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サイゴヒーロー ~魔を狩る人~  作者: 古蘭佐
第三章 アニタのヒミツ
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第五十九話 『諸葛元』

古天仁の言ってた、諸葛元とは?

 怪物アンディに殺されたと思われる諸葛夢は、突然復活。そしてまるで遊んでいるのように、相手を弄ぶ。しかし、アンジェリナとカイはわかる。この人は、もう諸葛夢ではなく、狂気すら感じる、殺戮マシンだ。そして怪物の次は、自分自身の番だということも。


 徹底的にやられた怪物アンディは、最後の力を振絞り、大樹の体内に侵入し乗っ取って、巨大なエネルギー弾で反撃しようとするが、結局あの攻撃は軽々く吹き飛ばされて、逆に諸葛夢に仕留められそうになった。


 諸葛夢最後のパンチが、あともう少し手樹幹に届くところで、駆けつけてきた古天仁から一喝、


「やめろ!!諸葛元!!」


 その古天仁の後ろに、細高いと太低いの二つの影、カザキリと羽丸がついている。二匹は重傷のアンジェリナとカイを見て、すぐ回復魔法をかける。ハイレベルの回復魔法じゃないが、二人はようやく立てるようになった。


 古天仁の一喝で、“諸葛夢”は手を止め、振り返ってみる。


「なんだ、古のおっさんか、久しぶりだな」


「諸葛元?久しぶり?」


 アンジェリナとカイは驚愕する。しかし、古天仁の注意力はすべて“諸葛夢”にある。


「できれば会いたくはない。一生にな!」


 “諸葛夢”は大笑いして、


「あいつが無能だからさ。こんなよええやつもころせねえなんてよ。言っとくが、この体は共通財産だ。壊れたら困んるんだよ」

「ならもういい、お前はもう帰れ」

「帰る?どこに?せっかく出たんだ。満足までは帰れねえだよ!」

「なら、せめてあの樹妖を見逃せ!」


 “諸葛夢”は樹妖を見て、再度大笑いだした。


「残念ね。もう遅いんだよ。もうほんの少し早く着いたらな、ほんの少し!」


 話が終わったところ、“諸葛夢”後ろの樹妖が、先拳の真っ先から凹みが現れ、そして凹みから亀裂が急に全体に走る。次に瞬間、大きな樹幹が、バラバラになって、崩れ落ちてゆく。


「父上!」


 カザキリと羽丸は、すぐ駆けつけて、残骸を拾いながら、号泣する。


「父上!まだおいらたちの名前、一度しか読んでもらえなかったのによ。なんで?!」

「兄弟!犯人はあの銀髪野郎だ!」

「父上の仇を!」


 カザキリと羽丸は絶叫しながら、合体して、“諸葛夢”に襲い掛かる。しかし、結局敵える相手ではない。“諸葛夢”は手も動かずに、気だけで合体した二匹を吹き飛ばし、石壁にさらに一つの穴を追加した。そして、動きが止め、気を失った。


「ムウ!やめて!!」


 アンジェリナは二匹を助けようとするが、すぐ古天仁に阻止され、


「嬢ちゃん、気持ちはわかるがな。今は逃げる方法を考えろ」

「逃げる?どこに?今日、お前たち全員死んでもらおう」

「俺まで殺す気か?俺が死んだら、だれがお前の人探しに手伝う?」


 “諸葛夢”は、しばし沈黙する。


「どうせ、もう死んだんだろう……」

「なぜそう言い切る?死体でも見たのか?」


 そして古天仁はアンジェリナの両肩を掴んで、前に押し出し、


「もしかして、この女の子はお前が探している人かもしれないぜ?」

「は?ボケてるのか?こいつ、年齢も顔も髪も……、ちょっと待って、おっさん、まさか、時間稼ぎでもやってんのか」

「ビンゴじゃ!」


 急に、アメシストは浮かぶ、


「危険な博打じゃが、わしはこの男の判断に賭けたんじゃ」

「フ、なにほざけてやがる。おっさんはいい、ほかのやつは全員死ね!」

「まず自分の安否に心配するんだな!」


 古天仁は“諸葛夢”に応える。次の瞬間、“諸葛夢”は上から殺気を感じ、頭を上げると、刀らしきものが、高速で落ちってくる。このスピードと威力は怪物アンディの比ではない。素早く後退して、一撃を避けた。


 ドカン!


 巨大な音が地底を揺らす。ここはすでに大空洞とは呼べない。なぜなら、上を見ると、百メートルぐらいのところは地面、さらに上から、星空が見えてくる。


 埃が消沈し、剣撃のところから、一人の男が現れる。アンジェリナとカイはこの男を知っている。


 百吼(ひゃっこう)だ。


 百吼は“諸葛夢”を見て、違和感を感じる。しかし、まだ何もしゃべってないところ、“諸葛夢”は先に仕掛ける。


「どうやらできるやつが来たようだ。とことんやらせようぜ!」


 と言って、すでに百吼の懐に入り、数発のパンチが飛ぶ。百吼は慌てて刀で防御する。拳と刀のぶつかる音が、衝撃波と化す。二人を中心にして拡散する。遠くいる三人は、この衝撃波で、尻餅を食らう。


