不幸な女編-6
お昼は結局ピザのデリバリーを頼むことになった。
十羽が自分は男だから奢ると言い張ったのだ。
四人でピザを食べながら、秋子は学生みたいだとはしゃいでいた。子供みたいな無邪気な笑顔で、どなんとなく胸が痛くなる。
「みんなで食事するなんて久しぶり」
「そういえば私もだわ」
文花は小さく呟く。
「じゃあ、たまに皆んなでこうやって集まりましょうよ」
十羽がピザの端を齧りつつ、提案した。
普段だったら文花もこういうものは身体に悪いから食べないが、確かにたまに食べるのには良いかもしれない。
濃いピザソースが舌にピリピリとした。もしかしたらお腹を壊すかもしれないから、文花はたくさん食べるのはやめた。
「そうですよ、秋子さん。浅山ミイの悪口でも言ってストレス解消しましょう」
「華はいつも悪口しか言わないだろ」
十羽は呆れていたが、さっきと違って文花に警戒心は抱いてない様だ。ミイの話を聞くといっても根掘り葉掘り聞く事はなかったせいだろうか。どうもこの男は秋子に特別な感情を抱いているようだった。
ただ秋子本人は気づいていないようだし、左手の薬指には結婚指輪がはめられたままだった。
「そうだ、文花さんはどこに住んでるんですか?」
「千葉県よ」
秋子に正直に千葉の田舎に住んでいると答えた。もちろんミイの家と近所だとは言わない。
「夫の実家も千葉県の船橋市なのよ。もしかしたら近所かしら?」
「船橋ですか。うちとは微妙に遠いかな」
秋子とそしばらくその話題のついて盛り上がった。秋子は子供のいる夫の実家に行きたいと言っていたが、なかなか行けないので寂しいとポツリと呟いた。
その姿を見ていると居た堪れない。
ミイが死んでも秋子の家庭は壊れたまま。
文花と夫もミイが死んだからといって関係が修復したわけではない。不倫相手は憎い。しかし不倫相手が死んだからといって望みの結果が手に入るとは限らない。
そう思うと秋子はミイを殺したように見えなかった。確実な証拠ではないが、秋子がミイを殺しても特にメリットはないのだ。文花自身も別にミイを殺したいとは思っていなかった。
ミイが死んでも夫の心が元に戻ってくるという保証はどこにもない。人の心はどうする事もできないと文花は悟っている。
ピザも食べ終え、そろそろお暇する事になった。
「嫌な事質問してごめんなさいね」
帰り際、文花は秋子に謝った。秋子は一瞬キョトンとして、首を振った。
「いえいえ。そうねー、たまに浅山ミイの悪口言うのも良いかなぁ。それにクッキー美味しかった!また遊びにきてね、きっとよ」
秋子は軽く文花の手を叩いた。秋子の手は骨っぽく痩せていた。
「わかった。今度はいっぱいクッキー焼いて持っていくわ」




