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サイゴヒーロー ~魔を狩る人~  作者: 古蘭佐
第四章 新しい仕事は、吸血鬼退治だ
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第八十六話 『最後の一撃は、中二ぽくて』

ドックビル、最後のバトルだ

 また前回の続き、ライデンはパクヒュンキュンの体内に突っ込んで、どうやらベヒモスのマナ提供の切断に成功したのように、毒液体と霧の発生量は明らかに減った。が、それでもウイルスの毒は少しずつ一行に迫っていて、しかも、ウタレフの魔力が尽きたのように、バリアが消えた。


 片膝をついて、喘息(ぜんそく)するウタレフ。ちょっとノスフェラトゥを見て、すぐ彼の手を掴む。そうしたら、元々4、50代に見えるノスフェラトゥは、さらに老けて、しかも空気が抜かれた風船のように、どんどん縮んでいく。


 これを見て、劉凡菲はすぐ金剛琢(こんごうたく)を取り出し、ウタレフをノスフェラトゥから離す。


「だめ! こいつはあたしの獲物よ」

「で、でも、彼から魔力をもらわないと、僕たち全部死んじゃうよ」

「知らないわよ、そんなの。あたしはどうしても今回の依頼を果たさなければならないの! さ、さもないと……」


 目を丸くして、何かを恐れているのように、劉凡菲のいつも微笑んで元気な表情は、一気に暗くなる。


「じゃあ、行けよ」


 諸葛夢はこれを見て、口を挿む。


「お前ならまだここから脱出する力が残っているだろう。ノスフェラトゥを連れて行けよ。あとは、賞金をもらって、じっくりと、地獄化のネオシャンハイを観賞するがいい。一生をかけてな」


 諸葛夢の話を聞いて、劉凡菲の動きが止まり、そしてぼーっとする。この隙で、ウタレフはまたノスフェラトゥを掴み、魔力吸収を再開しようとする。それを見て、劉凡菲は再び金剛琢を揚げるが、諸葛夢は彼女の手を掴み、


「これ以上邪魔をするのならお前を殺す。逃げるのは簡単だがな。命を見殺す罪悪感は一生ついていくぞ。外にはお前のファンがいっぱいいるだろう。アイドルなら、ファンを大事にするべきじゃないのか?」


 これで、金剛琢を持っている劉凡菲は力を抜き、どうやらやっとノスフェラトゥのことをあきらめたようだ。


 一方、ノスフェラトゥはすでに命は風前の灯の如し、そして竹内唯に、最後の言葉を遺す。


「ゆい、強く生きれ、母さんの分まで」


 これを聞いて、どう反応すればいいのかはわからない竹内唯であった。記憶はすでに書き換えられ、お目の前の男は父であることはかろうじて思い出すが、今まで一体どんな思いでがあるのかはさっぱりわからない。それゆえか、心は痛むが、涙が出ない。ただただ、白くなっていく男を見つめるだけ。


 だが、これでよい、と言っているのように、ノスフェラトゥは穏やかな、満足そうな表情して、やがて灰になる。


 これで、魔力は十分だ。ウタレフは立ち上げ、力を貯めて、再度紫炎のバリアを張る。今度は、単純にみんなを守っているのだけではなく、バリアはどんどん拡大し、守りから攻めに転換して、ウイルスやゾンビを焼き払う。最後、炎は傘をも呑みこみ、巨大な傘は亀裂に入り、バラバラになり、そして崩れてゆく。


 すべてが終わった。


 これで撤退できると思えば、劉凡菲と竹内唯は、地べたに座り込んで、ぼーっとしている。二人にどうやって慰めればいいのかはわからない残りの4人は、仕方がなく、見守るしかない。


「もう終わった。帰ろう」


 先に我に返った劉凡菲は、顔の汚れを拭いて、語る。これで一緒にビルを降りようとする一行は、突然、ウタレフの悲鳴を聞こえる。振り返ってみると、ウタレフの体は、数本の鉄骨に貫かれている。


