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190/215

除霊 顛末 その190

 そう、俺達が羽根だ、尾だ、と騒いで居たのは、腕と脚だったのだ。


 天使は中世の宗教画を思わせるような、筋肉質で脂肪が付いていない。

そして、大きな羽根をバッサバッサと動かしている。


 このサイズの哺乳類がホバリングで浮く事は出来ない。重過ぎるのだ。

まあ、サイズといい、形状といい、出現方法といい、地球上の哺乳類と違う事は明白だ。


 その巨大な天使は、葉月が作り出した黒い穴の上に浮いている。そこで、吹き出すマナを受けて、手を前下に差し出して、手の平を小鬼に突き出して、発光させている。


 その光を浴びて、ミンチ状の小鬼の顔が発達して大きくなって来た。

頭が、握り拳程度にまで成長すると、栃原部長代理は詠唱を辞め、巨大な天使に礼を言っている。


「有り難う、もう良いわ」

「あなたの支援を受けていると身体がもたないわ」

(ダメね。この娘の百分の一でも、たった数分でも身体がもたないわ)栃原部長代理は自分のふがいなさを攻めた。


「はい」

「わかりました」


 葉月とて、大地から吹き上げてくるマナを全部吸収している訳では無い。大方、九割は逃している。

しかし、栃原部長代理は、葉月が支援している99パーセントは体外に放出して、自分の魔力に使えているのは1パーセントがせいぜいだ。


 つまり、元々の大地より吹き出しているマナのエネルギーの千分の一も使えなくていたのだ。


 桜木のビデオに映っている光の塊は、崩れるように霧散して行った。


 それから、栃原部長代理は、俺が渡した、サザンが作った結界のお札を使って、結界のナイフを出した。


 それを使って、蛟の霊体から長さ10センチ程の欠片を削り取り、やっと回復した小鬼の口に入れた。


 すると、小鬼だったミンチが緩やかに解け、合わさり、ゆっくりと全身が回復して行った。


 それを撮っていた桜木が言った。


「藤波、なんか寄り集まって来たぞ」


「一つの細胞が三つに分かれ」


「何言ってんだよ。分かれてねーよ」

「集まってきているだよ。見りゃ判るだろう」


「俺には見えねーよ」


 それでも、全身が回復するのに、三十分と掛からなかった。


 蛟のミンチは、もう一度「クー」に食べて貰って、後片付けも終わった。


「気になるんだけどさ、あれ、さっきより大きくなっていないか?」


桜木によると、回復後の小鬼が、回復前に比べて大きいと言うのだ。


「今は、一メートルも有るんじゃ無いか?」


「知らん」


桜木が撮っているビデオには、明らかに大きくなった光の粒子の塊が映っていた。


「あなた達、一体何者なの?」

「今まで、あなた達の事なんか聞いた事ないのに」


 少し大きくなった朱雀を見て、喜美絵が言っている。


「あれ? magic girlsって知らない?」

「今度、検索して見てよ」


桜木が、さりげなくオカ研の動画を紹介している。無線で言うQSLカードの未記入の物を渡している。


 本来は、動画の詳細説明欄のリンクから訪問し、話したり、情報交換した者に郵送する物だ。


 未記入なので、特に価値はない。

いや、記入されて居ても、我が校のオカ研では価値はないだろうけどね。


 栃原部長代理は矢嶋先輩と家族に礼を言われて、霊能力者の先生からは、敬われている。


 佐藤先輩が車を回して来たので、皆で乗り込み家路に着いた。


 桜木は助手席に座っている。


「お前のクラスメートは、すごいな」

「俺の時にも居てくれたら、絶対、良い映像を撮ったのにな」


「ええ、クラスメートじゃ無いですけどね」

「危ない奴らですよ」


 俺は、彼らの話を聞くでもなく、夢の中で聞いていた。


 途中、SAで仮眠をとったりしていると、全員が家に着いたときは朝であった。

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