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スライムが使い魔だって? その6


 高野山の街に着いて、金剛峰寺、奥の院とお参りすると怪しい仏具屋に入って行く。


 独鈷を渡されて、「使えるか?」と聞かれるが、意味が分からない。


「はっ! ふっ! とりゃ!」


武器で、クボタンの様に使うのかと型を適当に取ってると、取り上げられた。


(やっぱり、違ったんだろうなぁ。どう使えば正解だったんだよ)


 爺さん達は、その後も適当に買い物をしていた。


 買い物が終わると、その後、お土産物屋に連れて行かれた。


 高野山は宗教都市、信仰の街ではあるが、観光の街でもある。

外国人も多いし、一般の観光客も多い。大阪近郊の小学生は林間学校にも来るのだ。


 普通に観光地のお土産物屋さんがある。こうや豆腐にゴマ豆腐、饅頭やかわいい弘法大師の絵の付いたせんべいなどが売られている。


 そのうちの一軒に入ると、木刀を買った。そう、修学旅行のお土産の王様、「木刀」を。


「しょうがないからこれでも持っておけ」と言われながら渡された。


 何がしょうがないのか分からないが、杖を突きながら木刀を背負ってると厨二病全開である。クラスメイトには見られたくない姿だ。


 ただ、山の中を走るのには非常に邪魔になる。

(忍者は絶対嘘だ。こんな所に刀を背負っていては、刀が邪魔だし、これじゃあ抜刀も出来ない)


 今日はそのまま、大峰山に向かって山を下って登って、麓の竜泉寺前、洞川温泉で一泊する予定だ。


 道無き道? 道なき崖には、所々に石柱が建って居て、迷子になって居ないことを教えてくれる。杖が何の役にも立たない寂れた獣道の様なところを走って行く。


 竜泉寺には、また、不動明王が建って居た。爺さん達は不動明王の信者なのか?


 途中、崖の下を覗かされた。崖の下にはお堂が立っているが、命綱一つで身体を崖から乗り出し修行? をすると言うものだ。「親の言うことを聞くか?」などと崖から突き出されて良い子になる約束をさせられるのだ。これって本当に修行か?


 大峰山は修行の山らしく、修験者の格好をした人が多い。彼方此方に有る祠を順に回って行く修行らしい。


 夜、洞川温泉に着き、飯と風呂と布団の記憶しかない。息をするのも痛いぐらい身体が酷使されている。


 ここで、回復魔法を使うと、今までの鍛錬が無駄になるらしい。体を酷使し、筋繊維が切れるぐらいの経験が必要らしいのだ。



 朝早く、南に向かって山に入って行く。昨日、南から上がって来たのじゃないのか?


 途中、ゴブリンと出会う。爺さん達に小鬼と呼ばれていた。いや、第一、そんな者が実在するとは思っていなかったよ。


 猿より少し大きくて毛は無い。

茶色や暗緑色の肌の個体が多い。これで森の中では保護色になっているのだ。

 見つけた時は、最初はでかい猿と思っていた。


 爺さん達が口々に殴り殺せと言う。


「ほれ、殺せ!」、「今じゃ、殺せ」、「遠慮はいらん、こっちの生き物じゃ無い」、「早く殴り殺せ!」と促して来る。


「え? 生きているだろうが」


「当り前じゃ、だから殺すのじゃ」


「どうしてだよ?」


「奴らは人間を襲うのじゃ」


 しぶしぶ俺は、背中に担いでいる木刀を抜き、体の前に構える。それにしても、生き物を殴り殺せというのは抵抗がある。彼等にも生きる権利ぐらいあるだろう。


 ゴブリンは四方を囲まれて、脱出場所を探している。

周りを見回して、俺が一番弱いと感じ取ったらしい。


 腹を決めたのか、牙を剥き奇声をあげて、こっちに向かって走って来た!


 剣道は中学の授業で習って以来だ。


 俺の直前で、向かって右側に跳ね避ける。それが彼の運のなさだった。


 指輪の魔法により、敏捷が上がっていた事もあるが、振り下ろした木刀にジャストミート! された。


「やったぜパパ! 明日はホームランだ!」ってなんのCMだったろう?


