第七十八話 『狼男との再戦』
再び現れた女幽霊、三人の運命は?
前回の続き、諸葛夢、劉凡菲、飛田俊、三人は城のある部屋で避難しているその時、空中から虎の模様が現れ、そしてやがて部屋は火の海に飲み込まれる。逃げようと思ったら、地面に沈んだ女幽霊はまた現れ、三人に襲い掛かる。
状況はまずい。出口は火と崩れた石でふさがれ、女幽霊も相変わらず対策はない。諸葛夢のすべての攻撃は届かないが、相手の攻撃はバンバン当たる。一発一発の攻撃力はそれなりに高いため、持久戦になったらいずれやられる。
幸い今の部屋は先の階段と比べると、かなり広い。火がいっぱいあるものの、一応女幽霊から逃げれる場所はある。が、酸素はどんどん燃焼され、煙と一酸化炭素が増える一方のこの状況。いつまで留まれるのかは問題だ。
悩んでいるとき、劉凡菲は諸葛夢の服を引っ張る。
「夢ちゃん、気づかなかったかな? あのお化けも、ちゃんと火を避けてるのよ。しかも、先火から出たときの叫び声、なんか悲鳴ぽくない?」
言われてみれば確かにそうだ。
「あ、そっかわかった!こいつ火が苦手だな!」
飛田俊は先にこたえて、家具の残骸から木の棒を拾い、火をつけて女幽霊に突撃する。そして劉凡菲の予想通り、女幽霊は飛田俊の松明におびえている。
「本当にあたるとはな」
「あ、いえいえいいえ、あたしが言いたいのはそれじゃないよ」
「は?」
諸葛夢は疑問しているとき、女幽霊は急に怒り出し、松明を飛ばし、飛田俊の首を絞まる。諸葛夢すら耐えないぐらいの腕力だ。一般人の子供ならすぐやられるだろう。救出しようとすると、諸葛夢は劉凡菲に止められる。
「今行っても無駄よ。逆に返り討ち食らっちゃう」
「じゃ、どうすれば」
「あたしが言いたいのは、あのお化けは確かに火が苦手そうだけど、でも何より、火に対して怨念的な感じがするの。だから、何か方法でこの部屋の火を消して」
「バカか、階段の時、火はなかったぞ」
「とりあえず試してみるの。あのデブちゃんを助けようとしても、実際はどうやって?攻撃当たらないでしょう?」
確かに、女幽霊に攻撃が当たれないし、無理やり飛田俊の体を引っ張っても、双方の力量では、彼の体がちぎれるのに違いない。なら、イチかバチか、劉凡菲のアイディアを試すしかない。女の勘を信じて。
火を消す方法なら、諸葛夢は何個か知っている。だが、密閉空間、しかも味方がいる場合、ある方法、空気圧を使うしかない。
力を貯め、諸葛夢は片手を大きく上げ、そして掌で地面に叩く。微かのマナで空気膜を形成し、再度上に引っ張ったら、周りは一時的に真空状態になる。これで、酸素不足で火が弱まる。そしてすぐ、拳に圧縮した空気を地面に叩く。手の形をした気圧が、一瞬で残った火を消し、部屋は真っ暗になった。
ケホケホ
咳の声、飛田俊だ。どうやら生きている。作戦成功か?なら女幽霊は?突然、後ろから寒気が感じる。振り返ると、スポットライトのような光の中に、女の人が、うつ伏せで倒れている。髪の毛、服装、火傷のあざから見ると、あの女幽霊だ。しかし、手足の長さは普通の長さに戻って、そして狂気と殺気が感じない。
遠くないのところに、微かの光で、ぼーっと座っている劉凡菲が見える。魂が抜かれているのように、そこに座っている。なんだ?先の火消し攻撃が重すぎて頭でも打ったのか?
と思いながら、とりあえず劉凡菲を拾って、そして飛田俊を見つけてその場から逃げると計画する。うつ伏せの女はいつかまた化け物に変身して襲い掛かってくる可能性も、まだ十分残っているからだ。
しかし、近づいたとき、女は何か小さい声でつぶやいている。好奇心か、諸葛夢は彼女に近づいて、耳を傾ける。
あなた、娘を
どういう意味だ?何かの怨念か、あるいは生前最後の言葉なのか。しかし、そもそもこの世に幽霊はないはずだ。考えながら、諸葛夢は劉凡菲を軽く押す。これでやっと我に返った彼女は、再び笑顔に戻って、
「あ、夢ちゃん、すごい、なんてすごいんだ」
「白々しい」
「え? なんって?」
ドカン!
