第七十三話 『黒幕はアンジェリナ?』
ゾンビに襲われる竹内唯、彼女はどう対抗する?
前回の続き、竹内唯はゾンビに食い殺された狂人の縄を解こうとするが、狂人は急にゾンビ化して、縄を千切り、彼女を襲い掛かる。
パン!パン!
二回の銃声、ショットガン二発、至近距離でゾンビに命中し、相手を吹き飛ばす。
竹内唯はすぐ起きて、ウタレフを連れて逃げる。ショットガンは狂人を殺せない。ならゾンビもたぶんまだ“死”んでない。それに、銃声でほかの敵を呼び寄せる可能性が高く、ほかのゾンビや蜘蛛のばけものは今でも駆けつけているだろう。
アンジェリナはどこにいるのかはわからない。あちこちから足音が聞こえてくるから、とりあえず7階で、安全そうな貯蔵室を発見し、すぐ入って身を隠す。ロックして、棚とかも使い、ドアを塞ぐ。
外からゾンビたちの呻き声と足音が聞こえてくる。しかし、しばらく待っても、全然離れる気配はない。
このまま待つのか。もしかしてほかの出口があるかもしれない。映画みたいに、大きな通風口で、ほかの部屋に移動できるかもしれない。ウタレフに音ださないでって指示して、竹内唯は貯蔵室で捜索し始める。
あった!
サイズ的に結構小さいダクトだが、彼女自身もウタレフも小柄なので、たぶん問題なく入れるはず。しかし、ネジで止まられて、そのまま開けることはできない。
今は貯蔵室に逃げ込むのは大正解だと思った。ちょっと探したら、すぐツール箱を発見し、しかもちゃんとドライバーが入ってる。ダクトは天井にあるが、ドアを塞ぐ棚を足場として使えば、ちゃんと届ける。たしかにリスクは高いが、ずっと待つよりマシ。しかもあの棚の重さで、どこまでゾンビの攻撃を防げるのかが疑問だ。
棚を登り、こっそりダクトのネジを外す。
一本、二本、三本……
最後の四本目を外した時、ちょっと手が滑って、ネジは落ちた。慌ててネジを受け止たが、今度は体のバランスが崩れて、棚から落ちってしまった。
ドン!
静寂。一瞬、外の呻き声も足音も消えた。
そして次の瞬間、また騒ぎ出し、どうやら見つかれたようだ。竹内唯はすぐウタレフを掴み、彼を棚の上に持ち上げ、
「早くそこに入って!」
すでにゾンビがドアに叩き始める。手に持っているショットガンはゾンビを殺せないが、それでも薬室を確認し、ドアに照準する。しかし、ウタレフはちょっと登ったらすぐ戻り、
「お姉ちゃん、上は鉄の棒に塞がれたよ」
うそ!
竹内唯もすぐ棚に登り、通風口に確認したら、確かに、熔接されている柵がり、全力で揺らしてもびくともしない。
ドアはすでに破られて、ゾンビの手は入ってきた。幸い知能が高くないようで、ロック外すことは知らなかった。竹内唯はすぐ降りて、全力でドアを抑える。ウタレフもすぐ手伝いに来た。
外にはなん匹いるのだろう?正直言って、一匹の力量でも十分二人を勝るが、火事場の力か、二人は全力でドアを塞げ、意外とゾンビたちと互角の力を見せた。
しかし、先にやられたのは、どっちかの一方ではなく、ドアだ。叩かれたドアはさらに穴があけ、穴からまたまたゾンビの手が入り、二人を捕まる。
一番被害を受けたのは竹内唯だ。ゾンビは彼女の首を絞め、このままだと、絞め殺される。人が死ぬとき、確かに走馬燈が走るはず。しかし、目の前はすでに歪んで真っ黒になったのに、見えてきたのは人の薄い影だけ、だれなのかは全くわからない。
突然
竹内唯の背後から高熱を感じる。やがて、彼女の首を絞めている手は、力を失い、離れてゆく。外のゾンビたちの呻き声も、どんどん小さくなって、そして再び静寂が訪れる。
外は何があったの?