 言葉はできないが、“諸葛夢”は前より強くなったこと。これを気づいて楽しむ百吼、すぐ体勢を整え、刀を抜いて交戦し始める。


 拳と刀、スピードが速すぎて、外野の三人はすでに二人の動きを捕捉すらできない。ただ空中に爆裂する衝撃波は、二人大体の位置を語っている。衝撃波は頻繁過ぎるせいか、三人は立ち上がることをあきらめ、小手で顔を遮りながら、観戦する。


「古さん、ムウは、どうなったんですか?」

「あれは夢じゃない。あいつの名前は諸葛元(しょかつげん)だ。夢の、別人格だ。」

「ムウは、二重人格者?」

「二十人格って、なんだ?」


 カイも分かるように、アンジェリナは科学的な解釈を説明する。しかし、目の前の光景を見て、今までの解釈は正しいかどうかは、アンジェリナはちょっと疑問を持つ。


「で?病気かトラウマで二十人格になるなら、夢のやつ、何かトラウマがあるっすか?」


 古天仁は頭を振って、


「わからんよ。いや、覚えてないっていう表現が正しいかな」

「覚えてない?」


 アンジェリナは頭を傾く。


「俺の記憶、いや、俺たちすべての人の記憶の中に、どうしても曖昧な部分があって、ある時ある場所で起こったこと、覚えているような、覚えてないような気がする。違うか、嬢ちゃん?」


 アンジェリナは目を丸くして、どうこたえるかがわからない。


「にしても、俺たち、運がいいっすね。こんな時百吼が現れるなんて」

「運じゃない!わしらが呼んだんじゃ」


 アメシストは、かろうじて再度浮かびながら、カイに応える。


「わしら?」

「そうじゃ。この男は何か知っているのようじゃから、わしはこっそり心霊伝送を発動して、ちょっぴり会話してな。やはりこの男もこの類の魔法に詳しいのようじゃ。


 そこで、今ここであの諸葛元とやらを抑えるのは魔族しかないという結論を出したんじゃ。わしら二人は力を合わせ、この辺りで強力な魔族を探し、あの百吼を見つけたんじゃ。そして商談成立、こっちに来たんじゃ」

「わお、初めての共同作業ね!」

「茶化すんな!」


 茶番に付き合わずに、古天仁はさらに説明する。


「諸葛元のやつ、ただ戦いの快感を求めるだけだ。いっぱい戦ったら、また眠りにつく。だが俺たち三人では、何百回殺されても、あいつは満足できんだろう。だから、不本意だが、あの剣魔の力を借りるしかない」

「ああ、じゃが、あの魔族はちゃんと対抗できればいいがな。もし彼も敗れたら、わしらは魔界に逃げるしかないがのう」


 アメシスト、アンジェリナ、カイは、同時に空中のブラックボールを凝視(ぎょうし)する。しかし、一番魔界の穴を探したがる人、古天仁は、全力で戦況を確認する。


 数分しか経ってないが、二人は何回交差して、拳と刀は何回ぶつかったのかは、もうわからない。外野三人の耳はすでに金属の衝突音にマヒし始めたそのころ、二人はやっと分かれて、再度体勢と息を調整して、次のチャンスをうかがう。


 やっとのチャンスだ。百吼はすぐ問う。目の前にいる、知っている見知らぬ人に。


「おぬしはなぜ、今日の攻撃方式が大きく変わる?今日の戦は、まさしく獣のようだ」

「は?バカか?てめえなんぞしらねえよ」

「なるほど。二つの魂を持つ人間か。おぬしでは、相手にならぬ。再度諸葛夢殿と戦いたい。」

「だからてめえはバカなんだよ。あの弱虫と戦って何が楽しい!」


 諸葛元は、再度百吼に襲い掛かる。今回のスピードは、さらに速い。


 百吼は力をため、体から眩しい光を放つ。そして、回転しながら、鞘で諸葛元の一撃を止め、


「獣退治で本気を出さなければならぬとは、拙者も陥ったものよ」


 一蹴りで諸葛元を蹴り飛ばす。着地した諸葛元は、笑いながら、


「なんだ。剣魔か。だから見覚えがあるわけだ。だが、剣魔って種族、バカじゃねえの?生涯の目標は刀になるって?笑わせんじゃねえよ。結局鉄のくずになるだけじゃねえか?」

「おぬし、剣魔一族を侮辱する気か?」

「だから何だ。この落ちこぼれの一族、侮辱もなにも、そもそもすでに存在しねえんだろう?王族の国王も、王子も、王女も、全部逃げたんじゃねえのか?だから、残ったやつらも、早く鉄屑になって、スプーンとして再利用されるのが運命なんだよ!!!」


 と言って、諸葛元の体から、闘気は風と化し、外野の三人はぼろ雑巾のようにに吹き飛ばされる。かろうじて立ち上がる古天仁、手のひらはすでに汗がいっぱい。目を丸くして、小さい声で呟く。


「諸葛元、バカな真似だけは、やめろよな!」



戦いはさらにレベルアップする。百吼もついに真の力を発揮するのか。そして諸葛元は、まだどんな隠し力を持っているのか。

次回を待て!

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