第七十話 『バンパイアキャッスル 下巻』
とうとう悪魔のしろに突入か?二人を待っているのは?
前回の続き、やっと異空間から出て、ドックビルの屋上に戻った諸葛夢と郭小宝だが、目の前の景色は一変、中世ヨーロッパの城が現れた。これは伝説の吸血鬼の城なのか?
厳密にいうと、丸ごと一個の城ではなく、現れたのはほんの一部だけ。夜空に聳え立つ、長い階段に繋がっているのは、隣のハイテクタワーと対照的な、古びた塔だ。主の寝室か、宝物庫だろう。
「あ、違法建築だ。あんたところで建物を建てるのは危険じゃない?でぱってるし、堕ちたら大変よ。夢ちゃん、早く、あそこの住人に文句言いに行こう」
「いや、俺はムチとロウソクを持ってない」
「うわ、夢ちゃんって変な趣味持ってるのね」
(こんなレトロゲームのネタを持ち出しても、わかるのはあの小娘ぐらいか。)
アンジェリナを思い出したら、学校屋上の会話を思い出す。とりあえず、気を付けて、偵察ぐらいなら問題ないはず。やばかったら逃げればいい、と思って、諸葛夢は呟く。
「ぐーたらは余計だ」
「え?なんって?」
「いや、何でもない。行ってみよう」
身勝手な行動を慎めと郭小宝に注意し、二人は塔に入る。ポケットの金属かけらは、無反応だ。前の狼男の時、ちょっぴり振動し、ちゃんと機能していることはわかる。なら、これを作ったのは人間か?
という疑問を抱え、諸葛夢は郭小宝を連れ、螺旋階段を登る。階段の両側に松明がいっぱいあり、二人を上に誘うように、明滅する。
螺旋階段自体はそう長くない。ちょっと登ったら、大きな赤いドアが見える。この中には、謁見の間と玉座があるはず。ゲームの経験なら、ドラキュラ伯爵も待ち受けているはずだ。
存在を隠している魔族といい、凄腕の猟魔人といい、唐突に入るのは危険だ。周りを見てみると、別の階段があり、さらに上に登れる。そしてそこにあるのは、宝物庫だ。残念ながら、中に金銀財宝はない。が、小さな窓がいっぱいあり、ちょうど謁見の間が見れる。
下を俯瞰すると、真ん中は高級そうな、金色刺繍の赤い絨毯だ。周りに燭台がいっぱいあり、ろうそくの光はそう明るくはないが、あそこの景色は大体見渡せる。
謁見の間に、三人がいる。立っている男と、倒れている二人。立っている男は、中世ヨーロッパ貴族を服を着ているが、顔は典型的にアジア系で、髪も瞳も黒い。
(アジア人?この世に本当にアジアの吸血鬼伯爵がいるとは……まあ、確かにゲームなら存在するが、どうせ隣の女はわかるまい。ネタ振るのはやめとこう)
倒れている二人は、縄で縛られ、そしてよく見たら、諸葛夢の知っている人たちだ。
(男のほうは確かに小娘のボーイフレンドの飛田俊。女の名前が知らないが、この前、鬼路で絶叫虫と遭遇したとき一緒にいる同校の生徒だ。しかし、なぜこの二人が捕まれた?)