ちょっと気になって、竹内唯はゾンビたちが開けた穴から外を見る。真っ黒の黒焦げだ。しかも死体が焼かれた匂いも伝わってくる。そして、三人の男が廊下を渡った。なかに、服装の見覚えがある人物が二人。
竹内唯はすぐドアを開け、廊下の男に向かい、
「ジェイ、アイザック!」
間違いないあの二人だ。さらにもう一人の男がいる。アジア系で、背が高く、坊主頭の筋肉質の男だ。かなりタイトなTシャツを着て、手に火炎放射器を持っている。いまだに銃口から煙が出ている。
仲間と再会したのに、ジェイの歓迎はあんまり友好的ではなく、すぐ竹内唯の腕を掴み、
「あのビッチはどこにいる?」
この一掴みは結構痛い。竹内唯は彼を振りほどき、
「誰のこと?」
「あんたが探している。あの金髪ビッチのことだ!」
「あたしもまだ探しているわ。それに、言葉遣いを注意して!」
竹内唯は、ちょっと怒って、ショットガンをジェイに向かう。例え人殺せなくても、狂人たちを吹き飛ばして気絶させるぐらいの威力はまだある。ジェイも仕方なく口を閉じる。
「あ~あ、冷静冷静、みんな喧嘩しないで。ベイベー、銃を下ろしてちゃんと話し合おう」
男は二人を止め、ショットガンの銃口を下に押して語る。
「あの小娘のせいで俺たちはウィルスに感染されてんだよ」
ちょっと不満があり、ジェイはやはり男の後ろで愚痴る。
「ど、どういうこと?いったい何があったの?」
男はジェイを見て、説明の仕事は彼に任せた。
「あんたとガキは上に戻ったら、俺たちも心配して、すぐ後を追ったんだよ。そこで、一階の廊下で白衣の負傷者と出会って、彼はすべての真相を俺たちに教えてくれたんだよ」
白衣の負傷者?それなら確かに自分もロビー前の廊下であったと、竹内唯は回想しながら、ジェイの言葉を聞く。
「彼の話では、このビルにすでにあるウィルスが散布されていたんだよ。あのウィルスは人が狂人化の元凶だ。俺たちも感染されている」
ウィルス感染?
「ちょっと失礼」
男は竹内唯後頭部の髪をずらし、首に黒いアザが見えてくる。
「ああ、このお嬢さんも感染されたね。俺たちと同じだ」
すると、自分の首の黒いアザを彼女に見せ、ジェイとアイザックも同じだ。ジェイはすぐウタレフに確認するが、彼の首に何もない。
「このガキ、本当に運がいんだよな。おれたちに救われるわ、ウィルスに感染されないわ」
「ちょっと待って、あたし、まだ状況が変わらない。一体何のウィルス?首のあざってどういうこと?これはアンジェリナとどんな関係?そして、この人だれ?」
「彼の名はパクヒュンキュンだ。彼が先に白衣の傷者を発見したんだ。それに、彼にゾンビどもを焼き殺せる武器を持っている。あんたのショットガンより百倍頼りがある」
パクヒュンキュンは、微笑んで、火炎放射器を揺らしてで竹内唯に挨拶する。
「じゃあ、順番で説明するぜ。なんでしたっけ?何のウィルス?知らねえよ。ただ、このウィルスは人の闘争本能を拡大して、これで狂人になるんだ。そして、このアザ、この黒いアザは感染された証拠だよ」
ジェイはちょっと感情的になり、再度自分のあざを竹内唯に見せる。
「ならなぜあたしたちは狂人にならなかったの?」
「たぶん何か抗体とか、特別な体質とかで、しばらくは大丈夫だ」
「じゃあ、ゾンビは?なぜここゾンビがいるの?」
竹内唯は、後ろ焼き焦げたゾンビの死体を指し、ジェイに聞く。
「ここからは重要なんだ。あの負傷者は、俺たちに警告した。絶対狂人を殺してはいけない。なぜなら、生命活動が止まったら、ゾンビになって復活する。どう?聞いたことがあるだろう?」
(「バーから出たら、一個約束して!人を殺さないで!」)
確かに、アンジェリナも似たような警告はした。
「おかしいと思わないのか?俺たちは銃やハンマーを持ってるんだ。狂人を殺す気満々だよ。なぜ敢えてあのビッチが殺さないでって言ったのか?あいつはわかるんだよ。殺したらどうなるのかを!」
ちょっと眩暈する。全然想像できなかった。あのかわいい女の子はすべての黒幕とは、どうしても信じられなかった。
「で、でも、これは彼女は悪い人とは証明できないでしょう!単純に関係者でゾンビ化の話を知っているだけかも知らないじゃない!」
「悪い人?あいつは人殺しだ!あのビッチが白衣の人を刺して殺したんだよ。それに、俺たちの感染を治療できる唯一のワクチンを奪って逃げたんだよ!」
アンジェリナはすべての黒幕?彼女がワクチンを奪った?真相は?
次回を待て!