ハンティング その17
この時間からアルコールを飲んで盛り上がって居る人たちがいる。
日本のビールメーカーのビールも有るが、ヨーロッパのエールビールが並んでいる。
店内はビキニ鎧のお姉さんやら、オークまで居て盛り上がって居る。
仕事帰りに、コスプレして楽しんでいるのだろう。
軽く夕食を済ますと、俺たちは向かいの雑貨屋に向かった。
車が一台通れるぐらいの道を挟んだ向かいのビルに雑貨屋が入って居るらしい。
ここは何の能力もなくてもちゃんと見える普通の店だ。扉を開けると正面がレジになっており、右に小物、雑貨、魔法の道具など。レジの左側がカウンターになっておりその奥の開いた広いところにテーブルが4つほどあり喫茶スペースになっている。またテーブルの壁側は本棚になっており、書籍などを読めるし販売もしている。
ここに置いてる商品は全て魔法がかかっている魔法の道具だ。そのため、価格が通常市販の価格よりも高くなっている。
俺が、書籍を見ていると、蘇我さんは何やら小間物を見ていた。
何を見ているかと横から見ると、小さなピンクの石の入った「幸運+1の指輪」だった。
魔法の書籍の精算を済ます時に、その幸運の指輪を一緒に買ってプレゼントした。
あの金の50万円は、高校生にしては稼ぎ過ぎだし、これだけの書籍は使いすぎだと思うが、こういう事は誰か詳しい人がいないと良く解らないので、今のうちに買って置く。お礼にいま蘇我さんにプレゼント用の指輪を買っておくのは特に構わないだろう。
蘇我さんは、お金を使わせたと恐縮していたが、このお金は、蘇我さんのおじいさんが稼がせてくれた分だと説明し、特に問題ないことを伝えた。
しかし、結局、新たにお金を稼ごうと、ゾンビ狩りに行く事になった。
先ほどのハンターギルドに戻り、依頼を受ける事になった。
ハンターギルドの依頼は、登録してる者が契約するのであれば、メンバー全員がハンター登録してなくても受けられるが、お金の振り込みなどもあり、基本ハンター登録していると喜ばれる。
そのため、蘇我さんは神奈川県支部の魔術師だが、東京支部でハンター登録することになった。
「パーティー名は?」受け付けの女性が聞いてくる。
「まだ有りません。今必要ですか?」
「後でもいいけど、じゃあ、『ウサミミパラダイス』ね。後でいつでも変えられるから」
「嫌です」
「嫌っ!」
二人で拒否したのに、ウサミミパラダイスになってしまった。
ウサミミパラダイスの稼ぎは、等分配する事にした。
受け付けの女性が、初心者ばかりだと心配だと言うことで、ベテランの同行してくれるハンターを探してくれた。
「誰かこの子達を樹海のゾンビ狩りに連れて行って貰えないかな?」
「翼竜の翼達」と言うメンバーが手を上げてくれた。厨二病で、なんとなく笑ってしまう名前だが、それはそれで、そうやって自分たちで楽しんでいるんだろう。
おじさん3名、若者1名のパーティだ。
魔法使いの黒部さん、魔法剣士の方士さん、魔法剣士の面利さんが中年のおじさんだ。
「魔法を使うより叩っ斬った方が早いんだよ。」と笑って居る若い一人が、純剣士でグレートソードを使うらしいのが林田さん。なぜか、「ハンターは遊びじゃないぞ」と厳しく注意された。
リーダーは魔法使いの黒田さんだ。
「林田は厳しいぞ!」と他のメンバーが笑って居る。
あとで「林田さんは、ちょっと要注意よ」と受け付けのお姉さんまで注意してくれる。
(いやいや、彼を同行させようとしたのは、あなたでしょう)
今週、金曜日の夕方に、御茶ノ水駅の前に集合になった。
事前に準備する物をメモ書きして貰った。こう言うのは、事前の準備が大切だ。
