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「はっ! ザハード家の汚点の分際で随分と偉そうな口をきくじゃあねえか」


「…………ステイル兄様」


 そんなシオンに一人の男が話しかける。

 それは少なくとも友好的ではなかった。ステイルと呼ばれた男の言葉の節々にある棘、そして言葉を受けたシオンの様子からそれは明白だった。


「……兄様? ということはお兄さんですか?」


「……あぁ。僕の一つ上のな」


 両者の間には何やらただならぬ関係がある。今の短い会話だけでその場にいる誰もがそれを理解した。理解できて当然だった。

 オワリも例に漏れずそれを正しく理解していた。なんなら他より二手三手先まで推測できていたと言ってもなんら過言ではない。


 ただ一つ、オワリに足りなかったのは好奇心に任せて他人の嫌がることをしないという倫理観、それだけだった。


「なんだお前。落ちこぼれとはいえ、誇り高きザハード家としての自覚までないのか? 社会のゴミでしかない死刑囚なんかと口をききやがって。それも魔力も持たない欠陥品と? これだから落ちこぼれはダメなんだ。あぁ、けど欠陥品同士でお似合いかもなぁ?」


「……言いたいことはそれだけですか兄様? 今は互いに任務中のはず、言いたいことがないのならこれ以上余計な会話はよしましょう」


「あ? 欠陥品の分際で俺に説教か?」


「…………」


 受け取り手次第ではその場の全てを敵に回しかねないステイルの発言。

 シオンは極めて冷静にそれに対処した。慣れていたのだ。毎日のようにぶつけられる兄からの罵詈雑言には。ここで言い返した所で何か自分にとってのメリットがあるわけではない。それにどれだけ正論をぶつけたところで困ったら「落ちこぼれ」「出来損ない」「ザハード家の恥」なんて言葉でマウントを取ろうとするのだから相手にする価値もない。


 それが分かっていたからこそシオンはそれ以上何も言うつもりはなかった。その結果、たとえ殴られたとしてもこれ以上無益な話を続けるよりはましだと思った。


「……いや、たぶん小物にいちいち構ってられるかってことだと思いますよ」


 だから、オワリがしれっと言ってのけたその言葉にシオンは凍りつき、場は静寂に包まれた。


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