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サイゴヒーロー ~魔を狩る人~  作者: 古蘭佐
第三章 アニタのヒミツ
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第六十一話 『菖蒲と豪木』

一難去ってまた一難、まさしくこのことだ

「剣魔か。お前らの国王は、確かに最低じゃったな」


 前回の続き、百吼は諸葛元を封印して地底から去った。そこで、ボロボロのアメシストは、百吼を溶け込んだ夜空を観ながら、小さい声でつぶやく。


「アメシストアメシスト~」


 アンジェリナの呼び声で、我に返ったアメシスト、振り返ると、同じボロボロの少女がいる。


「どうしたんじゃ?娘よ」

「ちょっとアンジェリナと一飛びして、カザキリと羽丸をたすけてくんない?」


 アンジェリナは、まだ石壁に挟まっている、カザキリと羽丸を指す。どうやら合体は解けたようだ。


「問題ないじゃが、わしにももう魔力があんまり残っておらん。飛んだら、回復魔法はしばらく使えん。あんさんも結構大変じゃろう?」

「うん、全身の骨が砕けたみたいに痛い。でも大丈夫。カザキリと羽丸は先」


 アメシストはふらふらして浮かぶ。そして周りを確認する。そこにいるのは、気を失った諸葛夢だけ。


「ほかの男二人は?」

「古さんなら救援を呼びに行った。カイやんは……」


 アンジェリナは大樹の残骸を指して、


「宝さがしに」


 一所懸命宝を探しているカイを見て、アメシストは溜息する。しかし、急に巨大な魔力を感じる、すぐアンジェリナに、


「まずい!早くあの青い小童を呼び戻せ!!」


 しかし、時すでに遅し、突然の爆発、アンジェリナが気づいたら、カイはすでに爆発の衝撃でとばされ、そしてそのまま気を失った。次の瞬間、大きな光柱が、自分に向かって飛んでくる。


 今のアンジェリナはかなり衰弱していて、躱す力など残っていない。


 ドカン!!


 巨大な音のあと、目を開けると、誰かが自分を抱いて、あの一撃を躱した。よく見ると、妖狐の知世だ。


「ちよちゃん!」

「ごめんねキツネちゃん。ちょっと野暮用があって遅れたわ」


 アンジェリナを下ろし、知世は背中から大きな剣を抜き、真ん中に穴のある剣が、左右に分離し、変形して弓になる。さらに二本の矢を取り出し、大樹の残骸に撃つ。


 タンタン!金属の音。二本の矢が打ち砕かれ、大樹の残骸から、二人の影が現れ。


 男と女二人。男は巨大な図体で、知世と似たような忍者らしき服装を着ている。髪で目が見えないが、ムチムチの体と不相応に、細くてイケメンらしい顔つきだ。しかし肌は赤く、歯が長い、角も生えている。赤鬼だ。巨大な金棒をもって、先矢を撃ち落したのは彼だ。


 手に扇子を持っている女、紫のボッブヘアで、大人っぽく、セクシーな顔つき。胸元、肩、太腿が丸出しの、露出度の高い黒い着物を着ていて、非常にエロイ雰囲気が漂う姿だ。そして、知世と同じような獣耳と尻尾が生えている。


 女は先にしゃべりだす。


「あ~ら、久びりにあったのに、挨拶は相変わらず乱暴ね。これじゃ、お嫁にいけないわ。あたしの知世ちゃん」

「だ、だれ?」

「きゃつらこそ、知世姉貴の探している輩じゃろう。妖狐の菖蒲(あやめ)、赤鬼の豪木(ごうき)


 アメシストは、代わりにアンジェリナに答える。


「そうだわ。あいつらこそ、銀狐の裏切者、魔界盗賊の恥よ!」

「おや、ずいぶんな言い方ね。あたしはただ銀狐をさらに繁盛させたいだけ。こんな模範的なメンバーが裏切者呼ばわりなんて、心外だわ」

「銀狐は誇り高く義賊よ。あんたみたいな金のため悪事を走るなんて、認めるものか!」


 これを聞いて、菖蒲はクスっと笑った。


「そうかしら?変なおじさんの依頼で学生資料を盗もうとし、あげく人間の小娘を誘拐する。これは義賊のやることかしら?」

「グッ」

「そうだね。アンジェリナを誘拐したのはちよちゃんだったね」

「あんた!一体どっちが味方?」


 知世はアンジェリナに怒鳴る。


「首領になっても、ドジっ子のところは全然変わらないわね」

「う、うるさい!とにかく!あんたは一体何をたくらんでる?白状なさい!」

「白状も何も、簡単だわ。財宝をいただいてきた」


 菖蒲は扇子を一振りして、大樹の残骸は吹き飛ばされ、たくさんの金銀財宝は見えるようになる。


「だめ!お宝は渡さないわ!」


 アンジェリナは思わず叫ぶ。


「あら、小娘さん、これは別にあなたのものじゃないでしょう?」

「そ、それはそうだけど……」

「それに、あなたが欲しがっているのは、財宝でなく、これじゃない?」


 と言いながら、菖蒲は谷間から、宝地図の羊皮紙を取り出す。


「あ!!これ、返して!!!」

「あらあら、こわいこわい。ほら、取っておきなさい。元々返すつもりよ」


 菖蒲は宝地図を空中に捨て、扇子で一振り、あら不思議、宝地図はちゃんとアンジェリナの手に届いた。


「え?」

「この前、わざとロケットパンチを外したお礼よ」


(そっか。ちよちゃん同じく、この人も変身できるんだ。テロリスト一味の女性は彼女が変身したんだな)


