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サイゴヒーロー ~魔を狩る人~  作者: 古蘭佐
第三章 アニタのヒミツ
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第六十話 『金剛圏』

いよいよクライマックスか

 新元4年9月18日、A&E研究所付近、かつて大空洞だった場所、二人の男は、身を構え、気を貯め、相手を倒そうと機を伺う。一人は剣魔百吼、一人は諸葛元、諸葛夢のもう一人の人格。


 外野には三人と一本、アンジェリナ、カイ、古天仁、そしてアメシスト。諸葛元が放つ激しい風と振動によって、立つことすらできない。


「あわわわわ。こ、こんな時、アンジェリナは、ち……、地球全体が震えているような、も……ものすごい気だっていうべきかな。田中さんの真似して!」

「もしそうだったらめちゃくちゃまずいことになる……」


 古天仁は、手に汗を握って、思わずアンジェリナのふざけに答える。


 諸葛元は、気を貯め完了したのように、ニヤリと百吼を見て、は、っと声を出し、西洋竜のような化け物を召喚して、百吼に襲い掛かる。


 百吼も、すぐ刀を鞘に抑え、片手で地面に指し、巨大な魔方陣を作り出し、その魔方陣から、無数の剣が飛び出し、そして合体して、大きなバリアを生成した。


 魔竜と剣の障壁、空中で激突、この一撃で、さらに大きな振動が起こり、せっかく立ち上がった三人は再び尻餅を食らう。これで外野の三人は決めた、終わるまでもう立ち上がらないほうがいい。


 障壁の剣は、次々と魔竜に砕かれるが、すぐさま新しい剣が補充していく。そして補充しながら、一部の剣は諸葛元に向かおうとする。が、すぐ魔竜のシッポによってまた砕かれる。


 十、百、千、数えきれないほどの剣が壊れて、そして数えきれない新しい剣はまた生成する。二つの力はぶつかり、鍔迫り合い状況になってしまう。焦ったか、諸葛元は魔竜を縮小し、グローブのように両手に装備して、右手の一撃で障壁をぶち抜く、左手はさらに力を集中して、矢のように、百吼に突撃。


 これこそ狙いだ。百吼はこの状況を見て、思わず喜ぶ。さらに数百本の剣を生成し、合わせて巨大な剣になって、体を包み、同じく諸葛元に突進。


 魔竜のような拳、体を囲む巨大な剣、二つの力は空中に激突、先ほどの障壁は、この力でバラバラになって、無数の剣は粉々の状態になり、そして光って消えてゆく。


 次の轟音のあと、諸葛元と百吼は再び地面に戻った。


 百吼の目隠しは壊され、額に傷口が見え、血がぽたぽたと、地面におちる。対して諸葛元は、片膝が地面に付く。右肩に大きな傷跡がつき、出血量は百吼よりはるか多い。


 これで勝負ありだ。その場の全員は一瞬そう思うが、諸葛元の笑い声が、それを否定した。


「なるほど、もうこの段階に入ったのか。ならなぜまだ人の形をしている?もう何かの鉄屑になったはずだが?」

「拙者はまだ剣術に未練はある。だから一本の剣に化すのは、当分先」


 これを聞いて、諸葛元はまた笑いだす。


「何か未練だ?結局殺戮の快感を他人に委ねたくないだけだろう?」

「おぬしのような野獣に弁解する必要がござらん。だが、そろそろ己の身に心配したらどうかね?」


 諸葛元は、ゆっくり立ち上がり、


「失敬失敬、さっきはてめえを甘く見て悪かったな。だが、次はいかんぞ」

「この傷でまだ足掻くのか?」

「気を付けろ!あいつ、回復能力は半端ない!」


 急に何かを気づいて、古天仁は百吼に警告する。


「ちょっと腹減ったな」


 諸葛元は片手を上げ、魔界の穴に手を伸ばす。しばらくすると、穴から、人らしきものが、何かの力によって、引っ張ってくる。


 オーガだ。諸葛元との体格はほぼ同じだが、体型から見ると、まだ子供のようだ。頭が諸葛元に捕まれ、いくらもがいても、振りほどくことはない。


 百吼はオーガの身に危険があると察知して、救出に向かうが、諸葛元は魔竜が守護され、うかつに接近できない。


「俺様は今食事中だ。邪魔すんじゃねえよ。飯食ったらゆっくりてめえを殺すから、おとなしくまってな」


 といって、諸葛元は、子供オーガを生きたまま体を破って、食い始める。


 外野の三人は、すぐ目を閉じ、この場を見る勇気はない。見たら、たぶん内臓まで吐き出すだろう。百吼は助けたいが、魔竜の邪魔で結局できなかった。数口食べて、諸葛元はオーガの死体を捨て、手に付いた血をペロリと舐め、


「待たせたな。ラウンド2だ。始めようか」

「貴様!!!!」


 憤怒の百吼は、すぐ刀を抜き、二人は再度空中で戦闘し始める。怒りからか、百吼の攻撃は前より重い。諸葛元は攻撃を避けながら、


「なんだよ。たかがオーガ一匹食っただけじゃねえか。そんなに怒るか?」

「貴様!わが剣魔一族を侮辱し、剣術精神を貶め、さらに罪もない魔族を食い殺した!許さん!」

「許さんって、てめえはなにができるっていうんだ!」


 諸葛元は突然両手に魔竜のグローブを纏い、重いパンチの二連撃、百吼は防御したが、前よりさらに強くなった拳気の圧力で地面に撃ち落された。諸葛元はすぐさらに十数発の拳気を発射し、百吼はその一部を刀で弾けたが、やはり数発命中さら、たくさんの血を吐き出す。


