表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サイゴヒーロー ~魔を狩る人~  作者: 古蘭佐
第四章 新しい仕事は、吸血鬼退治だ
82/137

第八十話 『煙の中の真相』

なぜジェイが変異したのか。なぜジェイは、パクヒュンキュンに襲ったのか。真相は……

 新元4年9月22日、ドックビル16階小劇場。


 パクヒュンキュンとジェイは、お互いに背中を預け、周りの環境に警戒する。突然、暗闇から何か飛んできた。すぐ避けたが、明滅するライトで見たら、死体だ。まずいと思い、再度警戒しようと思ったら、すぐ巨大な犬が飛び出し、パクヒュンキュンに襲う。


 パクヒュンキュンがすぐ棒を拾って防御する。犬が棒を噛んでいるとき、蹴りを入れるが、犬に見破れたのように、棒を噛んだまま体を回転し、慣性でパクヒュンキュンを地面に引き倒す。


 バランスの崩れたパクヒュンキュンを見て、犬はすぐ追撃しようとするが、飛んできた椅子が邪魔になって、間に合わなかった。パクヒュンキュンはすぐ起き上がり、体勢を整える。


「サンキューな、ジェイ」

「しかし、兄貴、このままじゃらちが明かないじゃないですか?」

「そうだな。なら、囮作戦やろう」

「囮?」


 まだ疑問を感じているジェイだが、パクヒュンキュンはすぐ彼の腕を掴み、そして犬に投げ飛ばす。パクヒュンキュンの怪力に驚く暇もなく、ジェイはすぐ避けようとする犬を全力で抱く。


 今抱いているのは本当に犬なのかと、ジェイは疑問を感じる。図体がでかいだけではなく、まるで暴れている牛を抱いているのような感覚だ。途中、柱に経過するとき、足で柱を挟んで犬の動きを止めようとするが、逆に自分が引き裂かれそうになる。


「あ、兄貴! あとどれぐらいですか? お、俺はもうだめだ!」

「できたぞ!」


 これを聞いて、喜んでいるジェイは、頭を上がると、前に火が飛んでくる。まずいと思って、すぐ犬から離れた。火の玉は、見事に犬に命中し、キャウっていう悲鳴を上げ、犬は小劇場から逃げ出した。


「ざまあみろ!くそ犬が!」


 ジェイはガッツポーズを取ったら、パクヒュンキュンに、


「先のは危なかったんですね。追撃をしないのですか?」

「いや、あの一撃で生き延びれたとしても、重傷だ。ほっとけ」


 と答えたら、パクヒュンキュンは周りの死体を再度検査し始める。


「へえ、また死体確認ですか。真面目ですね」


 ジェイは引き裂かれそうな肩や腰を揉めながら、ちょっと変と思う。


「あれ? でも、先あの火炎放射器の燃料タンクはもう空っぽですよ? なぜ兄貴はまだ放射できるんですか?」


 パクヒュンキュンはジェイの質問を無視して、引き続き死体を確認しながら、火炎放射器の爪痕を確認する。たまに指を立てて計算する。


「よし、これで全員だな」

「全員? なにが全員ですか?」


 まだ詳しく聞きたいと思っているジェイだが、突然、パクヒュンキュンの手元から、火の玉が現れる。そしてすぐジェイに飛んで、命中した。あっという間に、ジェイは炎に飲み込まれ、悲鳴しながら地面でもがき苦しむ。


 パクヒュンキュンは手元の火炎放射器を再度確認したら捨てる。そして、ジェイの元に歩く。


「じゃあ、先の質問を答えようか。あれはね。目くらましなんだよ。とっくに壊れた。実際に火を放ったのは俺だ。


 本当はね。お前は結構気に入ったのよ。部下にしたいぐらいだ。前のやつはね。今日仕事をさぼりやがって、絶対お前のほうがいいんだよ。だが、残念。今回のウイルス実験はトップシークレットでね。生き残しや証拠は絶対残しちゃいけないんだよ。俺だって、本当は雇い主は誰なのか。しらねえよ」


 パクヒュンキュンはしゃがんで、ジェイに話し続ける。


「まあ、そう気を落とすなよ。今日お前は俺に焼き殺される運命なんだよ。本来はね、まず狂人になって、そしてゾンビになって、そして俺が焼く。でもたぶん抗体があるから、変異はしなかった。だから、生きたまま焼かれた。ほら、大した区別はないだろう? お互い結構手間省けた。めでたしめでたし」


 パクヒュンキュンは立ち上がって、


「ところで、黒いあざ、あれもめくらましだ。感染されたっていう嘘がなければ、おとなしくついてくれないだろう」


 と言って、パクヒュンキュンは自分の首のあざをちょっと触ったら、黒いあざは消え、そこに残ったのは、虎の頭の入れ墨だけだ。


 小劇場から出ようとすると、まだもがいているジェイを見て、パクヒュンキュンは手を振って、火を消した。


「かわいそうに、遺言ぐらいの時間はやるよ」


 そして、小劇場を後にした。


 明滅のライト、大量の死体の中、残されたのは、すでに黒焦げ状態のジェイ、いくら足掻いても、救われることはない。


 ガタ


 焦げたズボンのポケットから、青いビュレットが落ちた。厳重な外層があるから、まだ壊れていない。中に入っているのは、もしワクチンじゃないなら、何かの劇薬かもしれない。なら、せめて楽に死にたい。


 と思って、ジェイは最後の力を振絞り、針を付けたビュレットを、自分の心臓に刺さる。


 ぷす!