男はかなり疲れているのように、何か独りことを呟きながら、激しく喘息する。そしてしばらくすると、しゃがんで、飛田俊を抱き上げ、口を大きく開ける。
まずい、あいつ吸血する気か。しかし、今諸葛夢は結構高いところにいる。窓も小さいし、なかなか間に合えない。焦って、頭を前に出したら、飛田俊に見られた。
「な、なにやってんのよ、バカデカイの!はやくたすけてよ!」
この一声で、男は後ろに振り向き、上にいる諸葛夢と郭小宝を発覚する。手を一振りして、二人の足元の床が消え、一緒に謁見の間に落ちた。
「なにやつ?」
お尻を揉みながら、郭小宝はこっそりと諸葛夢に、
「ねえ、今あたしたちは出前って嘘ついたら、見逃してくれるのかな?」
「うそもなにも、俺たちはその出前なんだ」
「魔力を感じるな。お前、猟魔人か」
マナを魔力と呼ぶなら、間違いなく魔族だ。先の吸血行為と服装から見ても、吸血鬼に間違いのないはずだが、なぜ金属かけらの反応はない。しかし、今はそんなことを考えている場合じゃない。直感的に相手はそう強くない。とりあえず足止めでもやって、一般人の三人の逃げる時間を作るべきだと、諸葛夢は思う。
「ガキどもを連れて先に逃げろ」
郭小宝に小さい声で告げ、諸葛夢は突進し、まずは膝蹴りを繰り出す。男は片手を上げ、何かのフィールドがあるのように、膝は途中で止められた。しかしこの一撃は重く、結局男は数メートル後退した。
「猟魔人諸葛夢だ」
なぜか急に名乗る気になり、諸葛夢はまたすぐパンチを繰り出し、男に打つ。男は残像を持ちながら、諸葛夢の攻撃をよけた。そして一周の隙で、彼の頭を掴む。諸葛夢を地面に投げ落としてたら、すぐパンチで追撃する。
幸い受身を取って、バランスが崩れてないので、諸葛夢もすぐ男のパンチを避ける。この一撃で、地面にたくさんの亀裂が入る。
「わたしは吸血伯爵、ノスフェラトゥだ。猟魔人に狙われたことを知って、魔幻空間を作り出したが、そう簡単に突破できたとは、ほめてやろう。だが、遊びはここまでだ。吸血したばかりのわたしに、勝てるとても思ったのかね?」
諸葛夢はすぐ振り返り、縄を解いている飛田俊を見る。確かに、首に牙の跡があり、どうやら一歩遅かったのようだ。吸血鬼は妖刀紅朧と同じく、吸血したばかりの時は一番強い。
しかし、ノスフェラトゥ?目の前のアジア系の男はどう見てもドイツ人ではなく、どっちかというと、日本人のはずだ。現に日本語もしゃべっているし。まさか、本当に悪○城みたいに、伯爵は転生して日本の高校生になったのか?
まだ考えている途中、ノスフェラトゥはマントを振って、数個の黒い弾が諸葛夢達に飛んでいく。これを見て、諸葛夢はちょっと喜ぶ。闇の炎だ。これなら、恐れるに足りない。すぐ起きて、玉を打ち返そうとする。
これらの黒い弾は、A&E研究所で遭遇した黄金髑髏の火炎弾よりはるか弱い。しかし、一個打ち返したら、痛くて手が震える。マナが封印されてここまで弱くなったとは、諸葛夢は表情あるなら、今は苦笑いするだろう。
残りの数個は仕方なく避けるしかないが、追尾性能が高く。数個は命中し、爆発して諸葛夢を吹き飛ばす。幸い弱くても闇の炎に耐性が高く、大したけがはない。
「ハンターと無縁の生活ができると思ったら、結局猟魔人に追われるのか。しかも、よりによって一番質の悪い野良猟魔人とはな。なら、今日はわたしは殺された同胞たちのために、魔王に代わって成敗する」
といって、ノスフェラトゥは両手を上げ、無数の火のコウモリが集まり、より巨大な火の玉に変化する。火の玉はどんどん暗くなって、色も赤から黒、そしてやがて紫色に変わっていく。
これはまずい。今度こそ、黄金髑髏の一撃に匹敵する。今の諸葛夢なら、どうしようもない。これを受けたら、その場の全員は塵も残らずに燃やされてしまうだろう。
ほかの三人は完全に見物状態のようで、諸葛夢はすぐ三人を連れて逃げようとするが、郭小宝はノスフェラトゥを指して、
「夢ちゃん、あの伯爵、何か変だよ?」
ノスフェラトゥは、急に苦しみだし、溜まった火の玉も、再度無数のコウモリに分解され、空気に消えてしまう。そしてノスフェラトゥの顔に、異変が起こる。目がグルグルと高速回って、顔のパーツが変形し始める。体も、少しずつ大きくなっていく。
しばらくすると、変化はやっと鎮まった。目の前のノスフェラトゥは、完全に背の高い、西洋人の風貌になり、耳の尖っている。そして、諸葛夢の金属かけらは、やっと振動し始める。
これは、ノスフェラトゥの真の姿か?しかしなぜ優勢なのに突然変化するのか?
