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対決 その194

破線より下が、新たに書き足した部分です。

なろう運営に削除された時、再アップする時にエログロ部分は削除しましたが、物語が切れたままでしたので、繋げました。

内容は変わりましたが、楽しんで頂けたら幸いです。


 悪魔の足元で、フローラは自分の体ぐらいある悪魔の手からの脱出中である。


『サザン、勝てるか?』


『いえ、勇人、全く歯が立ちませんね』


『そうか、困ったな』


『困りましたね』


俺とサザンで脳内会話をするが、良い案が浮かばない。


 悪魔は、ギロリとこちらを見ると、ニョキリと切り落とされた手を生やした。

落ちている自分の右手には興味がない様だ。


 そして、腰を振るのをやめて、女を掴んで、自分のモノから抜いて、投げ捨てた。


 あの様子じゃ、上腕骨か鎖骨は骨折したのでは無いだろうか? そう思うぐらいの勢いで、肩から落ちた。


(えへへ、この悪魔、全然応えてないよ。どんな魔力なんだ)


「ゆうトォ~!」

「助けに来てくれたのね~」


フローラはパタパタと陽炎の様な羽を羽ばたかせて飛んでくる。


(それどころじゃ無いよ。死にそうだよ)


「危ないから、後ろに下がっておけ!」


今の俺には、冗談を言う余裕すらない。

召喚された悪魔に喧嘩を売ってしまったのだ。


 飛んで来るフローラを左手で掴んで、後ろに放り投げる。


 そして、昔にサザンに作って貰った指輪で、前方に物理障壁と魔法障壁を張る。人間相手なら、破られることの無い強力な魔法だ。


「誰だ? お前は!」


悪魔が、ドスの効いた声で聞いてくる。


「な、何をするのですか?」

「誰ですか? お客さん困りますよ」


さすがに、慌てた司会者が聞いてくる。


「いやあ、この妖精たちは、俺の知り合いでね」

「喰われると困るのだよ」


 そして、俺は悪魔を見やり、ボソッと言った。


「こいつらは、返してもらうぞ」


低い声で囁くところが、自分でも厨二だと思う。


 俺は、平静を装い、大急ぎで以前に作った冒険者の指輪を使って、再び物理障壁と魔法障壁を張った。つまり、二重に張ったわけだ。


「サザン! これで持つか?」


「勇人、無理ですね。相手が強すぎます」


「じゃあ、逃げるか」


二人で話しは決まった。


 振り返ると、フローラがパタパタと飛んで来ている。


(あれを掴んで、このまま逃げよう)


俺は、フローラの位置や、扉の位置を確認して、逃げ出す準備をした。


「勇人、大丈夫?」

「痛い。痛い」


振り向くと、葉月が結界を破って教壇に上がって来ている。


「これ、痛いわね」


どうも、結界を破って入ってくる時に痛みを感じている様だ。


(痛いのか? しかし、せっかく張った結界を、そう簡単に破ったら、あいつらが泣くぞ)


俺は、司会者の泣き顔を想像した。


「葉月ぃ~! 葉月も来てくれたのねぇ」


「ええ、フローラちゃん、大丈夫?」


二人は、俺の後ろで感動の再会をしている。


(どうして、ノコノコ入って来るのだよ)


俺は、逃走案が潰れたことを悟って、悪魔と二人の間に入った。


 俺は、自分の前に、魔法障壁と物理障壁を交互に数ミリずつ開けて、もう一度張った。三枚ずつ六枚張った訳だ。それでも防げる気がしないのだ。


 悪魔は、怒気を含んだ目で、ニヤリと笑ていた。もう終わりか? 準備は出来たか? と言われている様だ。

 散々準備をさせておいて、それを打ち砕いて絶望させるつもりだろう。


 俺は、ウエストポーチから、備忘録のスケッチブックを取り出し、後ろにいる葉月に渡して言った。


「後ろから5ページ目、後ろから5ページ目の魔法を使って!」


俺は、葉月に使ってもらう魔法を指示した。


 後ろから、パラパラと紙をめくる音が聞こえている。


「これで良いの?」


「ああ、頼む」


俺は葉月に、悪魔を倒す魔法を使ってもらう様にたのむ。


 ゆっくりと詠唱が聞こえて来る。


「おい! それは、違っ……。」


(それは、5ページじゃなくて、五枚目の裏だよ。9ページ目だよ)