その時、急に天井が破られ、たくさんの死体とともに、この前の狼男が再度現る。狼男は地面に倒れている女を見て、激昂する。
「やったのは貴様か??!」
弁解のチャンスもなく、諸葛夢に襲い掛かる。先ほどの消火攻撃でかなり体力消耗したので、苦戦になると思う諸葛夢だが、数回交戦したら、そうでもないと発覚する。相手のほうも前より大幅弱くなって、攻撃の精度も、攻撃力も大幅弱まった。
そして、何より、狼男の集中力が足りない。諸葛夢と戦っているのに、まだ地面の女に気を取られている。うろついている劉凡飛は女に向かって歩くことを見たら、すぐ駆けつけようとするが、この隙は諸葛夢に付かれ、蹴り飛ばされる。
しかし、狼男もすぐ体勢を調整し、壁を掴む。口を大きく開け、諸葛夢に咆哮の空気弾を放ち、そして命中した。この一撃の威力は大きくない。だから前の戦いも使わなかった。吹き飛ばされた諸葛夢は、ちょうど劉凡菲がすぐ近くにいる。すぐ彼女を抱き、破れた天井から上の階層に飛び上がる。
では狼男の次の攻撃に備えるべきかと思えば、狼男はぜんぜん自分の追撃して来なかった。逆にすぐ女に駆けつける。抱き上げられた女は、狼男に何かしゃべったら、彼は頭を下げ、動きを止まった。
では、今のうち逃げるのか。しかし、何か大事なことを忘れたのよな……
「「飛田俊」」
諸葛夢と劉凡菲はお互いを見て、そしてすぐ下を見る。青い肌の死体がいっぱい倒れていて、飛田俊はきっとどこかに埋まれているだろう。なら今飛び降りて彼を探すか。狼男はまた攻撃してくるかもしれない。
躊躇っているその時、急に部屋が激しく揺れ始め、次の瞬間、天地逆転され、二人は空に落下する。
どれぐらい落下したかはわからないが、雲をすり抜け、そこに地面がある。軽く着地したら、柔らかい。絨毯だ。かなり分厚い高級の赤い絨毯で、しかも見覚えがある。ここは、ノスフェラトゥと会った謁見の間だ。
頭を上げったら、笑い声が聞こえる。誰かが、諸葛夢のわからない外国語をしゃべっている。ドイツ語か?すぐ翻訳機を付けながら、声の主を探す。
玉座の上に、背の高い、西洋の美男子が座っている。ノスフェラトゥだ。しかも、前と違って、日本語ではなく、ドイツ語でしゃべり始める。
「今回の魔幻空間は簡単なものだが、やはり思った以上早いな」
ノスフェラトゥは、手持ちのワイングラスをちょっと揺れて、一口飲む。
「元の姿に戻るのに時間がかかる。だからちょっと暇つぶしの余興を用意した。楽しんでもらえたかね?では、そろそろ、お二人の血を、もらおうか」
と言ったら、ノスフェラトゥはちょっと手を振って、強大な気圧で二人を壁にぶつかる。まだ立ち上がってないその時、二枚の巨大な石板が、左右からふたりを挟む。
諸葛夢はすぐ両手を開け、石板を止めるが、かなり重くて、どこまで持つのかがわからない。
「私は、これをエンシェントジューサーと呼ぶんだよ」
残りのワインを飲み干し、ノスフェラトゥはゆっくりと二人に向かう。
「そろそろ諦めたらいかがかな?血に汗が混ぜたら不味くなるからね」
指パッチンをしたら、石板の挟む力は急に大幅増加する。
ガバーン!
たくさんの血が、ノスフェラトゥの顔にぶっかける。
諸葛夢と劉凡菲はノスフェラトゥの石板挟み攻撃、エンシェントジューサーにやられたのか?
次回を待て!




