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ハンターギルド その16


 中間考査一週間前になったのに、俺は、魔法学はまだ落ちこぼれている。

いや、もう落ちこぼれていると言うのが正しいのか。授業に追いつく気がしない。教師の言っていることの意味がわからないのだ。


 今日は、クラスメイトの桐崎に中等部の方にあるコンビニに付き合って貰っている。コンビニと言っても昔の購買部だが、今はコンビニで、教科書や制服、体操服なども売っている。


 中学の時の教科書と解説本、副読本、買っておいた方が良い本などを選んで貰っている。辞書などは高校の方がいいと言うことなのでそちらを購入することにした。


 魔法学の本は一般の生徒も買えるので、不思議に思って聞くと、魔法学科に所属していなくても使える者も居るのだそうだ。


「たのしいまほう『チンカラホイ』付録付き」と書かれた本を見ていた。


「藤波は出来ないぞ」


「え?」


「お前、魔法使えないじゃん」


 なんか中学生にもバカにされた感じだ。


「ちんからりんって何?」


「チンカラホイな」


「厚紙で出来た四面体や六面体を動かす幼児の遊びだよ」


「それで鍛えるのか? 俺も出来るのか?」


「お前は無理。素質がないからな」


 屈辱の再確認だった。


 そこそこの量の本を抱えてコンビニを出る。


 中学と高校は棟は分かれて居るが、クラブとかは共同のクラブも多いのだそうだ。その為、校内は自由に行き来できる様になって居る。


 桐崎は、何やら後輩と話し込んで居る。話がややこしいので、桐崎と分かれてさっさと俺だけ帰る。

一応、手をあげて挨拶はしたが、桐崎もすまなそうに手を振っていた。


 さあ、勉強だ。


 こう見えて、所謂座学は得意なのだ。一週間も有れば十分だ。

 一旦覚えると忘れたことはないし、理解も早い方だ。速いと言っても良いぐらいだ。


 少し勉強すると、知らない単語は辞書を引かないといけないが、魔法陣の仕組みは理解した。マナの流れと作用も分かった。ただ、実感がないだけだ。


 解らない事は、学校に持って行って桐崎や蘇我さんなどに聞いた。


 聞いて理解すると教科書に書き込んだ。


 大まかな基本事項は、一週間で理解してやった。通常の科目は、中学の時に塾で終わらせてあるので特に心配ない。今は、魔法学だ。

これが赤点なら留年してしまう。


 結局、魔法学の中間考査の結果は、74点だった。26点分は間違えたのではない。知らない単語が出てきた為、問題が理解出来なかったのだ。


 試験範囲内は全て勉強したつもりだったが、溢れていたところが有ったのだ。が、理解して行くと、魔法学にも俄然興味が出てきていた。


 テストも終わってしばらく経った頃、家にハガキが届いた。

日本魔術師協会東京支部からだった。


 住所は御茶ノ水駅の側、大学まで行かず、駅前の雑居ビルの中だ。

「印鑑と身分証明書を持って来い 」と言う。


 よく解らないので、蘇我さんに相談をする。

「蘇我さん〜。こんなハガキが来たのだけど。今度連れて行ってくれないか?」


「ええ、良いわよ」


快諾して貰ったので、二人で行くことになった。


 御茶ノ水駅を降りて坂を下るとすぐのビル。

 お洒落な扇型の窓に「樫の木亭」と書いてある。窓から見ると、店内は一段下がっており、イタリア料理かスペイン料理のお店らしいが、ハッキリ言って無国籍だ。が、どこかで見たヨーロッパ風の店なのだが。

壁には道を照らす様にランプが付いている。


 彼女がビルとビルの間の路地に入ると、壁に手を掛けてガラッと開けた。


(えっ? 扉なんて無かったよね)


「ここは壁に偽装してあるのよ」

「一般の人には見えないの。素質がある人だけが見えて入れるの」


「じゃあ、俺は入れないじゃん」


「その奥のインターホンを押せば、中から開けてくれるわよ」


 蘇我さんは、壁に付いてるガスメーターの影になってるインターホンを指差して言った。


「中から開けてもらうのは、屈辱らしいけど」


「ふふふ」


俺は力なく笑った。


 中は、所謂、ファンタジーのあの店の様だった。

エルフやらドワーフやら魔法使いやら戦士やら、色々な人種がいる。

もちろん人間がコスプレして居るのだが、なかなかな出来栄えだ。


 店員に事情を話すと、奥のカウンターを紹介してくれる。

手前のカウンターは賑やかだが、店の注文カウンターと冒険者ギルドのカウンターになっている。奥のカウンターが魔法協会の受け付けカウンターでひっそりとしていた。


 ハガキを見せると、東京魔術師協会の入会金500円、年会費500円を取られ、ハンター登録500円をまた取られた。合計1500円も取られてしまった。


 ハンターとは、いわゆる冒険者だ。魔物を狩る者という意味でハンターと名乗っているのだ。

しかし、現実に魔物など居る訳がない。魔術師協会に来る依頼を受ける為の身元保証と保険の会費なのだ。


 そこで、ジャパンマジックバンク、JMBの通帳とカードを作って貰った。カードはデビットカードになっていて、通帳にお金が入っている限り何処ででも使用可能だ。


 50万円程の振込があったのだ。

どうやら、蘇我の爺さんとゾンビ狩りをした時の料金らしい。


「藤波様は、ハンター登録させて頂きましたので、以後、依頼をお受けする事が出来ますよ」と教えてもらう。


 事務所の喫茶室を「冒険者の宿」風に改装し、仕事依頼を「ハンター」と呼ぶ様にしたら、何か人気が出たらしい。コスプレをしに来たり、それを見に来たりする人で連日盛況なのだそうだ。どうも、リアルでRPGをしているつもりらしい。


 事務所の奥は、道具屋と本屋が入って居るらしい。

もちろん、ここもRPG風に改修済みだ。表の廊下に、どデカイバスターソードが置いてある。


(魔術師協会だよね、ここ)


 一般の人と言うか魔法の使えない人は、壁にしか見えない扉の横、奥側のインターホンを押せば、別の扉を開けて貰えるらしい。

そちらから入ると、階段とエレベーターが有り、ビル上階の日本魔術師協会本部に行ける。もちろんこちら側にも廊下が繋がっており、こちら側に来れば、樫の木亭に来れる。


 カウンターは手前から、「樫の木亭」、「ハンターギルド事務所」、「日本魔術師協会事務所」の受け付けになって居る。


 ハンターギルドには、お決まりの仕事依頼の紙が貼ってある。雰囲気を出す為かと思ったら、本物の求人なのだそうだ。


 もちろん、モンスター駆除や護衛の依頼なんかはあまりない。

お祓いや霊障の祓い依頼ばかりだ。

変わり種と言うものなら、手品師のアシスタントと言う物も有る。


モンスター駆除など、事件が有れば、先に警察に電話するのであり得ないのだ。


 常設依頼のコーナーに「青木ヶ原樹海のゾンビ駆除」が有った。


「レベル上げに挑んで、ゾンビになる人が多いんですよ。レベル上げれるのって、青木ヶ原か浅間山ぐらいですものね」と説明してくれる。


 聞くんじゃ無かった。嫌な説明だ。あのゾンビ達って、そうしてできるんだ。


 樫の木亭で、蘇我さんはパスタとハンバーグを、俺はハンバーグ定食を食べた。お洒落な店でちょっとゆっくり話せてデートみたいだ。

周りが、エルフとドワーフ達だけどね。


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