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サイゴヒーロー ~魔を狩る人~  作者: 古蘭佐
第四章 新しい仕事は、吸血鬼退治だ
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第七十一話 『ボルダリングカー』

時間をさかのぼり、話は一旦変わる

 新元4年9月20日、せっかくの、ごく普通、ごく平凡の火曜日だ。地底の一戦後、諸葛夢とアンジェリナは、二日休憩して、今日はまた学校に戻った。カイはかなり重傷のため、ポーションの力で一命はとどめたが、やはりさらなる休養が必要だ。古天仁はカイを家に送った。


 朝一番、アンジェリナは大学部に行く。電脳実験室隣にガレージがあり、あそこは中型ロボットの実験をする場所だ。その中に、かなり大きなスペースで、ボルダリングロボットのテストを行っている。


 この時間で、学生はまだ少ない。顔や服、あちこち汚れている大学学生数人は、設備のメンテンナンスをやっている。その中に、高校部の女子生徒一人、キムチェヨンだ。


「チェヨンさん~、おっはよう」


 彼女を見かけたら、アンジェリナはすぐ大声であいさつする。キムチェヨンはちょっとびっくりしたが、アンジェリナを見て、ちょっと頷いて、そして引き続き、設備をメンテナンスし続ける。


 アンジェリナはカバンからファイルを取り出し、キムチェヨンの肩を叩き、


「チェヨンさん、今は大丈夫?ちょっと相談があるんだけど」

「い、今は忙しいです」


 顔についているオイルを拭き、キムチェヨンは二本のケーブルを繋いだら、機械アームの爪が動き始める。


「うわ~これすごい!電磁、じゃなくて、旧式のギア式関節だけど、電磁を利用して摩擦力を低下させ、よりスムーズに動けるために配慮したね。電磁式の関節より動きは遅いけど、この音、この動き、しびれるよね!」

「わ、わかるのですか?」

「わかるよ!やっぱり、ロボットってロマンだよね!特にギア関節の場合、伝統美がある」


 アンジェリナの目がキラキラして、


「でも、この爪は何のために付けたのかな?壁をこのまま登るため?」

「うん」


 キムチェヨンはアンジェリナを見て、ちょっと考えたら、


「こ、この爪なら、こ、このまま石などを差し込んで、つ、捕まります。」

「じゃあ、ワイヤーは使うの?」

「え、ええ」


 キムチェヨンは機械アームの前に、三つの発射口を指し、


「あ、あれはワイヤー発射口です」

「じゃあ、今人乗れるロボットって、ある?」


 キムチェヨンは頭を振って、


「ひ、人はまだ乗れませんよ。も、もうちょっと安全性を、て、テストしなければ、そ、そこでダミー人形をまず使います。し、しかし、まだ人が乗れるコックピットの設計は、ま、まだ未完成なので、だ、大分先だと思います。」

「じゃあ、もし出来上がった設計図があれば?」


 アンジェリナは神秘そうな顔して、キムチェヨンに聞く。そして返事する前に、彼女を捕まって、先取り出したファイルを机に置く。開けたら設計図数枚があり、


「チェヨンさん。専門家として、これらの設計図はどう思う?」


 キムチェヨンは設計図を見たら、目が大きくなって、すぐ軍手を外して細かく見始める。


 ボルダリング用ロボットっていうタイトル設計図だ。本体はモンスタートラックから改造する予定で、コックピットは運転席そのままで改造し、最大六人も同時に席で乗れる。車輪の外側が大きく改造され、ボルダリング用のアームと、前後にワイヤー発生装置がついている。だから、厳密にいうと、ボルダリングカーだ。


 設計思想自体は極めて簡単だもので不備な場所も数か所はあるが、完成度自体が高く、ちょっと改修したらすぐそのまま作れる。キムチェヨン達のチームの方向性と結構似ている。むしろこちらのほうが人が乗りやすい。


