表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
本妻探偵〜彼女の不幸な結婚〜  作者: 地野千塩


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/68

極悪婚活カウンセラー編-2

 昼出版仕事中、常盤に客が訪ねてきた。


 田辺と一緒に取材をした時に会った婚活カンセラーの女性だった。


 浅山ミイと言った。三十代後半の女性で、パンツスーツがよく似合い、女性アナウンサーの様な誰もが好感を持つ様な清潔感がある雰囲気だった。


 結婚相談所に取材中に偶然居合せ、田辺と意気投合した。フリーランスの婚活カウンセラーだが、人気があるらしくたまに結婚相談所でもコンサルタント業務もしているという。


 見た目は清潔感のある美人だったが、話すとサバサバしていて田辺と政治家や芸能人の悪口で盛り上がっていた。


 初対面の割に仲が良くなりすぎる気もして、常盤は脳裏に文花の顔が浮かび、嫌な予感がした。


 応接室に通して、常盤はミイと向き合って座った。お茶を出すと、ミイはにっこりと微笑んだ。優雅な笑い方だった。


 ミイのオフィシャルブログでは、モテテクニックとして笑い方や仕草が指南されていた。なかなか毒舌で歯に絹着せないブログだった。ブログのトップには冗談のように、「気の弱い人は閲覧禁止!」とまで書かれている。


 見た目は美人だったが、中身は癖の強そうな女だと常盤は思う。ブログの記事は過去に何回も炎上している。その一方でミイのお陰で恋愛が上手くいったと熱狂的なファンも多く、ブログは数冊書籍化もされていた。その一冊は昼出版からも出ていた。


「どうしたんですか? 何か問題でも?」


 常盤はなぜ自分のところに尋ねてくるのかわからなかった。


「これ、先生に渡してくださらない? 執筆に役に立つと思うんです」


 ミイは一冊のノートをカバンから取り出して見せた。


 ペラペラとめくると結婚相談所に来る女性の特徴や、ミイの実際会ったクライアントの思い出が直筆で綴られていた。


「これは先生喜ぶと思います。先生に渡しておきますね」

「わあ! うれしい! 先生のお役に立てたらと思って一生懸命書いたんです!」


 ミイは若干大袈裟に喜んで見せた。ちょっとぶりっ子っぽいが、こうして喜ばれると男として悪い気はしない。


 狭い応接室には緑茶の爽やかな香りがほんのりと漂っていた。窓の外から春の呑気な日差しが注いでいて少し暑かった。


「あの、昼出版さんは、持ち込み原稿は受け入れていないんですか?」


 ミイは若干もじもじしつつ質問してきた。


「うちは無いですね。漫画も基本的に賞を受賞した方を……」

「そうなんですね」


 ミイは深くため息をついた。


 聞くと自身のブログをまた書籍化したいとあちこちに売りこんでいるらしいが、どこも断られて困っているという話だった。この様な婚活カウンセラーや恋愛カウンセラーは、競争相手も多く、厳しい世界だと言う。


 ミイは強そうに見えたが、悩みを打ち明ける姿は女性らしい中身で守ってあげたくなる。


「それと、これは単純な興味なんですけど、先生の奥さんってどんな人?」


 突然話題が変わり、常盤は驚く。しかし他人に説明できるほど、常盤は文花の事を知らなかった。またこんな質問をしてくるミイの意図もわからない。


 いや、これは嫌な予感が的中したという事だろうか。ミイは田辺に興味を持っている。おそらく男性として。


「いえ、ちゃんと会った事はないので知らないです」

「そう」


 ミイは細い指で髪をかき分けた。爪はマニュキュアが綺麗に塗ってあった。薬指には指輪がはまっている。


「ミイさんはご結婚は?」

「ええ、もちろんしてるわよ。こういう仕事で独身っていうのは、ちょっとね……。ふふ、簡単に離婚もできないわね」


 やはり嫌な予感が的中している様だと思う。だからといって、ミイが本当に何を思っているのかはわからないし、見当違いかもしれない。


「あなたは?」

「いいえ、独身です」

「あら、独身貴族ね。羨ましい」


 常盤の友人は既婚者も多かったが、結婚が良いものだと言うものは多くはなかった。お金や子供の問題、パートナーの不倫や借金。そんな話を聞くと確かに自分は本当に独身貴族かもしれないと思った。


「結婚なんてするもんじゃないわよね」

「ミイさん、その仕事でそんな事言って良いんですか? 婚活カウンセラーなんでしょう」

「だって結婚したって幸せになる保証なんてないじゃない。私のクライアントも結婚相談所行く女もみんな誤解してる」


 妙にミイは切迫詰まっていた。


 深い悩みもありそうだったが、自分が追求する立場でもないし、その必要もないだろう。


 話もつき、ミイはノートを残して帰っていった。


 常盤はデスクに戻りノートを読んでいった。確かによく纏まっていて、誤字や脱字もほとんどない。丁寧な作りだった。婚活の舞台裏もよくわかり、作家の創作にも役立ちそうだった。


「あれ?」


 しかし最後のページを見て常盤は凍りついた。

 ミイの連絡先と、メッセージが書き込まれていた。


『先生のこと、好きになっちゃいました 浅山ミイ』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