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蘇我 真里亜 その3

 このクラスは、魔法学科のAランク。超エリートとエリートのクラスだ。俺みたいな、そんな低レベルの学生は2組に振り分けられている。俺だって本来なら、2組とかに振り分けられて居る筈であった。学校の手違いがなければ。いや、本来なら大学受験対策の特進学科だろう。魔法学科って、この先どうするんだ。


「藤波、お前どうするの?」


と仲の良くなった桐崎(キリサキ) 浩樹(ヒロキ)に聞かれた。


「ん? 何の事だ?」


と聞き返すと、


「お前、魔法学は単位取れないじゃん。どうするつもりなの?」


と言って来た。


(そうだ、単位取れないと留年だよ)


 勉強なんてレベルじゃ無い。魔法が使えない、ルーン文字が読めない、発音できない、のだから単位が取れるはずがない。


 このルーン文字が厄介で、古代ゲルマン民族の文字らしいが、魔法の書物はルーン文字で書かれている。漢字同様に象形文字の様なものだが、時代により、少しずつ変化している。

こんな物を始めて見せられても、普通に読めるはずがないのだ。


 いくら他の教科がいい点数でも、留年していたら卒業は出来ない。卒業できないのなら、大学受験などあり得ない話だ。


 青い顔をして固まっていると、真里亞が話しかけて来た。


 最近は、「蘇我 真里亞(ソガ マリア)」と、「秋山 紅葉(アキヤマ モミジ)」、「瀬戸山 葉月(セトヤマ ハヅキ)」の三人が仲良しグループになって居た。


 いつも通り三人で集まって、他愛も無い話で盛り上がって居たのだ。隣の席が真里亞の席なので、よく、三人集まって居るのを見ていた。俺は意識をして居ないので気付かなかったが、また隣の席で集まって女子トークしていたのだ。



 桐崎と魔術に関する試験対策の事を話していると、蘇我 真里亞が突然こちらを見て、


「一度、私の祖父(おじいちゃん)に相談してみる?」


と言ってくれた。突然で驚いたが、俺にとっては助けに船だ。

(どうやら、地獄に仏と助け舟がごっちゃになったようだ)


(ああ、天使よ! 何とかなるのか? この事態を収拾する方法があるのか?)


取り敢えず、藁にもすがる気持ちで聞いて見た。


「お祖父(じい)さん、学校の人? 普通科に編入出来そう?」


と聞き返してしまった。


「ううん、趣味で修験道しているの。信心深いから」


(そっちかい! 素質が無いのにどうすんだよ。拝んだら、魔法使いになるのかよ)


「へっ?」


「一度会って見たら良いよ」


って、相談する話を勧めてくる。


 クラスでと言うか、学年一のエリート魔法使い(魔法学科内だけだが)が言うのだから、会ってみようと言うことになった。


 週末、電車を乗り継いで真里亞の家に行く。蘇我さんが、蘇我さんの祖父に連絡を取ってくれて、会う事になったのだ。


 駅前で、美味しいと評判のケーキ屋に寄って、お土産にケーキを買って行く。

そして蘇我さんの家の近くの駅前のロータリーで電話をして、駅まで迎に来て貰った。


 桜の花が散り葉が出始めている頃、空には筋雲が風に流されて居る。休日の昼過ぎの駅前ロータリーは、暇そうにバスやタクシーが客待ちに止まって居る。


 彼女はその中を歩いて現れた。


「藤波くん、おまたせ。待った?」


 彼女は白と水色系のワンピース姿だった。


(普通じゃん。魔法使いだから、広いつばのとんがり帽子でも被っているのかと思っていたよ)


 制服姿しか見た事が無いので、彼女の私服姿が新鮮に映る。俺は少し、胸の鼓動が速くなるのを感じていた。クラスの女子の家に行くということが実感された瞬間だった。


 駅からの道を彼女と並んで歩く。この辺りは斜面が多い。少し歩くペースが速かったのか、蘇我さんの息が切れて来た。


「ごめんね。速かったね」


と謝りながら立ち止まって休憩する。


 歩道脇の桜は、駅前の桜よりも葉っぱが青々と繁っている。


 普通の住宅が広がる中に、真里亞の住むマンションはあった。丘の斜面の上に建っており、よりいっそう高く見えた。


 十数階建ての8階。玄関がオートロックのマンションだ。


 家人は誰も居らず、出かけているとの事だった。


(真里亞の両親に挨拶をしないといけないと、緊張してたのに。これまでの緊張を返せ。馬鹿野郎!)


安堵と共に悪態を心の中で吐く。


 俺は、キッチンのテーブルに勧められて坐る。


「ちょっと待ってね」


蘇我さんは、テーブルにティーポットとテェーカップを並べて行く。


 そして、ティーポットに茶葉を入れると手をかざし、熱湯が注がれる。


「え?」


(「ええええぇぇぇ~!」今、お湯は何処から出て来たんだよ~!)


「普段から使っておかないと、練習にならないでしょう。

これも、鍛錬よ。鍛錬」


蘇我さんは「ニコッ」って素敵に笑う。って、ちゃうわーっ!


 驚いて居ると、その後蘇我さんがトーストを焼く実演をしてくれた。


 両の手を開いて前に出し、その間にパンを浮かす。

 パンの角を支点に対角線を回転軸にクルクルと回して行く。と、次第にパンがキツネ色に焼けて行く。

最後に、クルッと手を回すと、バターが両面に塗られて出来上がった。


「トーストが焼けたわ。どうぞ召し上がれ」


 喫茶店のトーストの様にフカフカで美味い。


 が、(空気中で物が焼けるなんて、まさに、「オープントースター」)と要らぬことを考える勇人で有った。


 蘇我さんによると、「魔法は、使えば使う程経験になり、熟練して行く」のだそうだ。


 火球で魔物を倒す。なんて事があると凄く経験になり、レベルが上がるのだけど、現実には魔物がそうそう居る訳でも無く、生活魔法が主になるらしい。


 また、「レベル」も良く表現では使われるが、地震の震度表示と同じで、使われた状況に応じて「これぐらいだと何レベル」とスケール換算されているのだそうだ。


「ゲームの様に、パラメータ表示出来ると便利なのだけど」と言って居た。



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