「こ、これは?」

「アンジェリナがデザインしたボルダリングカーだよ。でもアンジェリナは門外女だから、チェヨンさんの助けが欲しいの。これを完成したら……」

「ぜ、ぜひ、私に作らせてください!」


 キムチェヨンは、アンジェリナの手を握り、目がキラキラしながら語る。


「チェヨンさんのこの言葉、待ってました!」


 アンジェリナもすぐ握り返す。


「よかった!」


 キムチェヨンは、ちょっと震えている声で歓声を上げながら、さらに詳しく図面を見て、


「わ、ワイヤー発射装置なら私はすでに数個作りました。コントロール装置を運転席に追加すればいい。アームも、こちらでもっといいものがあります。ただ、このモンスタートラックは……」

「これならアンジェリナはすでに5台用意したよ。災前シャンハイでモンスタートラックの大会を開こうとしたが、戦争で中止された。今となっても使いどころがないから、めちゃくちゃ安くて手に入れたよ」

「よ、よかったです!か、改造するには二台ぐらい解体されます。で、でも、車輪の変動構造はちょっと複雑ですね。な、なぜこんな設計を?」


 アンジェリナは笑いながら、


「ああ、これは無視しても大丈夫だよ。本来なら、アンジェリナは変形機能を入れて、二足歩行ロボットに作ろうと思ったけど、時間がないから、あきらめた。これはあれの名残りだよ」

「で、でも、二足歩行ロボットなら、ば、バランスセンサや、そ、その調整は難しいでしょう?で、でなければ、の、乗る人は酔っちゃいます」


 アンジェリナはまた神秘そうな顔で、


「いや、今は意外といけるよ。前にちょっと試してみたけど」

「え?」

「でもね。変形機構組み入れたせいで、動力転導にちょっと問題が残ってるのよ。前の設計では、強度を考えて、車輪の動きを独立したの。そこで、エンジンに直接つなぐじゃなくて、それぞれのモーターで動かせたら、早く走れないよ」

「も、もう実用化まで考えたんですか?」

「そうでもない。ちょっと急用があるの」

「急用?」


 アンジェリナは周りを見て、声を小さくし、


「アンジェリナはちょっとネオシャンハイから外に出たいの」

「ね、ネオシャンハイから出るのですか?な、なぜ?」

「理由はね……ちょっと外に冒険でもしようかなと思ってた」


 キムチェヨンは不思議そうな顔をして、そして引き続き設計図を見る。


「ねえ、チェヨンさん、この設計図を修正して、ボルダリングカー完成するまで、どれぐらい時間かかるの?」

「こ、この設計図自体の完成度が高いから、き、今日中で完成できます。そ、そして実際に組み立てるなら、す、数日かかります。し、しかし、いまは材料が足りない、た、例えばこのモンスタートラック……」

「あ、トラックをすれば影だ」


 アンジェリナはキムチェヨンの後ろを見て、やってくる金髪ロン毛の男に手を振る。


 来たのは銭夕喆(せんせきてつ)、新元学園の金持ちプレイボーイだ。今日もおしゃれな服装を着て、顔に軽く化粧もした。


「よう、マイハニー、君が欲しがっているもの、わざわざ持ってきたよ」


 銭夕喆は、アンジェリナを見て、車のガキを見せる。


「マイハニーはやめてって言ったでしょ」

「これも僕の自由だよ。それに、今回の車は、僕が出したんだろう?」

「別にただでもらったわけじゃないでしょう。アンジェリナはちゃんとお金を払ったよ」

「言っておくけどマイハニー、君の出している金額、ちゃんとした自転車も買えないよ」


 さすがに自分の値切りがやりすぎたと悟ってちょっとてへぺろしたら、アンジェリナは鍵を奪おうとするが、いかんせん身長の差がありすぎて、銭夕喆に弄ばれる。二人がそこで茶番をやっていると、キムチェヨンは急に怒り出し、


