怪獣退治の専門家?MATかよ その13
もう一度、相手の弱点を考える。
「フローラ、ドラゴンの血の色は何色だ?」
「血の色は赤に決まってるでしょう。何言ってるのです?」
妖精が、人を馬鹿にした顔で言ってくる。
「ええ? 妖精は緑じゃないの? そんな昆虫の羽根みたいなのつけて空飛んでるじゃん」
「なに言ってるんです。妖精だって血は赤いですよ」
知らなかった。こいつら昆虫だと思ってた。進化の過程でどこで分岐したんだろう?
「んふふうふ、勝った。奴等の弱点は鼻の穴だ」
「鼻の穴? 栓でもして歩くの? バッカじゃない?」
「奴らは、シーラカンスの親せきなのさ」
「は?」
「竹輪に目と神経を付けたら、みんな兄弟だよ」
「竹輪って何?」
「くっくっくっくっ、ヘモグロビンを取り込んだ後に分化したんだ」
「おい、フローラ、妖精達の助けが居る。出来るだけ仰山の妖精を集めてくれ」
「魔法で小麦粉やトウモロコシの粉は作れるか? 出来るだけ細かいほうがいい。屋敷妖精に頼んだほうがいいのか? 量は大量だ。やつらが埋まるぐらいの量だ」
「小麦粉ぐらい、いくらでも作れるわよ。人の世界と違って妖精界はマナが豊富なの」
「じゃあ、妖精達を3つに分けて、一班は小麦粉とトウモロコシの粉を奴等の上に撒いてやってくれ。前が見えなくなって埋まるぐらいに。
もう一斑は、嵐をやつらに味合わせてやってくれ。目を開けられないぐらいに。特に、下から上に、落ちた小麦粉の粉を舞い上げるように。
最後の一斑は、空気の壁を作って、中の空気と外の空気が入れ替わらないようにしてくれ。最低五分、いや最低十分間は空気が入れ替わらないようにしてくれ。妖魔の出入りは自由でいい。空気だけ外に出さなければいいから」
「あと、火矢が必要だ。弓矢ってこの世界にある? 松の根っこから松脂が取れるんだけど。松が生えてる所知らない?」
「弓矢は見たこと有るから作れるわよ。油もあるわよ」
「じゃあ、早速準備してくれ」
「妖精王よ! この軍勢を見よ。長い戦いも今日で終わりだ。勇者を呼んだようだが、今日ここで二人で死ぬが良い」
空と大地から、右から左から、前と後ろから、この世界から声がする。
「だれ?」??????
フローラに聞いてみる。
「え?」
知らないことが不思議なような顔をする。なぜ? 俺は会った事ないよ。
「魔族のベルゼブブ将軍」
(そんな、ハエの王がわざわざ弱いゴブリン引き連れてくるかな? みんな、騙されてるんじゃないの?)
「本当に? なんか違うんじゃないの?」
「本当よ」
「嘘だろう?」
「本当よ」
「聞いてみようか?」
「あー、あー、自称、魔族のー、ハエの王のベルゼブブ将軍は本物ですかぁ~!」
俺は大声で聞いてみた。
「本物に決まっておろうがー!、お前からぶち殺して地獄に引き摺り下ろすぞ」
空から返事があった。
「本物である証拠をみせてくださぁーーーーい」
「本物なら、血は赤いですかーーーーぁ?」
一応、質問してみた。
「血は赤いに決まっておろう」
大地と大空から返事があった。
周りの妖精たちは、彼の声をきいて不安で震えている。
「あんた馬鹿じゃないの? だから、血は赤いに決まっているでしょう」
フローラが左の肩に留って、左の耳を引っ張ってくる。
「ふん、勝った。血が赤いんだって。ははは。赤いんだって。悪魔に血が流れてるだけでもびっくりだけどな」
「バッカじゃないの? だから血は赤いのよ」
「ヒヒヒ、準備が整ったら、いつでも作戦スタートだ。相手に合わせてやる必要はない」俺は笑いが止まらない。
弓矢が届いた。
ジャックと豆の木かと言いたくなる様な太い蔓に、細い蔓で弦を張ってある。
