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「…………」
声はない。
ビクビクと一定の感覚ごとに痙攣を繰り返す兄の姿に理解せざるを得なかった。
「うわっ……。これで死んでないとかほんとゴキブリ並みの生命力ですね。国王もどうせならザハード家の人間で研究すればよかったのに」
感情はない。
オワリの淡々とした声に理解せざるを得なかった。
「……っ」
震えた。恐怖からくる震えだ。
では、一体何に対しての恐怖か。
ステイルか。仲こそ良好とは言えずとも兄に命を狙われた事実への恐怖か。
オワリか。圧倒的強者たるザハード家の人間をいともたやすく殺す化け物への恐怖か。
あるいはその両方か。
敵は魔人のはずだった。
でも、違った。
同じく魔人を敵とするはずの者が自身の命を狙った。
誰が敵か。
誰が味方か。
首に置かれた手を目に移し庇うようにして何かを叫ぶステイル。
そんな彼を家畜でも見る様な感情の籠らない目で見やり、そしてトドメとばかりに首を掻っ切るオワリ。
声を失い、熱を失い、ゆっくりと、世界の時間が一律に狂ってしまったのではないかと錯覚を覚えるような速度で倒れるステイル。
その全てはシオンの目に映っていた。
その全てをシオンは理解できるはずだった。
でも、何も分からず、ただシオンは震えた。