「お、女の子をいじめるのがよくありません!こ、ここで騒がせないでください!」


 この一喝、銭夕喆はちょっと止まる。この隙で、アンジェリナは鍵を奪ってすぐキムチェヨンの後ろに隠し、


「銭君ありがとう!これからこちらは忙しくなるので、どうぞお引き取りを」


 仕方がなく、銭夕喆はその場から去った。


 銭夕喆を追い払い、アンジェリナとキムチェヨンは静かな場所で、設計図を改修し始める。しかし、キムチェヨンはなぜかぼーっとしてて、まるで魂が抜かれたのようだ。


「チェヨンさん、大丈夫?」

「ん?え?あ、ああ、わ、私は大丈夫です」

「銭君知ってるの?」

「む、昔パソコンの授業で何回か会いました」

「へえ、銭君が電脳実験室に来るなんて、珍しいね」


 もしかして、ベラに会いに来たかもしれないと、アンジェリナはふと思う。


「か、彼を、よく知ってるんですか?」

「まあね。銭君のお父様はアンジェリナのじいちゃんとビジネス上結構つながりがあるので、一応ね」

「か、彼はあなたのこと、す、好きみたいですね」

「銭君ならいつもあんな調子だよ」

「な、なら、あなたは、か、彼をどう思いますか?」

「タイプじゃない」


 と言ったら、アンジェリナも急にキムチェヨンを見て、


「チェヨンさん、まさか……」

「い、いえ、いいえ、そ、そんなことありません。それに、わ、わたしブスだし」


 これを聞いて、アンジェリナはキムチェヨンの手を捕まり、


「チェヨンさん、女子はそんなこと言っていけないの。自分が自分を信じなくてどうするんのよ!それに、チェヨンさんはブスなんかじゃないよ。かわいいじゃない?」

「か、かわいい?わ、わたしが?」


 キムチェヨンは、改修作業を止まって、不思議そうな顔でアンジェリナを見る。両親以外の人にかわいいといわれたのは、たぶん人生始めてた。


「だから、ちゃんと自信を持たなきゃ!そうだ。お化粧を勉強しよ!アンジェリナもやり方がわからないけど、ミカエラならよく知っている。一緒に彼女の弟子になろう!」

「が、学生会長に?」

「そうだよ。ミカエラのすっぴん、見たことないでしょう」


 目の前の小さき少女、ドールのようなすっぴんの美人を見たら、全く説得力の無いはずの化粧万能説が、なぜか信じてみたくなる。たぶん、目だ。アンジェリナの目から、嘲笑いも、偽りも感じない。キムチェヨンは頭を振り、引き続き設計図を修正する。


 昼頃、キムチェヨンは設計図を改修完了した。アンジェリナはちょっと野暮用に出かけた。五階から人が落ちても大丈夫かどうかっていう実験をやってきたらしい。実際にどうやって実験したのか、キムチェヨンはわからない。


 その後の二日間は、実際の組み立て作業に移る。結構順調に進んだが、二日目の作業終了後、アンジェリナは実際の安全テストをやろうと思って、キムチェヨンを探す。しかし、教室も寝室も、実験室もいない。オカルト研究部の生徒に聞いたら、キムチェヨンはライブ参加しに行ったらしい。


 ボルダリングカーの組み立て作業は結構大変だから、ちょっと羽を伸ばすのも普通だから、テストは翌日に延ばしても大丈夫だと、アンジェリナは思ったが、古天仁の出現は、彼女の考えを変えた。


 そして、ドックビルで昏睡し、狂人に追われ、やっと地下駐車場に到着し、脱出あと一歩のところで、ある人影を見かけた。キムチェヨンだ。


 アンジェリナはすぐ追いかけるが、四階まで登ったら、悲鳴が聞こえてくる。キムチェヨンの声だ。すぐ駆けつけて、キムチェヨンに暴力を振りかけようとする狂人が一人いる。


 幸い一人だけだから、アンジェリナもワンチャンある。すぐ椅子を見つけて、後ろから狂人を殴り倒し、手持ちの縄で縛る。幸いウタレフを吸湿したとき、さらに封本の縄を発見して、今は持っている。


 狂人を縛ったら、キムチェヨンに話をかけようとするが、キムチェヨンは怖い顔をしてすぐまた逃げ出した。


 また狂人か?周りを見ると、特に増援がないようだ。しかし、縛った狂人の顔をちょっと見たら、アンジェリナはびっくりする。


 前の狂人たちはいくら険しい顔をしていても、まだ普通の人間の顔だ。しかし、目の前の狂人は違う。まったく人間として生気がなく、白い瞳に青い肌、口を大きく開けて変ななき声をする。


 ゾンビだ。


 まだ考えているその時、目の前のゾンビは、縄を千切り、アンジェリナを押し倒す。


ゾンビはアンジェリナを捕まる?

次回を待て!

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