先ずはピッケル、ネットでポチッとなと。
俺は背が高いので、ピッケルを大きめで、柄が真っ直ぐで、ピッケが直角に近い物、鋼鉄製の物を買った。
で、工業科の学生に、グラインダーで先を鋭利に加工し、焼きを入れて貰った。
慣れたもので、ピックと言う先を外し、加工したら元に戻してくれる。
石突き(ビッツェ)も加工して貰った。
後は、長いプラスドライバー。41cmも有る。これは、車など機械整備に使うものらしい。
これも先を削って貰って、鋭利にして貰う。焼きを入れてもらい丈夫にする。
大型サバイバルナイフ、ラッパ、タンバリンをネットでポチッとする。
ラッパは失敗だった。音が出ないのだ。これは吹奏楽部に行って、音の出し方を教えてもらう。
中学一年生の部員に混じって、二日程スー、スーと吹いた。この時期、中学生デビューの吹奏楽部の部員は、まだ音が出せずにいる生徒達がいるのだ。
ちゃんと吹けなくても音が出れば良いので、音が鳴る様になった時点で礼を言って練習を終わった。
浅草橋まで行って、打ち上げ花火とドラゴン系と爆竹を沢山買った。
ドラゴンと5連発打ち上げ花火(火の玉が出てくるやつ)と月世界旅行と笛ロケット。ライターにオイルも持って行く。
2mX2mの紙に薬剤を塗り、魔法用紙に仕上げて、魔法陣を描いていく。
後は、懐中電灯とギルドから貸し出されるビデオカメラだ。そして、電池がいっぱいと当日のお弁当とお茶だ。
例の小間物屋で、握り拳ほどの魔晶石を買う。
魔晶石とは、元の水晶に魔法の加工を施して、魔力のタンクに使うのだ。
魔術師は、この石から魔力を引き出すので、自分は疲れずに魔法を使えるのだ。
これをデニム生地の袋に入れて、紐で吊るす。そしてヌイグルミの中に入れる。
縫製は母親にして貰ったが、それは俺がすると仕上げが汚くなるからな。
魔晶石の重さがヌイグルミにかからない様に、デニムの袋の紐をヌイグルミの外でストラップ風に仕上げる。
ヌイグルミは無難にクマを選んだ。これは、蘇我さんへのプレゼントだ。俺は魔法が使えないので、必要無いからね。
当日、学校が終わると家に帰って、着替えてから、リュックを担いで御茶ノ水駅に向かう。
この時、なぜか鉄刀を家に置いてきてしまう。必要無いと思ったからだ。で、駅前で蘇我さんと翼竜の翼達と合流した。
我々の為に車をもう一台出してくれていたので、素直に礼を言った。
「ピッケルはダメだなぁ。剣の方が使い易いよ」
「奴らは、眼は悪いんだ。だから音と匂いで追ってくるんだ。あの腐敗臭の中で、こっちの匂いなんてしないだろうにね」
「眼なんて、鯖以上に腐ってるのにさ、見えるんだよ」
と、取り留めのない話をしてくれる。
荷物を積み込む時、別の車になったが林田さんが怒っている様な気がするのだが。気のせいだろうか?
青木ヶ原の樹海と言っても、「磁石が効かない」と言うのは嘘だ。
表面が、昔噴火した時の溶岩なので、鉄分が多く、置くと磁北を指さないことがある。
「昼なお暗い」と言う話も嘘だ。昼間は結構明るく、生えてる木も若いので大木も無い。
「同じ所をグルグルと回って、元いた所に戻って来る」と言う話も嘘だ。溶岩流跡なので山が無く、目標物が見つけ難いだけだ。
近所には人が住んでおり、ゴルフ場も多い。そこにノコノコとゾンビに出て来られても困るのだそうだ。
で、山梨県警と山梨県観光協会より、駆除回収の依頼が出ているのだそうだ。
この時期はもう日が長い、夏至までひと月を切っている。中間考査の時期が、ちょうど、あとひと月ぐらいだろうか。
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