 着地した諸葛元、百吼に向かって突進、さらにストレートの一撃。倒れている百吼はすぐ刀で防御するが、諸葛元の一撃で、刀は粉砕され、そのまま百吼の胸に命中する。この一撃は重い、百吼は再起不能に追い詰められた。


「先の大技を放って、かなり体力を消耗したようだな。二発目は使えねえと思ったよ。にしても、簡単に引っかかったな。こうもう簡単に挑発に乗るとはな。てめえも結局修行不足ってやつか。なら、死んでもらおうか。」


 諸葛元は拳を上げようとその時、急に背後から気配を感じ、誰かがすごいスピードで接近し、ベアハッグ要領で自分を締める。後ろを振り向くと、アンジェリナだ。この行動、隣のカイや古天仁、アメシストも全然気づかなかった。


「何しやがる!チビビッチ!」

「もうやめて!これ以上誰かを殺すのがだめ!」


 諸葛元の力は、アンジェリナをなん十倍もなん百倍も上回るかもしれない。だが、どういうわけか、振りほどけない。当のアンジェリナは、全身の骨が折れたのような、痛みが走るが、それでも必至に諸葛元を締める。


 すでに倒れている百吼は、すぐ跳びあげ、諸葛元の目の前に駆けつける。ずっと閉じっている目が、やがて開け、瞳はすでに白色になって機能はしないが、左目に丸い印がついてる。百吼は諸葛元の前に、何かの呪文を詠唱し始め、そして大声で、


金剛伏魔呪(こんごうふくまじゅ)、封!」


 左目の印から、金色の射線が現れ、線は輪に変形して、諸葛元を囲む。そして、空中から、金色の梵文が現れ、梵文は組み合わせして、やがて金の輪にくっ付いて、さらに大きな輪になる。大きな輪は、収縮しながら、空から金色の光線が降り注ぐ、諸葛元に命中する。


 次の瞬間、金の輪は諸葛元を完全に縛り、大きな音とともに、やっと光は消えて鎮まる。諸葛元は糸の切れたマリオネットのように、アンジェリナに抱かれながら倒れる。


「む、ムウ!」

「ご心配無用、司馬殿。拙者はただ野獣を封印しただけだ」


 百吼は、服から布を破り、目隠しの代わりに、再度目を遮る。


「おお、あんた、すごいな!こんな隠し技を持ってるのか。だから俺たちの呼びを答えたのか?」

「知っているくせに」


 百吼は小さい声でつぶやく。


「いやいやいや、俺たち別に知り合いじゃないし、それに、封印魔法って、剣魔の能力じゃないよな」

「かつての友人からの贈り物だ。剣客として、本来は使わぬつもりだが、殺さずにとの約束がある以上、使わざるをえまい。」

「じゃあ、今回の報酬は満足ってこと?」


 百吼の口元は少し上にあげ、鼻からもふんって小さく笑った。


「ああ、笑った!つまり今日はぞんぶん戦ったってことね。これでチャラだ」

「いや、ただの野獣を制服するだけでは、満足できんよ。だが、やはり拙者の目は狂わぬ。これで、しばらくは退屈せずに済むものよ」

「じゃあ、百吼はこれから人を殺さないの?」


 諸葛夢をちゃんと地面に置いて、アンジェリナは急に百吼に聞く。


「拙者は喜ぶのために人を斬っていると?」


 アンジェリナは慌てて頭を振る。


「ま、前の暗殺が失敗し、拙者は元の雇主との縁が切った。しばらくの間、人を斬らずに済む」

「よかった。じゃあ、今度はアンジェリナが、人を殺さない仕事を紹介するね」

「ふ、ご厚意感謝する。では、今日はこれで」

「あ、ちょちょちょちょ、ちょっと待って!」


 古天仁は急に百吼を止まって、


「帰る前に、夢の封印を解いてくれよ。あいつ猟魔人なんで、マナ使えないと困るよ」

「残念ながら、拙者は封印を解く方法はわからぬ」

「「え?」」

「とりあえず、まずはあの野獣を何とかせねば。後で、封印に詳しい知り合いを紹介しよう。ちょっと出かける必要があるがな」


 百吼は気を失った諸葛夢を再度確認し、


「とにかく、今は解けぬ」


 仕方なく、いくら何でも、全員その場で諸葛元に殺されるよりはマシ、そう思って、古天仁もこれ以上は粘らない。百吼は、高跳びして、夜空の中に消える。


「古さん、一体何があったのか?俺、全然さっぱりわからないっすよ」


 百吼が去ったあと、カイは改めて古天仁に聞く。


「金剛伏魔呪は、元々妖魔、魔族など封印するための術だ。だが、あの剣魔が使った、金剛伏魔呪、封は、いわゆる改良版みたいなもんで、肉体を封印するのでなく、マナのルートだけを封鎖するんだ。それに、人間にも効く。


 諸葛元は戦いのために現れる。だから出るたびかなりのマナを消耗する。マナのルートが封印された今、確かになかなか出てこないと思いうよ」

「じゃあ、今のムウは、一般の人になったんですか?」

「そうでもない。体内でまだそれなりに残ってるから、通常の戦闘などはまだ使える。が、周りの環境から取り入れなくなったから、弱体化は確かだ」

「じゃあ、いま俺は夢より強いってわけ?」


 カイの諸葛夢の頭を叩きながら聞くが、古天仁は苦笑いしかできない。


 まだ諸葛夢を看護しているアンジェリナは、急に何かを思い出す。


「あれ、そういえば、カザキリと羽丸は?それに、宝地図は一体どこにあるのかな?」




諸葛元は封印され、これで一件落着か?しかし、まだ不穏な空気が……

次回を待て!

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