 雇い主は誰なのかはわからないが、だれかが、ドックビルでウイルスの実験を画策した。生きている人間を実験体にすることは、法律からも、道徳からも、絶対許されない行為だ。だから、絶対的な秘密事項として扱われ、プロの殺し屋をも雇って、絶対漏れないように、被検体は全部殺す。その殺し屋は、クリーナーと呼ばれる。


 初めての実験ではなく、前にも数回行ったが、いずれも規模が小さく、使用したのはほぼネオシャンハイに来たばかりの外来者のため、結構うまくいったが、今回の200人規模になると、話は違う。


 普通のクリーナーなら、200人、場合によってスタッフをも全部抹殺することは不可能だ。だから、今回は特別腕利きの殺し屋を雇った。確かに、覚醒者かなんかと、呼ばれていた。


 クリーナー以外に、現場でもう一人の特殊人物がいる。それはレコーダーだ。実験で起こしたことを、スタッフ以外も、一人の人間がそれを記録する。


 普通なら、クリーナーとレコーダーは知り合いで、最後現場人物を抹殺するとき、レコーダーだけは生き延びれる。しかし、今回ばかりはちょっと特別だ。なぜなら、今回のクリーナーは質が悪い。過去何度も金のため、レコーダーを殺し、賞金を独り占めした前例があったから。本当は一時的に業界から追放され、今は無痛入れ墨の店を経営しているらしい。


 だが、あんなにたくさんの被検体を全部事故のように抹殺するには、彼に依頼するしかない。そのため、レコーダーは身分を彼に明かさないうえ、ある特殊のウイルスをもらった。あのウイルスは、一度人を死の境界線から呼び戻す力があり、抹殺行動に遭遇したら使える。しかし、緊急ウイルスは、15階の休憩室で紛失した。


「じゃあ、チェヨンさんは、その、レコーダー?」


 キムチェヨンを運びながら、アンジェリナは聞く。屋上の激戦区からもうかなり離れていて、しばらく追ってくるものもないから、アンジェリナとアイザックは、一旦彼女を下ろす。


 竹内唯とウタレフは先に塔のさらに上に行って、身を隠せそうな場所を探す。アイザックは、塔の入り口辺りに戻り、見張りをする。


 キムチェヨンは座って、咳ながら血を吐き出す。そして笑って、


「だ、大悪人なのに、ま、まだあたしの心配をするのですか?」

「チェヨンさんは、ワクチンを散布してみんなを救おうとしたじゃない? だから、本当は悪い人じゃないと思うよ」

「あ、あなたの親友を殺したのに?」


 アンジェリナは、黙り込む。


「も、もう知ってたんですね?」

「うん。チェヨンさんは、ボルダリングロボットとワイヤー発射装置を使って、ベラを殺したのね。ボルダリングロボットを幽霊に変装して、そしてベラが一生懸命逃げたら、ワイヤーで頭を切り落とす。幽霊の仮面は、動漫部がずっと紛失したハロウィン道具。ワイヤー発射装置も、数日前、警察が押収した……」

「け、警察?ま、まさか?あれは……」


 キムチェヨンは、不思議そうな顔で、アンジェリナを見る。


「うん。この間、鬼路で、また人がワイヤーで殺されたの。警察が捜査の時、あれを発見した」

「ま、まさか……」

「アンジェリナも不可解と思うの。ほぼ完ぺきにパイプに偽装したワイヤー発射装置とレンガに偽装した発射スイッチ。何で、レンガにチェヨンさんが操作するときの手形が残っているのにもかかわらず、ワイヤーが発射されたままなんだろう」

「あ、あたしの手形?」

「覚えてない?あの時、でかい蜘蛛を包む布を使ったのでしょう。指紋を残さないためなのね。でも、蜘蛛の黒い血がいっぱいあって、手形が残したの。あの手形はチェヨンさんのものだと、いずれ確定されるよ」


 キムチェヨンは、まるで理解できないの顔で、頭を振り、


「で、でかい蜘蛛? ぜ、全然記憶にありません……」


 そして、再び落ち着いて、アンジェリナに聞く。


「いつあたしを疑ってたのですか?」

「結構最初からかな?」

「うそ」

「本当よ。チェヨンさんから借りたカメラ、フィルムはほとんど残ってない。本当にオカルト取材のために鬼路に行ったのなら、不自然だよ」

「そ、そっか。結構慌てて寝室に戻って取り出したから、う、うっかり中身は確認忘れました」

「理由は、やっぱり銭君……」


 急に表情が曇るキムチェヨンを見て、アンジェリナの言葉は止まる。しかし、キムチェヨンは、いつからか、すでに満面に涙があふれる。


「ば、バカだね。あたし、ブスなのに、不器用なのに、男のため、嫉妬のあまりに、人を殺してしまって……」

「だからアンジェリナは今日チェヨンさんを探しに来たの! チェヨンさん本人に聞きたい! 真実を知りたい!」

「し、知ったらどうするのですか?」

「弁護士を用意して、せめて、死刑にならないように……」

「ひ、人殺しは死刑すべきじゃないですか?」

「いいえ、生きて、生きて贖罪するの!だから……」


 アンジェリナがまだ話しているその時、アイザックは慌てて登ってきて、


「やばいよやばいよ。もっとでかい怪物が現れたよ!」



また新しい怪物が現れた?アンジェリナ一行の運命は?

次回を待て!


次回の更新は3月21日(日)になります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 「クリーナー」って、一周回って、逆にクールですね……
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