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初めてのゾンビ狩り 18


 とっぷりと日が暮れた頃、駐車場に到着して、トランクから各々荷物を出す。


「初めてだから、我々の後ろを付いて来れば良いよ」と黒田さん。


「どんな事が有っても、大声を出したら駄目だよ。あいつらが寄って来るからね」


「時々って殆どだが、グロいのが居る。怖いからと言って、パニックになって、走って逃げては駄目だ。動くと余計に奴らの注意を引くんだよ。静かに、そーっと、素早く逃げるんだ。解るな」など、最終注意を受けている。


 ん? 林田さんが、こちらを見て「チッ!」と舌鼓を打っている気がする。何か機嫌が悪そうだ。


 お互いにビデオカメラとヘッドライトの確認をしたら、「翼竜の翼達」の後ろを付いて行く。

それにしても、背中のリュックが重い。右側にピッケルを、左側にラッパを、後ろにタンバリンと花火をぶら下げている。

 自分の荷物は自分で持つ。のが基本なのだそうだ。食料や武器を一人に偏らせると、そいつがやられると全員が食事に困るからだ。


 蘇我さんは、リュックに魔晶石の入ったヌイグルミをぶら下げて、バトルスタッフという物を持っている。

 バトルスタッフとは、地面から肩ぐらいまでの長さで、樫の木で出来ている。石突きと先端は真鍮で出来ていて、先端は擬宝珠の様な形になっている。殴る、突くの物理攻撃に、攻撃魔法に特化した魔法を使いやすくなっている杖だ。いわゆる魔法の杖なのだが、攻撃に特化しているのだ。


 魔法使いの杖と言えば、杖の先がグルグルとした木の杖か、イギリスの魔法学園の映画の指揮棒の様なものが有名だが、バトルスタッフは殴ったり、突いたり出来、戦闘に特化した魔法の杖なのだ。


 駐車場からはすぐ森で、遊歩道が続いている。この遊歩道を歩いている限りは、道に迷うことも無い。

 吉野の山の中と違って、大きな木は生えていない。大地が溶岩で出来ていると言う事もあるだろう。

ここは、まだまだ成長途中の土地なのだ。溶岩の性で土が痩せているのだ。そう言う意味では、ゾンビが居て腐って行った方が良いのかも知れない。


 暗がりの中、ヘッドライトが照らす地面ばかり見て居た。


「しっ、静かに。」前の方から伝文が来る。

口に人差し指を持って行き、そっと立てる。

そして、頭に手をやり、身を屈めろ! とディスチャーで言ってくる。


 二人でしゃがんで、周りの様子を確認する。

耳を澄ますと、「うー、うー。」と唸り声とも気張り声とも言えない音が聞こえる。

 前方右手、30mぐらい先に、フラフラと女性のゾンビが歩いている。まだ、こちらには気づいて居ない様だ。

そして、ゆっくりとこちらに振り向く。


 森の中、30m先を照らすと、直ぐに向こうにこちらの存在がバレてしまった。

 雑木林なので、開けていると良く見えるが、葉が多い季節だと5m先でも見えないだろう。

ライトで照らすと葉っぱが照らされて、葉っぱが明るく見えて、その向こうは見難くなる。向こうからすると、葉っぱ明るくなるので、こちらの姿は直接見えなくても、何かが居ることは分かるからだ。


「こういう時は、先ず周りを確認するんだ。何回確認してもしすぎる事はないんだよ」と、ゆっくり丁寧に説明してくれる。


「特に後ろ! 後ろに注意しないと挟まれて、たいへんな・・・」


後方の確認の最中に、林田さんが剣を抜いて、ゾンビの口から後頭部に剣を突き刺して居た。


 いや、今、時間的に確認せずに飛び出してるよね。それで、魔法もへったくれもない力技かい?


