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蛟 顛末 その174

「ねぇちゃん、お帰り」

「また、どこに行っていたの?」


俺を見て聞いて来た。


「どこって、……。」


葉月が俺の方を向いて聞いてくる。

どこに行っていたか解っていなかったようだ。



「八王子に占いに行ったんだよ」

「そしたらこうなった」


「普通、占いでそうはならないだろう!」


「俺もそう思うよ」

「事実、開始15分間はそうならなかったしな」


俺は、 鬱陶しそうに返事をした。

こいつは俺を見下しているからだ。


「占いが始まって直ぐじゃないか」


「占ってねぇよ。駅から歩き出して15分だ」


「何やってんだよ。じゃあ、どうしたらそうなるんだよ」


(だから、年上には敬意を払えよ)


「ん? 水を高温高圧に加圧してプラズマ化して、推進剤代わりに開放したら火傷して指がなくなったんだ」

「今度してみるか?」


「意味がワカンねぇよ」


「楽しそうだけど、お話はそれぐらいにして」

「その、服を脱いでこれに着替えて」

「おじさんのジャージだけど、これを着ていて」


葉月のお母さんが、緑色に白の二本ラインのジャージを持ってきてくれた。


 ジャージの横に白いラインが入ったのは、仮面ライダーの影響だ。

1号ライダーの俳優の怪我によって撮影が出来なくなり、2号ライダーが登場したのだ。

その時、体の横に白い幅広の一本ラインが入ったのだ。

 そして、俳優の怪我が治って、1号ライダーが帰ってきた時、体の横に白い二本ラインが入っていたのだ。


 そのデザインをジャージメーカーがパクったら大ヒットしたのだ。


 つまり、この緑色のジャージは昭和も昭和、大昭和のデザインにて、ざオヤジの服だ。

葉月の親父さんの小学生時代のデザインなのだ。


「あ、ありがとうございます」


俺は、服だった物を脱ぎ、緑色に輝く昭和のジャージに着替えた。


 葉月のお母さんは、紫の大きな水晶を出してきた。巨大な魔晶石だ。


 テーブルの上に俺の服を広げて、葉月と二人で修復してくれている。

二人は手を踊るように振って回している。そうして、俺には見えていないが、魔力の糸を紡いで、織って、縫っているのだ。


 二時間程で、下着のシャツとカッターシャツと制服と外套が修復された。


 すでに時間は3時を回っており、そのままソファーで仮眠させてもらった。


「起きて、勇人、御飯を食べて学校に行こう」


仮眠どころか、熟睡していたようだ。


 葉月のお母さんの料理は美味く、朝からお代わりをして頂いた。


 二人揃って登校し、授業中は二人揃って爆睡していた。俺よりも、制服の修復をした葉月の方が負担が大きかったのだ。体力の消耗が激しいのだ。


グゴッ。


夢うつつの中で、葉月のいびきを聞いて、俺も眠りに落ちた。


 昼休みに、富士見さん以外が、コミュニケーターと水晶を返しに来た。


 最後に高安さんが件の木刀を持って来た。


「これを貰ったのだが、どうしたものかな」


(知ってるよ。俺も現場にいたしな。それにしても眠い)


「くれるって言うんだから、貰っておけばいいんじゃないの」

「俺は知らん」


(眠いんだよ。寝かせてくれよ)


「先輩、魔法の事は蘇我さんに」


俺は隣の席の蘇我さんを刺した。


「戦闘の事は桐崎に」


俺は、前の席の桐崎を指した。


「魔法部の事なら瀬戸山さんに聞いてください」


俺は、涎をくって、ガッツリ寝ている葉月を指差した。


「そうなのか?」


「眩し過ぎるのよ。その木刀の輝きを止めて頂戴」


蘇我さんが木刀に文句を言って来た。

魔力が見える者には、木刀が光り輝いて見えるらしい。


「サザン、憑依!」


「サザン、大丈夫か? 火傷は治ったか?」


「ユウト、大丈夫ですよ。しかし、あの光と熱には参りましたね」

「なんて言う魔法なんです?」


「良かった」

「水のプラズマ化だ。今度、解説しよう」


 俺は、魔核を五つほど取り出し、サザンに頼んで、木刀に頑強の魔法を掛けた。


そして、物理障壁と魔法障壁、結界と掛けて、物理障壁の刃も付けた。

魔法障壁によって、妖精の光は遮られる。

柄を高安さんが持つと呪われて、V字型に鋭利な刃も出せるようにした。

まあ、これで当分は困らないだろう。困った時は、木刀の本来の姿にして使ってくれたらいい。


 木刀をじっくり見ると、鍔も一本の木から削り出されている。

制作過程を見ている者には当たり前だが、普通はあり得ないのだ。


 鍔は、唐草の中に孔雀の尾が左右に透し彫りで彫られている。

 はばきには、楕円の丸に開いたV字が描かれている。某自動車メーカーのあのマークだ。もちろん、光背と孔雀の翼だ。


(あいつらめ、何もしていないくせに、しっかりと自己主張はして行きやがる)


 棟を上にして刀身を見ると、山々が描かれており、空には風や雪、大地には木々や花、虫達が描かれている。


特に、桜の花びらは数多く描かれている。そして、それは左右対称に描かれているのだ。

また、それらは掘られている訳でも、描かれている訳でもない。木の年輪と同じ、桜の木の模様なのだ。


 俺は、ぶっきら棒に木刀を高安さんに返した。


「先輩、これで魔法でも幽霊でもゴブリンでも切れますよ」

「でも、この木刀の本領を発揮すると、神様でも切り殺せるから注意してくださいよ」


「あ、ああ」

「あのぉ?」


「馬鹿太郎ももらってていいかな?」


「どうぞ」

(あ、しまった! 回収しなくちゃいけなかったんだ)

(あれは桜木のものだったのだ)


「ありがとう、可愛い動物がいっぱい出てくるから喜んでいたんだ」


「ええぇぇーー! どうして、あなた達だけ神殺しが付くのよ!」


蘇我さんが突然叫んだ。


 桐崎と高安さん、サザンに「神殺し」の称号が付いているらしい。


(桐崎と高安さんは分かるが、どうして俺じゃなくサザンなんじゃ!)


 下校時、靴を履き替えていると、廊下の奥の窓から、運動場を走るカバに乗った女学生が見えた。俺よりも一つ年上だけど、子供の様に楽しんでいる。


あれ、どうするよ?

次回より、新章になります。

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