「あんた、一体何のつもり?わざわざ人間界に来てたからを集めるなんて、らしくないわ」


 知世の言葉を聞いて、菖蒲は大笑いし、


「さすがあたしの知世ちゃん。あたしのことよく知ってるわね。でもいちいち計画をしゃべりだすような間抜けじゃないってことも知ってるはず」

「ならこちらも遠慮しないわ」


 知世は背後からさらに二本の矢を取り出し、弓に掛かる。今度の矢は白く光っている。


「前のようにはいかないわ!」

「あらあら、やっぱり怖い。真面目になると、この鬼気迫はすごい。あたし、ゾクゾクするわ。そういえば、あなたたち、よく似てるわね」


 これを聞いて、アンジェリナと知世はお互いに見る。


「真面目になると人が急に変わる。あなたたち、いい姉妹になれそう。でも、今日あたしは戦闘する意志はないわ。お宝も手に入れたし。もしどうしても戦いたいっていうなら、人質のことも考えなさい」


 菖蒲は合図を出して、豪木は片手で巨大なものを持ち上げる。カザキリと羽丸だ。


「それに、人質はこの二匹の混ざりものだけじゃないわ。地上の人間坊や達も、あなたたちは対処できるのかしら?」


 と言いながら、菖蒲の扇子の上に、二つのエネルギー弾が現れ、


「特に青い髪の坊や、先はちょっと力を入れすぎちゃって、早く治療を受けないと、危ないわよ。そこそこのイケメンだから、死んだら惜しいわ」

「ち、ちよちゃん、どうしよう?」


 知世は弓を下ろし、


「この状況じゃあ、どうしようもないわ。あの女の勝ちよ」

「わかればよろしい」


 菖蒲はちょっと笑って、豪木に、


「豪木、お宝もって帰るわよ」

「この二匹はどうする?」


 豪木はカザキリと羽丸を持ち上げ、菖蒲に聞く。菖蒲は二匹を見て、


「これも面白いわね。いただくわ」


 これを聞いて、アンジェリナは前に出ようとするが、すぐ知世に止められた。


「だめ、今は我慢しかない。無理やり取り返そうとしたら、あの二匹は逆に危ない」

「そうそう。混ざりものとはいえ、この二匹もわが同胞よ。被害は加えないわ」


 そして、豪木は片手二匹、片手財宝を入れた袋、数回ジャンプして、上の穴から離脱した。菖蒲もすぐ、そのあとを追う。しかし、飛ぶ途中、何か思い出し、いったん止まる。


「そういえば、人間の小娘さん、アンジェリナでしたっけ。でも呼びにくいから、知世ちゃんみたいに、あなたをキツネちゃんと呼ぶわ。このほうが親近感あるしね。あたし、倍返しは信条なの、仇も恩もね。


 だから、ちょっとおもしろいヒント出すわ。一つ、あたしは妖狐だから、別人に変身できるが、豪木は赤鬼、変身の力はないわ。一つ、ちゃんとあの宝地図をもう一度確認して、ほかのヒミツもあるわ。ま、わからなくてもいいのよ、人類世界がどうなっても、あたしに関係ないわ。じゃ、さようなら」


 と、高笑いしながら、菖蒲も夜空に消え去ってしまう。


「どういう、こと?」


 アンジェリナはすぐ宝地図を確認し始める。知世は溜息をし、シッポから小瓶を取り出し、アンジェリナに渡す。


「キツネちゃん、早くこれを使って、青い髪を回復させて、でないと本当に危ないわ」

「え、これって、ポーション?」

「ええ、残念ながら、これは魔力回路の開いた生き物にしかに効かないわ。それに、あたしは回復魔法が得意じゃないの、キツネちゃんの手当ては……」

「それならわしにお任せください。姉貴はまだきゃつらを追いたいじゃろう?」


 アメシストは、浮かびあげ、口を挿む。


「そうね。じゃあ、アメシスト、キツネちゃんにポーションの使い方を教えてあげて、あたしはこれで失礼よ」


 諸葛夢をチラッと見て、知世も高跳びし、菖蒲と豪木の跡を追う。菖蒲とほぼ同じところでいったん止めて、ポーションの使い方を教えているアメシストを見て、


「アメシスト、世話になったわ。ありがとう」


 と一言を残して、大空洞を後にした。


 ポーションの使い方はそう難しくはない。重傷のカイにまず顔に塗って、若干回復してから二回分けて飲ませば、一命は取り留めた。そして知世の言った通り、普通の人間は飲んでも意味がないから、そのあとはアメシストが最後の魔力でアンジェリナを治療することになった。


 治療しながら、アンジェリナはまた宝地図を取り出して、内容を確認し始まる。


「どうした?あの菖蒲っていうおなごの話、まだ気になっておるのか?」

「うん、結構曖昧になったけど、アンジェリナはA&E研究所の地下にいたとき、確かに石や泥に封鎖されたドアがあった。そして、テロリストたちが入った入り口と、ムウとカイやんが入った入り口以外に、もう一つの通路は上の階につながってるの。その通路はたぶんあの塞がれたドアにつながってると思うわ。じゃあ、その真ん中に、また何かあるのかな?地図には描いてないけど……」


 A&E研究所の話を持ち出すと、また何か怖いものが、アンジェリナの頭に浮かびだす。何か、怖くて、異形なもの。怪物アンディを倒したら、何か足りないものがある。


 と思うと、アンジェリナ後ろ、大樹の残骸は騒ぎはじめ、そして何かが出てくる。振り返ると、巨大な脳みその化け物だ。


一難去ってまた一難、まさしくこのことだ。脳みその化け物はどう対処するのか。

次回を待て!

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