まだ状況を把握していない諸葛夢だが、ノスフェラトゥは急に口を大きくして、中から三角形の光が出し、やがて魔方陣と化す。そして全身光っているノスフェラトゥは、爆発したのように、光は謁見の間を飲み込む。
再び目を開けると、諸葛夢は牢屋らしきところにいる。周りに死体がいっぱいのようだが、よく見ると、蠟人形らしくて、しかも全部若干熔けている。
蠟人形の中に、なじみの警備員姿がいる。郭小宝だ。諸葛夢に起こされたら、
「夢ちゃん、先は何があったの?めちゃくちゃ眩しいだけど」
「前と同じく、魔幻空間を作って俺たちを閉じ込めた」
諸葛夢は周りを見て、
「ガキの二人は?」
「わからないわ。たぶん別のところに転送されたんでしょう。ちょっと探してみ?」
諸葛夢は頭を振る。
「でも、どうやってここから出るのかな?」
「前の経験だと、この魔幻空間は現実世界とリンクしている。どっかに出口があるだろう」
「よおし、迷宮ゲームなら得意よ。あたしに任せなさい」
と言って、郭小宝は先に牢屋から出る。そして、すぐに戻る。
「あ、え、む、夢ちゃん、外に、人の顔がついている、変な蜘蛛がいるんだけど」
人の顔がついている蜘蛛と聞いたら、諸葛夢はすぐ緊張し始める。すぐ音を出さないと合図を送って、牢屋から出る。やはり、曲がり角に、数匹の絶叫虫がいる。
結構攻撃性の高い魔獣で、死んだらワープゾーンを発動する。運が悪ければそのワープゾーンにバラバラされるか、変なところに転送される。この前にアンジェリナと一緒に異星に飛ばされたことは、ちょっとしたトラウマだ。
幸い、絶叫虫は聴力で周りの状況を把握するので、音を出さなければ、発見されることはないはず。そして何か飛び道具があれば、遠距離で仕留める。では、いったん牢屋に戻って、なにか使えるものがあるのか、ちょっと確認する。
二人は振り返ると、後ろにちょっと太い男の子が立っている。飛田俊だ。
「バカデカイの、ここでなにやってんの?」
この一声で、絶叫虫達の注意を引いてしまった。すぐたくさんの金属の足音がして、どうやらいっぱい来たのようだ。
仕方なく、諸葛夢は二人を連れて牢屋で身を隠す。蟲の群れは、牢屋を経て、廊下の向こう側に走った。金属の足音がどんどん遠くなっていくことを確認して、うつ伏せの三人はやっと蝋人形から立ち上がる。
蝋人形なのに、上にべたべたの液体がついてて、郭小宝と飛田俊は一生懸命顔を拭く。
諸葛夢は牢屋の入り口で確認したら、絶叫虫はまだ遠くいってない。とにかく牢屋で何か飛び道具として使える武器を探そうと、二人に指示する。
三人はまだ探しているとき、飛田俊は急に郭小宝の前で、彼女の顔を見始める。これを見て、郭小宝は慌てて帽子を下に引っ張って、懸命で顔を隠す。しかし、時すでに遅し、飛田俊は、まだ大声で叫ぶ。
「ぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼ、凡菲姉!!!!」
吸血伯爵ノスフェラトゥにまた飛ばされた二人、そして郭小宝の正体は人気アイドル劉凡菲?しかし、飛田俊の叫びで、また絶叫虫が襲ってくるのか?
次回を待て!