マーティナはそう言って一緒に戻りましょうと、白く細い手をイーノスに向かって差し伸べた。
俺は酷く惨めな気持ちになった。
「マーティナ俺は、オドやマナを知覚する才能がない……だから俺はお前の使い魔にはなれない……アイツなんてどうだ? 分家のカーティス……カーティス・ベニントン とかさ……」
俺は自分の思い押し殺し、マーティナの事を思ってカーティスを押した。
「私は貴方がいいんです! 貴方じゃなければいけないんです! 私は貴方が望む眼を与えます! そうすれば、貴方が辞退する理由はなくなるはずです!」
マーティナはそう言うと、俺の腕を掴み自分の方に引き寄せ。額に優しいキスをした。
チュ。
湿っぽい音と共に一瞬柔らかい肉の感触が額にした。
額には唾液なのか水分がついており、夜風によって今まで熱を帯びていた水分が、冷たくなって額への口づけが夢、幻でない事を表現していた。
「なっ!」
すると、視界が白い光に包まれた。
小さな蛍の様な光の粒が弾けて暖かい光が俺を包み込んでいる……
見える。見えるぞ!
直観的に分かったこれが、マナ……世界の法則を捻じ曲げるエネルギーであると。
「これがマナなのか?」
「えぇ……これがウォード家の秘術 魔眼開眼です……これでイーノス君は魔眼を得たのです……副作用として発動している間は、余分に魔力を消費してしまう事とオデコの魔法陣が消えない事だけです……やりましたねデーヴィッド」
「あぁ作戦通りだ」
「……これが魔術師の見ている世界……」
俺は魔術師になるために……否。マーティナの使い魔になるために必要不可欠な念願の魔眼を手に入れた。
一端完結にさせていただきます