「林田君早いよ〜。まだ説明している最中なのに〜」って、言うこと聞いて居ないじゃん。


 林田は勝手に行動してるし、黒田さんの話を聞いていない、これじゃあどっちがリーダーなのか分からない。


 方士さんが、倒したゾンビとGPS画面が写るようにして写真を撮っている。

これは、蘇我の爺さんもやって居た。


 ふんふんと話を聞いておく。やはり、先人の成功者は理由が有って、その事をしているので参考になる。

そう言う細かい事が経験の有無になって、後で脚を引っ張るのだ。


「こうして、場所とゾンビを撮っておくと、回収に来る人が便利だろう。

回収に来る方も命がけだしな。動画だけじゃあ、場所を特定し難いんだよ」

「遺体は、回収班が遺体収納バッグに入れて搬出してくれる。だけど、彼らだって危険なんだ。彼らの護衛の仕事があるぐらいなんだよ。真っ直ぐ、この場所に来れるのに越した事はないんだよ」とGPSの座標写真を撮る理由を教えて来れた。


 蘇我さんは、じっと遺体を見て泣いて居た。


 面利さんが、「泣く事はない。これで、やっと家族の元に帰られるんだ。林田君に感謝しているよ」と慰めている。


 俺は彼女の前で、言葉も無く立ち尽くすだけなのに、人間としての経験不足を痛感する。


 五体ほどゾンビを林田さんが倒した頃、一旦休憩となった。

 その間、黒田さんは、「危ないから前に出るな。慣れるまで狩らなくていい」

「初心者は無茶をするな。そうして、みんな帰られなくなるんだ」と前に行かせて来れなかった。


「で、なんでラッパや花火を持ってきたの? まさか、ここで花火をするつもりじゃないよね」と方士さん。


 みんながこっちを向いている。俺の荷物に興味がある様だ。


「前に一度連れて来てもらった事が有るんですが、その時、法螺貝を吹いて集めて居たから、必要なのかと」


「ああ、与利野のジィちゃんでしょう。あの人、何処ででも法螺貝を吹くんだよ。前に、スキーの鍛錬だって言って、法螺貝を吹いて、雪崩起こして遭難してるの。それで、みんなで探してたら、下の方から雪を溶かして、自分で出てきたって言ってたよ。おっかーしぃよね〜」

って、笑えるのは、君の家族だけだぞ。


「そんな上級者の真似なんかしたら、直ぐに死んでしまうぞ」

「静かに、静かに、が基本だよ。こんな所で吹いたら絶対ダメだぞ」


「そんな遊び半分でハンターするなら、もう帰って来れ。一緒に同行などしない。勝手にその辺でくたばれば良い」

林田さんが、突然激昂しだしてしまった。


 いや、さっきから全然遊んで無いよ。飯食ってただけだしね。


 黙って話を聞いて居るが、一向に林田さんの怒りが消えていく事はない。


「まあ、彼等も悪気が有った訳じゃ無く、初めての事なんだし」と方士さんが、俺達に代わって謝ってくれている。


 しかし、こんなに森の奥で、こんな時間に、高校生二人に勝手に帰れも無いものだ。元々、初心者で不慣れだから同行を申し出たのだろうが? 意味が分からない。

 それも、周りにゾンビが居ると言うのに、大きな声で怒りだして居る。


「解りました。そこまで言うなら、我々二人はここで分かれましょう」


「色々と教えて頂いて勉強になりました」と挨拶をして、翼竜の翼達と別れる事にした。


「何を言ってるんだ。こんな所で、初心者が勝手に行動したら、自殺する様なものだぞ。林田君、いい加減にしないか」と黒田さん。


「いや、そう言うなら、チャラチャラ遊んで居るとどうなるか、身をもって経験すればいいんです」と林田さん。


 だから、何がチャラチャラか分からない。

まあ、当初の予定通り、この人達から離れて、二人で行動した方が良いかな。


「では、これで失礼しますね」


 大体、初心者を2時間引っ張り回してほっぽり出すって、何を考えて居るのだろう。


 こんな時こそスマホのマップ。

確認すると、意外と距離を歩いて居ない。ウロウロして居たので進んで居なかったのだ。


 パーティーを解散したメールをギルドに送っておく。


「今からは、『ウサミミパラダイス』と『翼竜の翼達』は別行動を取ります」と。


「翼竜の迷惑になるから、もう少し奥に行こう」


 蘇我さんを誘って、どんどん森の奥に入って行く。


 10分程歩くと相当離れたんじゃ無いかなと思う。暗がりの森の中じゃ、すごく歩いた気がする。


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