俺は絶望した。この状況にも、葉月の頭にも。


 異界への入り口の上に、内側の魔法陣の上に、凹面鏡の様に、傘の様に魔法反射物質が窪んだ形で浮いている。


 魔法使いの子供が練習用に使う風車の素材だ。魔力が通り難く、反射して、風車がクルクル回るのだ。


 そして、バトルスタッフを、悪魔に向けて浮かせている。


(おい! おい! おい! 絶対勝てないからやめておけよ!)



バシュッ!


 宙に浮いたバトルスタッフは、巨大な光弾を吐き、木製部分が白熱化して燃え散った。


 まるで、スピードライトの様な眩ゆい光が講義室を照らし、悪魔を包み込む。


 相当な魔力だった。魔界のマナを吸い出し、バトルスタッフの石突き辺りに集中して反射させたのだ。

地上より遥かに強いマナを、より集中させて、バトルスタッフが耐えられなかったのだ。


 俺には見えなかったが、相当強い魔力が魔法陣の穴から吸い出されたはずだ。それを凹面鏡でバトルスタッフの石突きに集めたのだ。バトルスタッフがたえきれなくても仕方がない事だ。


 悪魔は、「オッ」と驚いた様な顔をして、葉月の方を見ている。鳩が豆鉄砲を撃たれれた顔が、本当に有るとは思わなかった。


「キャーッ!」


魔法を使った本人が驚いて悲鳴を上げている。


「チッ!」


(エジソンの電球の竹製フィラメントかよ)


悪魔の注意を葉月に向けたことを後悔して、鉄刀を真横に構える。

俺に出来る事は、もう何も無いのだ。


 詰んだ。戦えず、逃げられず、相手はこちらを殺す気満々だ。

成す術が何も無い。


 その為、葉月を全力で守る行動に出たのだ。


「葉月! いつものやつでいい。早くあいつを殺せ!」


思わず、俺は叫んでいた。


「藤波! 大丈夫か!」


「藤波君、大丈夫?」


心配して駆け付けた桜木と栃原部長代理だ。


 栃原部長代理は、結界の壁を押しているが破ることが出来ないでいる。まるで、ゴム風船を押しているようで、結界の壁がふわふわと動いている。

 一方、一般人の桜木は、硬いガラスの壁のようなものに阻まれている。押せども叩けどもびくともしないのだ。


(どうして、お前達までくるんだよ)


