帰宅 その15
俺は知らぬ間に眠っていたらしい。東京駅に着いたと起こされて目が覚めた。
爺さん達に礼を言って分かれた。サザンの指輪と鉄刀は貰って良いと言うことだったので、ありがたく貰っておいた。
横浜経由か八王子経由か悩んだが、横浜経由で帰ることにした。
こんな時間に、まだ電車が有ったんだ。
酔ったサラリーマンの帰宅風景に平和な日常を感じていた。
東京駅で、家の近くに帰ってきた気分になった。まだ東京駅なのに、雑踏の風景がなにか懐かしい。
翌日、学校に行くための準備をする。もう、5月の中旬になっていた。
遠くに富士山が見える。山頂で凍えたのも懐かしい。
下から見ると、まだまだ雪がいっぱいじゃないか。よくあんな所を登らされたよなぁ。
学校に着くと、担任の山口先生に職員室に呼び出された。不登校の扱いになっていたらしい。
「いえ、修行の旅に出ていました」
「で、成果はあったの?」
「いえ、全然」
山口先生に、鑑定魔法を使って診断をしてもらった。
「あら、そうでもないわよ。『魔法の道具を使う素質』が1に、スキルが11に なってるし、『精霊を使う素質』が1に、スキルが6になってるわよ」
「進歩したんじゃない?」
「『精霊を使う素質』って精霊魔法が使えるのですか?」
「それは『精霊魔法の素質』って出るのよ。精霊をこき使う素質かなぁ」
(こき使わないよ。そんなひどい事してないし。ちゃんと頼んだじゃないか)
「で、来週から中間考査なの。藤波君、授業出てないから勉強出来ていないでしょう。これが試験範囲ね。じゃあ、がんばってね」
各科目の試験範囲をまとめたプリントを貰って、教室に帰ってきた。
「蘇我さん、おはよう、ありがとう、昨日、帰ってきたんだ」
俺は真里亞に礼を言った。
「良かった。無事だったのね。おじいちゃん無茶するからねぇ。お父さんは、『あんな修行じゃだめだ。』とずっと喧嘩してるの」
(って、だめなんわかってたんかぁーーーーい!)
「だめだった見たい。やっぱり魔法は使えないよ」
「そう、残念ね。でも、魔法の道具が使えるだけでも生活は変わるわよ」と慰めてくれる。
いや、いや、いや、おれ、授業で良い点取りたいだけだから。生活は魔法が使えなくても困っていないから。
席に着くと桐崎が話しかけてきた。
「試験前に帰ってこられてよかったなぁ」
「学校に来ないから、どうしたのかと思っちゃたよ」
「まだ、中学の復習だから、がんばれば付いてこれるよ」
と心配してくれる。
特に試験範囲を見る限り、中学時代に塾で習い終わってる。特に心配することはない。
問題は、何の解決もしなかった魔法学だ。
すいません、少し残ったので。
明日より、新章です。