弦の括り具合とか、荒い造りだなぁ。使えるのか? まぁ、一回だけだからいいかぁ。
矢の先は、なにやら布を巻いてそれにドロドロの油を塗ってある。
これで飛ぶのか? 確かに標的は大きいけど。
てんとう虫やカブトムシの様な妖精が次々に報告に来る。どうやら、準備が整って、最後の一匹が報告に来たようだ。
敵のすぐ近くまで、妖精たちは隠れて潜んでいるのだ。魔法を使うために敵との距離を詰めているのだ。
そういや、俺が指揮官? 妖精王が戦ってるのじゃないの? さっき、そう言ってたよな。
胸を張って、右手を高く上げる。さっと手を下ろして
「やれぇーーーぇ!」
と絶叫の雄たけびを上げる。
黒い空に白い粉が突然湧き出して、妖魔達の上にゆっくりと降り落ちる。規模が大きいのと、距離があるので、スローモーションを見ているみたいだ。
降り注ぐ小麦粉が風で再び舞い上がる。次第に小麦粉は濃くなってきて、妖魔たちは見えなくなってきた。
「がははは、こんなことで視界を奪ったつもりか? ものども、気をつけろ! 視界を奪って、不安に駆られて同士討ちをさせるつもりじゃ。奴はたった一人じゃ、落ち着けば怖くはないぞ!」
大空から声がする。低く笑い声が混じっており、余裕の雰囲気をかもし出だしている。
少したって、俺は弓を手にする。矢の先に火をつけてもらう、魔法って便利だなぁ。火矢からは黒いすすの煙が上がっているので、なにかの油なのだろう、メラメラと赤黒く燃えている。
フローラは左肩に腰をかけている。体を安定させるのに、俺の左の耳を持っている。フローラ、それは手すりじゃないんだよ。引っ張られると痛いんだよ。
違う妖精が、矢に風の魔法をかけてくれる。
45度、最大射程で撃つ!
シュッ! 弦がはじけて、矢が飛んで行く。ゆっくりと山なりに火の玉が飛んで行くのが見える。
小麦粉の壁の中に天井から入って消えた。何も起こらなかった。
「なんだ! その攻撃は? そんな火矢で誰が倒せるのものか? かかかかっ!」
「「「「「「あはははははは」」」」」」。
空から、ベルゼブブの笑い声と妖魔達の笑い声が響く。
妖精達が不安げな顔を見せる。
フンッ!
「少し、早かったようだ」
俺は落ち着いている風を装って、説明する。
もう中が見えない白い壁を見て、言い訳をする。
「小麦粉の嵐が、まだ薄かったらしい。今度は大丈夫だ」
待っている時間が、非常に長く感じる。妖精達の視線も痛いしな。
3分ほど経ったので、もう一度火矢を準備する。
矢の先に火をつけてもらい、再度、45度の角度で撃ちだした。
500メートルは飛んだのじゃないかと思われるぐらい遠くに飛んだ。妖精の魔法恐るべし。
白い壁は、火矢が落ちた地点から炎に包まれていく。炎がだんだんと周辺に広がっていく。
密閉はしていないので爆発はしていないが、十分爆発に近い炎が上がっている。
「ずずどどどどぉおおーーーん」
遅れて音が伝わってきた。
「なにあれ? どんな魔法なの?」
フローラが聞いてくる。
「爆炎?」、「聞いたことないわ、あんな魔法」
周囲の妖精も驚きを通り越して恐れおののいている。
「粉塵爆発と言うんだ。時々事故が起こって大変なんだけどね」
「それにしても10分って長いな」と俺。
時計で測っていたのではないが、相当待った気がした。
「さあ、行こうか」
「フローラ、俺の頭とお前の周りに新鮮な空気を送り続けろ」
「あの中の空気は毒の空気だぞ。吸ったら一瞬で死ぬぞ」
左肩にフローラを乗せたまま走り出していた。
(フローラ、だから、耳を持つな)
フローラに持たれている耳が痛い。
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