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サイゴヒーロー ~魔を狩る人~  作者: 古蘭佐
第四章 新しい仕事は、吸血鬼退治だ
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第八十一話 『黒と白の合流』

またでかい怪物が現れるのか

 前回の続き。アイザックは慌てて上に登って、もっとでかい怪物が現れたと伝えに来た。幸い、まだこちらに気付いてないようで、今は屋上でうろついている。アンジェリナはすぐ塔の入り口辺りに戻り、状況を確認する。


 炎の中に、異形の怪物が咆哮しながら、獲物を探している。巨大な人間の体を持っているが、首は異常に長く、本来2メートルぐらいの躯幹だが、頭を含むと、4メートルにも及ぶ。肌はなく、筋肉はむき出し、しかもぐにゃぐにゃと動く。


「あ、あれは、たぶん前の怪物です。」


 重傷のキムチェヨンも、かろうじて降りてきた。


 キムチェヨンの言っている怪物とは、復活ウイルスを取り込んだジェイだ。かなり低い確率で、ウイルスは人を復活させるだけでなく、変異させることもある。ジェイは死ぬ前に自分自身にウイルスを注射し、変異した。そして屋上でパクヒュンキュンに不意打ちをしたが、結局一撃で倒せず、二人は戦い始めた。一応勝利を収めたらしいが、さらに変異したのだろう。


「ちぇ、チェヨンさん! そんな傷で動かないで! 今すぐ上に逃げましょう」


 アンジェリナは慌ててキムチェヨンをとめようとするが、キムチェヨンは彼女を解き、


「こ、こんなにでかい塔です。い、いずれ見つかれます。と、特に、あたしの血痕を見たら、なおさら……」


 地面を見れば、確かに、屋上から、石の階段も、塔の入り口も、キムチェヨンの血痕がいっぱい残っている。怪物が気づいたら、一発で塔に来る。


「なら、いますぐ塔の中に逃げるのよ。救援が来るまで逃げ切れば、きっと生き残るチャンスがあるわ」


 キムチェヨンをちょっと考えて、


「あ、アンジェリナ、あ、あたしはね、今日は実験の記録のために来たわけじゃいないです。」

「え?」


 突然、どこからの力かはわからないが、キムチェヨンはアンジェリナとアイザックを塔の中に押し込み、そしてドアを重く閉じる。


「ちぇ、チェヨンさん! 何やってるの?」

「は、早く中へ! あ、安全な場所を探して隠してください! あ、あたしは、少しでも時間稼ぎを!」

「無茶よ! あんなでかい化け物どうやって?」

「どう、どうせもうすぐ死ぬ身です。遠いところに誘導するぐらいなら……」

「でも!」


 アンジェリナはどう力いっぱい押しても、ドアはびくともしない。


「あ、アンジェリナ、あ、あたし、最後に、一つの願いがあります」

「願いって……」

「た、竹内さんのことは、頼みます。あ、あの子は頭がいいから、きっとボルダリングロボット完成できます。あ、あなたは何のためにネオシャンハイから出たいのかはわかりません。で、でも、信じています。き、きっとすごいことをやるんですね。だから……」

「まさか、今日来る本当の理由って」

「さあ、は、早く、中へ逃げてください!」


 なかなか離れないアンジェリナを見て、アイザックは彼女の引っ張る。


「先輩。臆病者と思われるかもしれないですけど、でもこれ以上ここにいたら、チェヨンは無駄死にになりますよ。」


 無理やりに、アイザックは、アンジェリナを塔の奥に引きずっていく。


 ドアの向こうに、二人の気配が消えたことを確認し、キムチェヨンは石の階段から降りて、こっそりと屋上の向こう側に渡る。


「あ、アンジェリナ、もっと早く、あ、あなたと出会えばよかったのに……どうか、万能なる真神よ、あの子に、ご加護を……そして、あたしに力を」


 キムチェヨンは、怪物に歩き出す。


 決して綺麗ではなく、内気で人付き合いが苦手で、自分の趣味や仕事だけを精一杯やる女子。間違った道を選んで、人を殺してしまった。アンジェリナともっと早めに出会えて友達となれば、この過ちは免れるのかは、わからない。