 そして、後ろにある傘の残骸で、ひっくり返した傘布は、一行に照準している。中から、またパクヒュンキュンの顔が出てくる。


「よくがんばったな。だが! ネオシャンハイ全部汚染できなくても、てめえらをいかしてかえさんぞ!!」


 と言ったら、無数の金属破片や鉄骨が、砲弾のように、一行に発射する。


 小劇場内のものはほぼすべて全焼され、残されたのは、数本の柱のみ。一行はすぐ身近な柱に避難したが、それぞれある程度負傷した。


 アンジェリナと諸葛夢は同じ柱の後ろで避難しいる。コングリートでできた柱でも、金属破片の攻撃で、亀裂が入り、どうやら長持ちはできないようだ。


「ど、どうするムウ? 相手が弾切れまで待つ?」


 確かに一理ある。いくらあのハイテクタワーを吸収したとはいえ、無限に発射できるはずはない。しかし、二人はこっそり柱から頭を出して、前の状況を確認したら、どうやら悠長に待つことはでいないようだ。なぜなら、パクヒュンキュンは鉄片を発射しながら、触手でウタレフを引っ張っている。彼にならまだそれなりのマナを残っているはずだ。呑み込まられたら大変なことになる。


「ムウ、みて、あれは何?」


 アンジェリナの指している方向を見ると、パクヒュンキュンの本体に、穴があって、そこから何かが一生懸命出ようとする。よく見ると、ベヒモスだ。


「もし煉獣を手に入れたら、何とかなる」

「でも、向こうの火力が強すぎるよ。うかつに出たら、やられちゃうよ」


 しかし、ウタレフはすでにパクヒュンキュンの真正面まで引っ張られた。そして、巨大な破裂音とともに、二人を庇っている柱は粉々になってしまった。


「仕方ない。無理やりでも前に行くしかないか」


 重心を下ろし、パクヒュンキュンに突進しようとする諸葛夢だが、アンジェリナは急に飛び出し、正面から彼を抱く。


「な、何する気?」

「アンジェリナが盾になって、ムウを庇う!」

「シャ○ナか? バカ! 串刺しされるぞ!」


 鉄骨が飛んで来たら、アンジェリナの小さい体は一瞬貫かれるだろう。それに、女の子に庇われることなど、諸葛夢のプライドは許せない。無理やりアンジェリナを剥がそうとしたら、なぜか、二人の間で、眩しい光が放つ。


 閃光手榴弾以上の眩しさで、二人以外の全員、パクヒュンキュンをふくめて、しばらく行動能力が奪われた。


「ち、力が、湧いてくる?」

「な、何よ、女子に抱かれて力が湧くなんて、ムウはやっぱり変態!」


 弁解する時間がない。今は好機だと思って、諸葛夢はすぐさまパクヒュンキュンに突進する。


「フハハハハハ! 馬鹿め! 目が見えなくても、てめえの存在が感ずるぞ」


 確かに、傘の鉄片攻撃は拡散攻撃だ。真正面に突進すると、必ず射程圏内に入る。それに、小劇場の構造上、左右に迂回することは無理だ。今の諸葛夢なら鉄片の砲弾に対抗することはできるが、それと同時に、前進も確実に阻まれる。


 と思っているその時、飛んできた鉄片は収束され、そして方向が変わった。振り返ると、劉凡菲は金剛琢を持って、鉄片を吸収している。これこそ金剛琢本当の使い方だ。だが、劉凡菲の体力だと、長くは持たないはず。


 諸葛夢は素早く前進して、ベヒモスにタッチしようとするが、周りはウイルスの毒水がまたあふれてきて、なかなか進まない。


 そこで、急に炎が飛んできて、一部の毒水が蒸発させ、諸葛夢の前に、段々と、道が開かれる。今度支援してくれるのは、ウタレフた。体に鉄骨が刺されたまま、かろうじて立って、炎の魔法を使っている。