 木刀に打たれて、ゴブリンは飛んで行く。その軌跡を眺めながら、昭和のフレーズが脳裏を駆け巡る。


 ゴブリンが正面の木にぶち当たって下に落ちると口から血を流して動かなくなる。


 しかし、生き物を殺すと言うのは、罪悪感が有り、後味が悪い。


 殺されたゴブリンは、暫くすると黒い煙になって消えて行く。


「奴らは向こうの生き物だから、こちらでは、死ぬと身体を維持できぬのじゃよ」


と真里亞の爺さんが説明してくれる。


 見つけたら殺しておかないと、こちらの人や動物に悪さをするらしい。

彼等はこちらでの体の維持に、こちらの生物を喰うのだ。

特に、抵抗力の弱い小さな子や年寄りをとって食うらしい。人類としては彼らを殺すことは正当防衛で、正義の行いなのだと詳しく教えてくれた。

正義とは都合の良い言い訳だ。


 結局、今日は後三匹殺した。


 そろそろ日が西に傾き、空の色が変わる頃、もう山の中は暗くなりだしていた。


「こいつは行けるか?」


「いやあ、魔法使いの素質がないなぁ」


「しかし、憑依を持っているぞ」


と協議が始まった。木の上にいるスライムの事だ。


「ふふふ、儂らは『ミズガミ』と呼んでいるよ」


「こいつを探していたんだ」


「ほれ、殺さん様に叩き落とせ」


と言われて、おれは杖で叩き落とす。


 相当弱っているのか、ニュルニュルと逃げようとするのを杖の先で小突いていると動かなくなった。


「どうせ一回しか使わないから覚えんでも良いがな」


「ほれ、儂の真似をして、呪文を唱えるのじゃ」


 与里野の爺さんがお経を30分程唱えて、踊りと呪文とを詠唱する。俺も、じいさんに習って、呪文を詠唱して踊った。


すると、スライムの中央部が持ち上がり、徐々にこちらに寄って来る。


 透明に見えていたが、スライムの身体が厚く重なり厚さが増すと青く色が付いて見えている。


「ほれ、小僧、もういいぞ。指輪を近づけろ」

と言われて、ゆっくりとスライムの中央部の先端に近ずける。

すると、スルッと指輪の石の中に入ってしまった。


 5人で詠唱をしていると、「さあ、彼に名前をつけてやるのじゃ」と。


(「のじゃ」って聞いてないよ。そう言うのは、前以て言っておいて欲しいなぁ。急に言われても困るのだけど)


「名前を付けることで、妖魔を縛るのじゃ」

「いわゆる呪じゃよ。親が子にやる最初のプレゼントじゃ」

「元気になるように、賢くなるように、みんな親の思いが名前にはこもっている」


爺さん達は、口々に俺に説明してくれた。


「ちなみにじゃが、『熊』や『トラ』も、強い動物の威を借りて、子供が元気に育つようにとの親の思いなんだぞ」


妙に、 鈴木のおじいさんが雑学をぶち込んでくる。


 俺はこの旅行で、調べたけど乗れなかった特急、「サザン」のことを思い出した。藍色で、鉄人28号とも走る鉄仮面とも言われている。青繋がりで良いかと思ったのだった。


 因みに、勇人が思っていたのは「ラピート」で関西空港に行く特急で有る。「サザン」は和歌山に行く特急で、車両も色も違うのであった。


「じゃあ、『サザン』で」と言って、詠唱を続ける。


 呪文の意味は、「汝の功を認め、我が僕として忠誠を誓うが良い。命名する、汝の名は『サザン』である。我がその名を忘れるまで、我が僕として働くが良い。祝福! 祝福! 祝福!」と言う意味の事を、すごく上から目線で命令しているらしい。


(しかし、使い魔がスライムって、どうよ。もう少しかっこのいい物はいなかったのかね)


「なんか、もっと強いやつとか居なかったの?」


俺は聞いてみたが、


「お前の魔力が低いから、こんな奴しか捕まえられないんだよ」


と言われてしまった。


(いや、普通魔法使いの使い魔は黒猫とか、ジャガーとか、フクロウとかあるだろう?)


スライム(サザン)


ステータスは全部1


錬金術師 1


スキル、魔法の道具 使用 1


スキル、魔法の道具 作成 1


肉体強化1


スキル、ステータスアップ 1


特殊能力スキル


魔法耐性、物理耐性、状態異常耐性、憑依、生命力奪取


である。


 魔法耐性、物理耐性、状態異常耐性は、大抵の強い妖魔なら持っている。


 ドラゴンなどで、刀の攻撃や魔法攻撃を受けても平気でいるのはこの特殊能力スキルのためだ。


 刀や矢が、当たっているのに歯が立たない状態と言えば分かりやすいか。攻撃しても攻撃しても相手にダメージがいかない状態の時の能力スキルだ。


 生命力奪取もスライムなので、樹上より旅人の上に落ちてきて、相手を包み込んで動けなくして、生命力を奪い最後は消化してしまうので、この特殊能力スキルを持って居る。


「このスライムは、何世代か前は強い魔物だったのだろう」と言われた。


単細胞生物のスライムは魔法の道具は使わない。よって、自然界に居るスライムは錬金術など覚える筈が無いのである。


「昔、すごく強いスライムが人間に使われていたのだろうと想像出来る。そして、人の支配が終わり、野に返されて時が経ち、成長し、細胞分裂する時に 知識も別れて、薄れて無くしてしまったのだろう」と言う事だった。


(単細胞生物って、卵から孵る訳じゃないので永遠の命なんだよなぁ)

(記憶とかはどうしているんだろう。細胞のどの部分が記憶しているのだろうか?)不思議な生き物だ。


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