 だが、彼女人生最後の選択肢、少しでも、友のために時間を稼ごうとするその選択は、結果はどうあれ、正しいだと、信じたい。


 キムチェヨン、17歳、新元4年9月23日夜明に死す。


 一方、アイザックはアンジェリナを引っ張って、塔を登り続ける。やっと、大きな赤い扉が見えた。隣でまだ上に行ける階段はあるが、扉は分厚そうで、中に隠れる場所はあるかもしれない。


 ちょっと扉を開けて中を覗き込むと、竹内唯とウタレフがいる。すぐアンジェリナを連れて中に入り、そして扉を閉じる。


 竹内唯とウタレフは、頭を上げ、天井を見ている。アイザックも見ようとするが、二人の隣で、もう一人の人物がいることに気付く。よく見たら、アイザックは自分の目を疑う。何度も目を擦って、そして頬っぺたを引っ張る。これでやっと夢じゃないことだと悟って、


「フェエエエエエエエエエイ!!!!! おおおお、オオマイゴッド! フェイだ! 劉凡菲だ!!」


 叫びながら、隣でぼーっとしているアンジェリナを押す。劉凡菲を見て、先からずっと暗い表情のアンジェリナも、幾分明るくなる。


 叫んでいるアイザックを見て、劉凡菲は静かにっと合図をし、上にゆびを指す。これで、アンジェリナとアイザックも一緒に天井を見る。


 高い天井に、二匹のこコウモリらしきものが飛んでいる。しかし、よく見ると、コウモリではなく、黒い服の人間が、空中で激闘している。数回交戦したら、一人は、もう一人を地面に叩き落す。


 ドカン!


 舞い上がる塵。やっと鎮まったところで、そこに二人の男がいる。貴族服を着ている金髪の男は倒れていて、彼の上に立っているのは、銀髪の若者だ。


「む、ムウ??!!」


 アンジェリナは、思わず叫んだ。しかし、諸葛夢は彼女を無視して、地面の金髪男に数発のパンチを見舞える。


 数発命中されたら、男は全力で体を後方に滑り、諸葛夢を振りほどき、これでやっと起きれる。片膝をつき、喘息(ぜんそく)しながら、血を吐く。


 諸葛夢も負傷したが、向こうと比べるとはるかマシ。男は立てる自体が奇跡的なものだ。かろうじて立ち上がった男、両手を高く捧げ、空中から火の玉を作る。無数のコウモリが集め、火の玉もどんどん大きくなって、そして男はこの火の玉を諸葛夢に発射する。


 対して諸葛夢は、全然よける気もなく、火の玉をぶつかりながら、男に向かって突進する。あっという間にまた男の懐に入り、左手で首を掴み、右手でパンチ一発入れる。この一撃で、男は壁の中にはまられ、そしてすぐまた無数のパンチに浴びれる。


 この場面を見て、アンジェリナはぞっとする。この戦い方は、諸葛夢ではなく、諸葛元だ。諸葛夢の戦闘は、いつも正確かつ合理的で、すべての行動は勝利のためにある。しかし諸葛元は、あらゆる攻撃は相手を痛めつけ、徹底的に弄ぶのが目的だ。そして、片手で男を持ち上げる時、あの不気味な笑いは、アンジェリナの推測を証明してくれる。


 持ち上げられた男は、急に苦しそうにもがく。体が変異し始め、服の下に何が動いているのように、起伏する。そして、体が縮めはじめ、顔も、西洋人の顔から、東洋人の顔に変化する。


