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映るカメラの制作 その150

「そうか、じゃあ、オカ研の写真は偽物ばかりか」


「そんな事はないぞ。富士見さんは見えているしな」

「優希や瀬戸山さんは本物だしな」

「この高校に来て良かったよ」


桜木は、何か嬉しそうにしゃべっている。


「オカ研は富士見さんだけじゃないか」


「まあ、そうなんだけど」

「本物に出会ってしまったしな」

「ただ、俺には見えないのだよ。藤波君」


(俺はワトソン君じゃねぇぞ)

「俺にも見えないよ」


「で、見えなくてもいいから、撮影出来るカメラを作って欲しいんだ」


「もっともな意見だし、論理的で納得は出来る」

「だが、そんなカメラはないのだよ。桜木君。残念だったな」


「今、文献に乗ってると言ったじゃないか」


「だが、成功した事例は乗っていないんだよ。桜木くーん」


「かまわん、一応作ってくれ」

「今度、車の都合が付いたら、廃病院の取材に行くんだ」


「はあ?」


「面白い噂話がいっぱい有ってな、鏡の世界からの侵略なんだ」


「トラ猫か?」


「トラ猫?」


「イッパイアッテナ」


本日、二度目のスリップ事故だった。



 俺は、過去に読んだ文献の『霊視メガネ』のレンズの成分表を思い出してメモした。


 石英や紫水晶、エメラルド、銀、金、がメインの鉱石だ。それに、聞いたこともない鉱石の名前が数種類。

キノコや昆虫の蛹も名前があった。

ただし、トカゲの羽とか、コウモリの尻尾と言う、訳の解らない物は無かった。


 生物部と地学部に行って、標本から少し分けてもらった。石英以外は、耳かき一杯程度の量なのだ。

石英は、ゴミ収集所の割れたガラス片で代用した。流石に、標本をまるまる貰う訳にはいかないからだ。


 後は、それらを持って科学部に持って行くだけだ。

正月早々、嫌がられたが、桜木がうまく交渉していた。

桜木には、部室から最高のISOが出るカメラを持って来させておいた。筐体はこいつを使う。


 材料を乳鉢に入れて、ゴリゴリと細かく磨り潰す。

 俺は、だいぶ以前にフローラからドラゴンの目玉を貰っている事を思い出した。

 俺は、ウエストポーチから、ドラゴンの目玉を一つ取り出した。

そして、サザンを憑依させ、借りた小刀に魔刃を発生させ、眼球のレンズ部分を切り取った。

そして、これを細かく切って、乳鉢に一緒に入れて砕いた。


眼球の後ろの部分を切り取ったら、桜木が聞いてきた。


「何やってんだよ?」


「ここに、ドラゴンの視神経が有るんだよ」


 俺は、科学部の床に魔法陣を描いて、カメラとドラゴンの視神経を並べて置いた。


 科学部の鈴木が、乳鉢をゴリゴリしながら言ってきた。


「ここ、科学部なのだけどな。その魔法陣はなんだ。全く、お前らは科学への冒涜者だな」


 俺は、サザンに頼んで、魔核を一つ使って、カメラのCCDとドラゴンの視神経を融合させて、霊視の呪いをカメラに掛けた。

呪いをかける事によって、桜木にも霊視の魔法が使えるからだ。


 乳鉢の中の鉱石が粉末になったら、坩堝に入れて加熱する。

 ガスバーナーを四本集めて、鉱石の粉末を加熱するのだ。しかし、ドラゴンの目玉のレンズが入っているために中々加熱しないのだ。

そこで、俺は、以前作った冒険者の指輪の魔法で、坩堝自体を加熱した。やっと、セラミック製の坩堝が、明るいオレンジ色に光りだした。


 徐々に、中の鉱石が溶け出したので、それを鉄管に付けて吹いて膨らませて行く。

ここは、慣れている鈴木に任せて、俺と桜木でバーナーを持って、冷えないように努力した。


 鈴木が、回しながら鉄管に息を吹き込み、ゆっくりと膨らませて行くのだ。

もう百回目から数が分からなくなったが、二時間ぐらいで大きなガラスの鉢が出来上がる様になった。


 まだ熱いうちに、歪みの無い所をハサミで円形に切って行く。大きいのが一枚と小さいのが二枚取れた。

冷えると、金色の、ミラーサングラスの様に光の通りの悪いガラス板が出来上がった。

まだ、覗いても普通のサングラスの様に見える。


 鈴木に礼を言って、急いで横浜を目指す。

冬の日暮れは早いが、まだ四時前なので急げば閉店前に着けるはずだ。

俺達は駅への道を走った。


 根岸線の関内駅に着いた時は真っ暗だった。

横浜公園を横目に、東に海の方に向かって、早足で歩いた。

ここには、カメラレンズのアダプターで有名なカメラ屋MUKカメラがあるのだ。


 ニコンのカメラにはニコンのレンズしか使えない。しかし、昔のミノルタのレンズを使いたいと言えば、そのアダプターを作ってくれるのだ。


 今は、ミラーレス機に昔のマニュアルカメラのレンズを使うアダプターが流行っているそうだ。


 今回は、フィルターを作るだけなので、フランケンシュタイン似の店主がサクサクと作ってくれる。

一般にフランケンシュタインと言われているのは、フランケンシュタインのモンスターと言われて名前が付いていない。本来、フランケンシュタインと言うのはモンスターを作った博士の名前なのだ。


ただし、ここの店主がどちらに似ているか明言は避けておく。


 科学部の鈴木に作ってもらったレンズに、真円に縁をヤスリで削っていく。既存のフィルターに合うサイズに調整して貰い、中古のフィルターの外径を嵌めて出来上がった。


 フィルターのアダプターは単純で、オス、メスの径が違うだけのアダプターが市販品が有るので、桜木が持ってきたオカ研のビデオカメラに合わせるだけだ。

ちょうど中古があったので、それを買う。


 他の二つも、小学校の前の文房具屋で売っている虫眼鏡サイズなので、同様にフィルターの外径に入れてもらった。


 店を出た時には、大分と夜も更けていた。

桜木がビデオカメラのスイッチを入れて試して見るが、何も映らない。

いや、暗いながらも普通の映像は映っているが、その不思議な物は映っていない。ISO感度を上げると、ちゃんと普通の映像が映るが色合いがおかしい。


「藤波、何も映らないぞ」


「そら、映らないだろうよ。それで映ったら、もう霊視眼鏡が実用化されてるよ」

「コナン君なんて居なくても、死体に聞いてるよ」


「いや、コナン君って」

「で、どうするんだよ。これ」


「これから魔化するんだよ」


 俺は、サザンを憑依させて、魔法の道具を作って貰う。

霊視をカメラと二つの虫眼鏡にもかけて貰う。


 学校にいた時に作っておいた魔法陣シートを広げて、魔核を三つ出して霊視の魔法を掛けて貰った。


 桜木が使うビデオカメラと虫眼鏡サイズの覗きレンズは呪いの霊視だ。

誰が使っても、霊視の呪いがかかるのだ。

俺の虫眼鏡サイズの覗きレンズは普通に魔法の道具だ。使うには、魔法の道具を使う素質がいる。

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