「ゆ、ゆいを、む、娘を頼んだぞ。若造!」


 と言ったら、ウタレフはさらに力を入れ、全力で魔法を放ち、これでやっとパクヒュンキュンまでのルートを完成した。血の上に倒れていくウタレフを見て、諸葛夢はすぐまた突進を再開し、やっとベヒモスを触れた。尻尾を掴んで、引っ張り出したベヒモスは、なんとしゃべった。


「よう、若造。私の肉体はすでにボロボロだが、なんとベヒモスと融合した。」


 ライデンの声だ。


「だが、私を引っ張り出しただけじゃだめだ。こいつはあまりにもたくさんのものを吸収してしまった。ほっといたら、空気中の魔力を吸収して、ウイルス生成は再開するだろう。」

「なら息の根を止めてやる」

「同感だ」


 ライデンは、紫色の闘気の竜と化し、諸葛夢の手に纏い、二人が同時に力を貯め始める。巨大な力のせいで、16階、15階、14階、地面はどんどん崩れ始める。


「若造、なんかの技名を叫ばないのか?」

「興味ない」

「なら、私にやらせてもらう」


 やがて、ライデンは巨中国龍と西洋竜の集合体のような、大な竜と化す。諸葛夢は正拳突きで、竜を発射する。


「わが主よ。仇は取ったぞ! ベヒモス・クラッシュ!!」


 激しい振動、紫色の竜は、螺旋状にパクヒュンキュンに激突し、ドックビルはさらにどんどん崩れていく。最後、竜は咆哮しながら、空に突き抜く。そして残されたのは、10階にいるアンジェリナ達と、骨しか残っていない、パクヒュンキュンの屍だけだった。


 諸葛夢は、血を吐いて、倒れる。アンジェリナ達も、負傷の上に、数階の高さから落ちたため、指一本も動けない状態になってしまった。


 だが、また数体のゾンビが、パクヒュンキュンの毒水のせいで再起し、動けない一行を襲おうとする。が、急に変な踊りをはじめ、そして黒焦げになって倒れる。


 朦朧(もうろう)と、アンジェリナは包帯姿のカイ、火炎放射器を持っている警察、そして古天仁を見る。そして、目の前が真っ黒になって、気を失う。


 カイやん、終わってからくるとはどういうことやねん、と突っ込みながら。



 ドックビルから数百メートル離れて、もう一軒の新築のビルがあり、そこの工事現場に、一人の少女と一人の男がいる。警察が現れたら、やっとドックビルの観察をやめ、二人は会話し始める。


「わがアイドルの吸血鬼回収行動が失敗したとは」

「途中で邪魔者が現れたもの、仕方がないわ」


 北条玲(ほうじょうあきら)は、謎の男と一緒に、簡易な椅子の上に座る。


「しかし、一体何考えているんだ? 蚊でウイルス散布なんで、原始すぎるだろう」


 北条玲は、頭を振って、


「いいえ、あの蚊は散布だけじゃなく、指令伝達の機能も持っているわ。しかし、実際に指令を出さずにスタッフ全員昏睡したから、感染者たちは暴走して、狂気の殺人鬼になってしまう。ま、どのみち、失敗の欠陥作であることは間違いないでしょう」


 男は納得したのように、背を椅子にもたれ、星空を見ながら、ふと疑問をする。


「にしても、ゾンビ化早すぎない?」

「ウイルスのゾンビ化に詳しいのね」

「いやいや」


 男はすぐ話題を変えようとする。


「今回の実験、一体どこのどいつがやったんだ?」

「わからないわ。高度な隠蔽工作をやったんだから、調べるのに時間がかかる。しかし、大体心当たりはある」

「ほう?」


 男はすぐ興味津々になって、北条玲の答えを待つ。彼女はちょっと溜息をし、椅子から立ち上げ、再びガラスのない窓際に戻り、


「銭氏製薬か、軍よ」


200人にも及ぶ大事件、関わる黒幕は製薬会社か軍か?また何かの陰謀を感じる。

次回を待て!

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