「あ、これは初めて出会ったときの姿だ」


 劉凡菲は、あの姿を見て、思わずにしゃべる。


「凡菲姉さん、一体何が起こってるんですか?」


 状況を全く理解できないアンジェリナは、ドキドキしながら、自分最愛のアイドルに聞く。


「話は長くなるねえ。とにかく、あの男はノスフェラトゥっていうだ」

「の、ノスフェラトゥ?吸血伯爵じゃないですか?」


 隣のアイザックは、口を挿む。


「お、よく知ってるわね。そしてもう一人は、夢ちゃん、あ、そういえば、知り合い?」


 アンジェリナが諸葛夢の名前を言ったことを思い出し、劉凡菲は彼女に聞く。しかし、三人はまだ会話しているその時、竹内唯は急に悲鳴を上げ、頭を抱えて倒れる。


 そして、それと同時に、諸葛元が掴んでいるノスフェラトゥの体も、さらに異変が起こる。先ほどの変化じゃないが、元々二十歳ぐらいの若者が、急に年を取って、白い髪の毛や、皺がどんどん増え、急に50代に見える。


「あ、これは原形か?あ、いいえいいえ、さっきのが原形?えええい、紛らわしい!」


 劉凡菲は独り言をしゃべって、


「夢ちゃん、そろそろ終わりにしましょう。でも殺してはいけないよ」


 諸葛元は、笑いながら、手を上げ、強力な一撃を繰り出そうとするその時、急に竹内唯がノスフェラトゥの元に駆けつけ、彼を庇って、


「父さんに手を出さないで!!」


 この一口で、諸葛元の拳が止まり、謁見の間は一瞬で静かになった。


「ええええ、ゆいちゃんは吸血伯爵の娘???」


 アンジェリナの言葉で、やっとその場の人たちは我に返った。しかし、それでも驚きは隠せない。もうちょっと冷静になったら、アンジェリナはまずいと思う。諸葛元は人を平気に殺すタイプだ。竹内唯はあんな風に近づくと危ない。では自分もすぐ前に出て、諸葛元を止めてみるか、せめて竹内唯を救うべきか。しかし今のアンジェリナでは、諸葛元が指一本で殺せるだろう。


 そう悩んでいるとき、アンジェリナはちょっと意外だと思う。なぜなら、諸葛元は竹内唯を見て、全然攻撃しない。逆に、いつもの獰猛(どうもう)な表情も、幾分柔らかくなって、そしてほかの全員と同じようなびっくり顔をする。しばらく立つと、やっと一言しゃべった。


「ね、姉さん……」

「えええええええ、ゆいちゃんはムウ、いや、ゲン君、いやムウの姉さん?? 名前も年齢も違うじゃない? じゃあ、ムウは吸血伯爵の息子? アルカ○ドかい?」


 ますます混乱になったアンジェリナは、また叫ぶ。


「ああ、もういいわよ。めちゃくちゃになったじゃない。感動的な再会バラエティー番組じゃあるまいし。言っとくけど、今誰かがあたしをおばさんやお母さん呼ばわりすると、ぶん殴るわよ」


 劉凡菲は、ため息をしながら、


「そろそろ今日の仕事も終わりにしましょう。ちょっと遊びすぎちゃったけど」


 劉凡飛はちょっと手を下に振ったら、その場の全員は巨大な気圧を感じる。まるで数百キローの重みが背負っているのように、諸葛元を含めて、全員一瞬で倒される。そして、そう足掻いても、動くことができない。


「あたしの目当ては吸血鬼伯爵だけよ。だから、安心して、あんたたちの命は奪わないわ。でも、今夜の記憶は、削除させてもらうわ。何も思い出せないようにね」


 と言ったら、劉凡菲は人差し指を上げ、指先には、紫色の光球が現れる。


竹内唯はノスフェラトゥの娘、そして諸葛夢の姉?劉凡菲は一体何をたくらんでいるのか?

次回を待て!

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