「来るな! 離れておけ!」


二人には、離れておくように指示を出したが、他に全く次の手が思いつかなかったからだ。


 そして、ますます俺は、自分だけ逃げる算段が出来なくなり、ますます絶望した。


 悪魔は、ニタリと笑うと両手をゆっくりと葉月の方へ向けた。

目線は葉月を見つめており、俺のことなど全く眼中にない様子だ。


 魔力の無い俺でも、何かをされているのは分かるぐらいの、圧倒的な何かを放出して来た。


「ユウト、逃げて下さい」

「魔法障壁が破られました」


サザンが言ってくるが、逃げる事など出来はしない。後ろには、葉月とフローラが居るのだ。


 サザンの言葉を聞き終わらないうちに、奴に面した体の前半分に、痛みと苦痛と絶望が襲い掛かって来る。

スパッ! と切られる痛みではなく、ジンジンと大きな痛みが襲ってくるのだ。


 段々と目の前が霞み出し、息が苦しく、脈が速くなり、筋力が弱くなって行く。


 本人は、急激に老化して行くように感じていた。


「藤波! 大丈夫かっ!」


桜木が、大声で叫んでいる。


 そちらを見ると、白く霞んでいる。

そして、何やら腐った匂いが鼻につく。


「ああ、大丈夫だ」


振り向きながら答えると、


「藤波! お前!」


桜木が、驚いた表情をして、慌てている。


 後ろから、葉月が声をかけてくる。


「大丈夫? ゆ、ゆうと、顔が」


「大丈夫だ。気にするな」


それにしても、臭いし痛い。

 ジンジンと頭から顔、胸、同胞足の先まで、悪魔の攻撃を受けたところが痒痛い激痛なのだ。


「かまわないから、いつものやつで、あいつを倒してくれ」


俺は、葉月に頼んで、フェーザー銃をウエストポーチから取り出した。


 この時も、手が震えてウエストポーチが開けずらかった。開ける手を見ると、手が腐って、骨が見えている。


 激痛の原因はこれだったのだ。

見ると、体全身が腐って来ている。顔や目もそうなのだろう。

ただ、鉄刀を横に構えたので、胸に一文字の正常な部分が残っている。



ーーーーーーーーーーーーーーーーー


「クハクハクハ、大したものだ。生き延びたか。

だが次は無いぞ」


悪魔が爽やかに笑っている。

これでは、どちらが悪者か判らない。


 俺は怖くて、目玉だけを動かして桜木に呼び掛ける。


「桜木! 例の手袋を持って来ているか?」


「ああ」


俺の質問に、桜木は理解できない顔をしている。


「急いではめてくれ。アイツの顔にかめはめ波だ。

結界の外から撃ってくれ」


「ええ? 良いのか?」


「急げ! 時間が無い」


俺は、桜木を急かせた。


「次にフローラ、奴の顔の周りに小麦かトウモロコシの粉を大量に撒いてくれ」


「あら? この前と同じね」


「ああ、規模は小さいがな」


俺は、腐った身体でニヤリと笑った。


「栃原先輩、奴の召喚の魔法陣を消して下さい。

たぶん、動物の血で描かれているので、洗浄の魔法で、一文字消せば消えます。

奴を向こうに逃しませんよ」


「分かったわ」


嘘である。俺は、この悪魔を向こうの世界に逃げ帰って貰いたいのだ。


「ガハガハガハ! 準備は整ったのか?」


「ああ、待たせたな」


悪魔は、不遜な態度で言ってくる。

しかし、不遜なのは、どう見ても勇人の方だ。


 悪魔の方には、態度に見合った実力が有ったからだ。


「俺達一人一人は弱い人間だが、集まれば、例え強大な悪魔でも倒す事が出来るのだよ」


俺は、思ってもいない事を喋り出す。

桜木や栃原部長代理の為に時間稼ぎをしているためだ。


「ケハケハケハ、虫けらが何匹集まっても虫けらは虫けらだ」


まあ、真っ当な意見だ。

俺達が何人集まったって、こいつに勝てるわけがない。しかし、俺は時間を稼がなければいけない。


「さあ、どうだかな。

可哀想に、その虫けらに殺される羽目になるとはな」


俺は腐った顔で横柄に答える。


「葉月! やってくれ! 

フローラ! 今だ! 

栃原先輩! お願いします。

桜木! 準備が終わり次第やってくれ」


俺は、桜木の方を振り返った。


 桜木は黒いグローブをはめて、カメハメハの準備をしている。



「グハッ、グハッ、グハッ、愚かしい抵抗だ。

 せめてもの情けだ。死後、永遠の苦しみを与え、永遠に魂を奴隷にしてやろう」


悪魔が胡座をかいたまま笑っている。


「いつまで笑っていられるかな?」


俺が右手の人差し指で悪魔の顔を指した時、悪魔は黙って苦しみ出した。


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