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最凶最弱の転生者  作者: 日暮キルハ


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「……何かの間違い、というわけではありませんか?」


 シオンは少し迷って口を開いた。


 本気でそんなことを思っているわけではない。

 ただ、そう思いたかった。

 いくら自分が欠陥品で好意的に思われていないとはいえ、兄に殺されそうになったなんて思いたくもなかった。


「欠陥品の分際で俺の魔法を躱してんじゃねーよ」


 けれども、返った答えはどうしようもないほどにシオンに現実を知らしめた。

 知っていたことを、理解したくなかったことを、目を背けたかったことを、無慈悲に押し付けた。


「……なぜ、こんなことを? 兄様が僕の事を嫌っているのは知っていますが、それでも殺されるほどに嫌われているとは思っていませんでした」


 だから、だからこそ、シオンは口を開いた。

 思考が固まってしまわないように。

 止まればそこで悪い思考にのめり込んでいく自分が手に取るように分かったから。


 だから、情報を求めた。対話を求めた。

 それが甘い考えであると半ば理解しながらも、兄を理解して自分を理解してもらって和解できないかと考えた。

 そう考えなければ、取り返しのつかない事態になってしまうと思った。


「それに……もし、僕の事を本気で殺したいくらいに嫌悪していたとしても、この状況でやる必要がありますか? なぜ、今なんですか? 一歩間違えば自分の命すら危ない状況でやることではないですよね?」


 返る答えはない。

 しかし、シオンは言葉を続ける。

 疑問は徹底的に消さなければならない。

 何がどうなってこうなったのか知らなければこれより先へは進めない。

 誰も進ませない。


「話は終わりか? じゃあ死ね」


 何のためらいもなく、何の前置きもなく、呼吸でもするかのように、ステイルが放った万物を破壊し尽くす魔法は対話を試みたシオンを襲う。

 オワリが一つため息をついた。


「……シオンの質問が終わったようなので、次は私からいくつか質問よろしいですか?」


 オワリはシオンの左隣に立っていた。

 気付けばシオンはオワリの左隣に立っていた。

 オワリの右隣、シオンが居るはずの場所を殺意の塊が勢い弱まることなく通過していく。

 自身の左腕に回されたオワリの左腕にようやくシオンは何が起きたのかを理解する。

 そして、そんなシオンは置き去りにオワリはにこやかに笑みを浮かべてステイルに問う。


「躱してんじゃねーよ!」


 オワリの言葉に反応はない。

 まるで存在すらも見えていないかのようにステイルはシオンに向けて魔法を放つ。


「……私って実は影薄かったりします?」


「安心しろ。兄様がゴミとは喋らない主義の人ってだけだ」


「それはそれで傷つくんですけど……」


 シオンがステイルから向けられた攻撃捌くのを横目にオワリがポツリと呟く。

 そんなオワリの一言にステイルの猛攻を紙一重で躱しながらシオンが答える。

 聞くんじゃなかったかなとオワリは後悔した。


「まぁ、あれですね。あんなあからさまに頭悪そうなのと話そうとか考えた私が間違っていましたね。魔人の方がまだ知能高そうですよ」


「お前……ほんと……」


 命知らずにもほどがある。

 そう言おうとしたシオンの言葉はオワリに向けられたステイルの魔法による轟音にかき消された。


「おや? 私と話してくれる気になりましたか? えっと……お名前なんでしたっけ?」


「…………」


 何かが切れた音がした。

 その音の出どころは大体予想がついていた。

 シオンは呆れる。そして、ただ視線を向ける。

 その視線の先では変わらずオワリが笑っていた。


「……楽に死ねると……思うなよっっ!!」


 声の向きにシオンは視線を向ける。そして、頬を引きつらせた。


「おい……お前、これはまずいぞ……」


 シオンは見た。

 これまでオワリとシオンに向けられ続けた破壊の権化。 

 その何倍も巨大な、人間など軽々包み込んでしまうほどに巨大なそれを掲げた手の上で浮かべるステイルを見た。


 その目にすでに正気の色はない。

 シオンはよく知っていた。

 こうなった兄にまともな話し合いなんて無理なことを。

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