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トロール その135

 少し寝た後に、騒がしくなっているので目覚めると、皆が朝食の準備を始めていた。

 炭水化物が多めの、トースト、ハム、野菜に卵料理だ。ジャムやマーマレードやチョコレートなども付いている。俺は、昼飯用におにぎりを作るのだが、炊飯を担当した女子に多い目に炊いて置いて貰った。


 その後、自分のテントで自習をしていると、皆は、狩りに出かけて行ったようだ。

 特に心配する事もなく、自習に集中出来た。30人からなるパーティーで、蘇我さん、秋山さん、瀬戸山さんが居れば、特に問題は起こらないからだ。


 先頭集団に盾装備のサッカー部、ラグビー部、その後に陸上部、アーチェリー部が続き、魔法部、ワンダーフォーゲル部、剣道部と隊列を組んでいる。

 倉田は先頭で、龍山部長の側にいる。


 陸上部の投げ槍は、矢に比べて速度は遅いが質量が有り、威力は絶大だった。サッカー部の頭上を飛び越えて、ゴブリンやオークを襲って行った。


 秋山さんが、サッカー部の日向という奴の横を確保し、和かに従軍している。後ろの方からは、マネージャーの苦情が囁かれているが、昨日に、その実力を見せつけているので、大きな声にはなっていない。まあ、そんな勇気のある奴は存在しないわけだ。


 蘇我さん、秋山さんは、普段は索敵を中心に行い。状況を龍山部長や倉田に報告しているが、状況によったら支援に回ったりしている。


「そこの部屋、右側、オークが7体」


 秋山さんが、日向に報告している。

その声を、倉田がいまいましく聞いている。

(俺が指揮官なのだけどな。誰に報告してるんだよ。せめて、龍山にしろよ)


「よーし、斥候を出して確認する。誰が行ってくれる?」


「日向と山本、行ってこい!」

龍山部長が命令を出した。


 倉田と龍山部長は、いいコンビになって来ていた。阿吽の呼吸で、パーティーを引っ張っていく存在になっていた。


 特に変わった所は無い大きな部屋との報告が帰って来た。オークが数匹居るのを確認したが、七匹かどうかは確認出来なかったそうだ。

彼等は指示をよく守り、勝手に広い室内に入らなかった為、完全に調査が出来なかったのだ。


「よし! 入ろう」


倉田達はそう判断した。


 入り口で、日向と山本は左右を確認したが、魔物らしき物は居なかった。

手で、後続を招き入れて、自分達は扉を守って居る。部屋に入った途端、両サイドからの奇襲を防ぐ為だ。


 ヘッドライトでは、向こう正面の壁に光が届かないぐらい広い部屋だった。天井も、通路に比べて、数倍も高い。


「ダメッ! ここはダメ!」

瀬戸山さんが急に叫んだ。


「出て! 戻って!」


グエアララグララグワーッ!


瀬戸山さんが、振り返って叫んだ時には、通路に戻る石壁の様な扉が閉まってしまった。


「キィークカクカゥ!」


扉のずっと上の壁にゴブリンが居て、壁伝いに逃げていった。


 パーティー全体に嫌な空気が流れる。

全員で閉じ込められたのだ。


「ここは、トロールが居るわよ」


天井を見ながら、瀬戸山さんが言う。


 全員がヘッドライトをつけているので、向こうからこちらは見えている。


龍山部長は、手持ちの大型ライトで壁を照らして、周りを確認した。

 手前に7体程のオークと、向こうの壁の穴から無数のオークが出て来ている。そして、その中を体を屈めて、トロールが出て来た。

トロールは全部で、やはり7体も出て来た。


 桜木は、思わず胸の紀章を叩いた。


「コンピュータ! 藤波に繋げ」

使い方は、予想通りだった。もちろん、コンピュータも宇宙船も使われて居ない。叩いて、スイッチを入れ、そう命令する事がコマンドなのだ。


「なんだ? 忙しいのだけど」


「おい! トロールのいる部屋に閉じ込められた! 助けてくれ!」


「忙しいんだ。蘇我さんと葉月が居るんだろ。大丈夫だ」


「『大丈夫だ』って、7体だぞ! トロールが7体もいるんだ」


「一桁じゃ無いか。秋山さんも居るし、何を心配しているのだ?」


「いや、一桁って」


「ああ、ワンダーフォーゲルの奴もいるんだろ?」


「へっ? 居るよ」

桜木は、一番戦力になら無い奴の名前だと思った。


「じゃあ、手伝って貰え。作戦はこうだ」

藤波は、ワンダーフォーゲル部が参加した作戦を教えた。


「ああ、それと、秋山さんと蘇我さんは押さえておけよ! 派手で、見栄えするぞ」

見栄えって、自分の命が危ないのに、こいつ、何を言ってるんだと桜木は思っていた。


 倉田が、支援する魔法部員を振り分けている。


「そっちは、一体に一人で十分だろう! 運動部をこっちにくれ」

桜木は、倉田に頼んで見た。


「何? 無茶を言うな」


 桜木の希望に、倉田が拒否している。


「そうね。トロールだし、そんな感じね」

瀬戸山さんは了承したが、秋山さんが渋っている。


「私、トロールなんかと戦った事がないわ」

当たり前だ。いくら魔法が使えるからと行って、日常的にトロールと戦ってる奴などいないのだ。


ピポッ!

俺の胸の紀章が鳴った。


「藤波〜ィ! 秋山さんが、トロールと戦った事が無いって!」


「なんだ、俺は忙しいと言ってるだろう」


「いやいや、助けてくれよ」


「人間、何にでも初めてってあるものだよ。サッカー部の日向と組ませてやれよ。速攻で倒すよ」


「マジか?」


「勿論!」



トロールは、横に広がりながら、徐々に近づいて来た。

我々をU字型に取り囲むつもりだ。


 桜木は、倉田の指示を無視して動き出す。


「日向、こっちに来て、秋山さんの盾になって」

「秋山さんがトロールを倒すからトドメを刺して」


 サッカーの日向を呼びつけて、秋山さんの前に立たす。


「どうして俺なんだ?」

さすがにトロールと向き合えと言われて、怯え出していた。


「お前がしっかりしないと、俺達が全滅するんだよ」


「だから、どうして俺なんだ?」


「落ち着け! お前は、うちの学校で二番目に強い魔女っ子への生贄だ。可愛いし、美人だし、特に問題はないだろう」

と言って、桜木は秋山さんを指差し言った。


「死にたくなかったら、彼女から離れるな。今、ここにトロールを倒せる奴は三人しかいない。そのうちの一人だ」


「えっ?」


「もう一度言う。死にたくなかったら、側にいろ」


桜木は、今度は秋山さんの方に歩いて言って話した。


「秋山さん、藤波が、『報酬は彼で』って」

「作戦は、こうで」

桜木は、秋山さんにトロールを倒す方法を伝えた。


「止めてよね。無理にくっつけないで! ちゃんと自分で言うわよ!」


 次に、蘇我さんのそばに駆け寄って、20円を渡した。


「藤波が、倒して欲しいトロールの数だけ、10円玉を渡せって」


 蘇我さんは、悪い笑顔で言った。

「よく覚えていたわね。たった二匹で良いの?」


「えっ? 一匹10円で倒してくれるの?」


「10円玉で倒すのよ」


「うっ!」

「お、お願いします」


(魔法学科の一組の奴らはおかしすぎる)

話していて、桜木は恐怖を感じていた。

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