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サイゴヒーロー ~魔を狩る人~  作者: 古蘭佐
第一章 新学期一日目は忙しすぎる
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第五話 『職業 猟魔人』

 魔獣の急接近と諸葛夢の一喝で慌ててストレートを繰り出すカイ。電弧は矢のように飛び道具と化す。しかし魔獣の一撃で打ち返され、隣の諸葛夢に命中してしまった。


 ビリビリの電気音とともに、電気の塊は巨大なボールになって、諸葛夢を完全に飲み込み、まさに電光石火のごとく、眩しい光を放つ。


 ぼーっとこの状況を見るカイ。彼はこの一撃の威力をよく知っている。


「まさか、出会う日と別れる日は同じだなんて……」


 カイは合掌して、さらにお辞儀した。


「転校生よ、名前は全然覚えてないけど、あなたのこと忘れません。清明節(せいめいせつ)※①でいっぱい紙銭(しせん)※②を焼いてやるから、化けて出ないでくれよ。南無南無」


 カイが独り言をしゃべっていると、魔獣隣の電球は急に縮みはじめ、中から諸葛夢が見えてきた。なんと、無傷のようだ。


 電球がさらに小さくなって、最後は諸葛夢の手に一点集中した。よく見ると、諸葛夢は前の金属かけらを持っている。


 相手は死んでないと分かった魔獣は、すぐ爪で攻撃しようとする。しかし距離が近すぎたせいで、大振りの爪攻撃が届く前に、逆に諸葛夢の金属かけらに刺され、胸の真ん中に。


 ガラクタみたいな金属のかけらだが、意外と鋭く、分厚い魔獣の毛皮をも簡単に貫いた。これを見て、諸葛夢は、すぐさまバックジャンプし、いったん後退した。


 数秒後、金属のかけらから、急に大量の電気が放射され、電弧は先より激しく、魔獣の体を沿って、走り舞う。


 魔獣の毛は緑から灰色に逆戻り、目の光も失った。漂ってきた煙と同時に焼き肉の匂いもする。そしてパタンと倒れた。


 諸葛夢は魔獣の体から金属かけらを抜き出し、すでにボロボロの袖の布で拭いて、ポケットに入れた。


「うわ、すげえなおまえ。あれは何なの? なんかの宝貝? 俺の電力吸収して再放出できるの?」


 諸葛夢はカイを無視して、しゃがんで魔獣の死体を調べ始める。


「おまえ、ナニモンなんだ?」


 何か思いついたか、諸葛夢はいったん調査をやめ、カイに向かって、


「俺は猟魔人だ。どうだ、おれと同盟組まないのか?」

「ええええ?」


 カイは不思議そうな顔で諸葛夢を眺める。これも仕方ないかもしれない、自分はいつも無愛想だから、急に手を組んでくれと言い出すと、確かに不思議かもしれないと、諸葛夢は思う。


「同盟ってなに?」

「そっちか! まあ、要するに手を組むってことだ。」

「へー、でも興味ないね。」

「報酬あるぞ。」

「ぜひ詳しく聞かせてください。」


 諸葛夢の読み通り、カイは金にうるさいタイプだ。


「要は魔界から人間界にやってきた魔族を退治する人だ、猟魔人は。」

「両替マシン?」

「言ってないよ。魔を、狩猟する、人だ。」

「へー。じゃあ、報酬はどれぐらいもらえる?」


 カイにとって、ここは本題だ。


「魔族の強さにもよるが、服買うぐらいなら余裕だろう」

「あ!」


 服といえば、今の二人の服はボロボロだ。


「このままじゃ教室に帰れないな。そうだ、シャワー室に備品のジャージあるからまず着替えよう。俺はカイだ、お前は確かに……」

「諸葛夢だ。」

「じゃあ、夢っていいんだよな。決めた、同盟組むよ。ただ、二つの条件ある。」

「条件?」


 お金があれば充分のタイプだと思えば、意外と細かいタイプだと、諸葛夢は思う。


「一つ、俺は嬢様のボディガードだ。だから、嬢様を守るのが最優先。必ず狩猟できるとは保証はできない。」


 あの小娘が鬼路で襲われた時お前はいなかったくせに、と心の中でツッコミをした。


「もう一つは?」

「嬢様にやさしくして。あんな無愛想な態度はないだろう?」


 せっかくの同類だ。仕方がなく、舌打ちしながら、諸葛夢は頷く。


「同盟?」


 教室の中、アンジェリナは頭を傾け、カイに聞く。魔族の存在自体は秘密事項だから、詳しいことはアンジェリナに教えない。


「まあ、とにかく、男同士の秘密ってことだ。今日からムウは仲間だ。」

「へー」


 ジリリリリリリリリリ


 歴史の授業は終わった。


「あ、次は研究の時間だ。ムウは何の研究選んだの?」


 アンジェリナは後ろの諸葛夢に聞く。


「コンピューターか、機械関連かな。」

「ほお!」


 急にアンジェリナの顔は諸葛夢に近づく。


「な、なんだよ。」

「はて、諸葛少年は巨大ロボを作りたい、という夢を抱えているのね!」

「いや、そういうわけじゃ……」

「いいのいいの、やっぱりロボットはロマンよね。アンジェリナもコンピューター開発研究だから、案内してあげる。いっしょにいこ!」


 といいながら、アンジェリナは諸葛夢を引っ張って、カイと一緒に大学部の研究室に向かう。


 電脳研究室は大学部の研究本棟の隣にある大きな、真っ白な建物だ。中は広くて、SF映画でよく見る内装をし、いくつかのブロックに分かれている。今は授業、実験、いろんなことをやっている真っ最中だ。


 時に空中から画像の投影が現れ、時に蜘蛛の形をしている小型のロボットがあちこちぶつかりながら歩く。諸葛夢も思わずきょろきょろ周りを見始める。


 研究室の一番奥に二つのドアがあり、左側は資料室だ。中に古い資料がたくさんあり、全部旧式のカセットテープに保存され、夏休み時期で新メディア開発成功したので、今学生たちはテープを運搬して新メディアにデータコピー中だ。


 右側のドアは閉じていて、ドアの上に倉庫と書いてある。ドアの前に研究員の白衣を着ている西洋系の男性がいる。男性は何か悩んでいるのようで、髪の毛をこすっている。


「ギャツビー先生、おはようございます。」

「よう、アンジェリナじゃいないか。おはよう。夏休みは楽しんだかい?」

「え? あ、ええ。悪くない。でも、先生、倉庫に入らないの?」

「これはな。お、新顔だな。そちらのイケメンさんは誰だい?」

 

 ギャッツビーという先生は、後ろにいる諸葛夢を気づいて、先に聞く。


「あ、紹介忘れた。これらは今日から来た転校生の諸葛夢です。これらはギャツビー先生です。」


 簡単に、一気に二人の紹介を終わらせたアンジェリナが、続けてギャツビーに聞く。


「何が起こったの?」


 百聞は一見に如かず、ギャツビーは倉庫のドアを開けた。


 微かに何か匂う。


 すぐ倉庫に入り、中を見たら、アンジェリナは愕然とする。



 ※①中国の死んだ人を悼む節分。墓参りの日。

 ※②紙で作った偽のお金を焼いて、冥府の故人に届くという伝統行事。近年では金だけでなく、紙でできた車、ハウス、iphone、場合によってアイドルの紙人形も焼く。死ぬ前に、必ず自分の推しを家族に教えましょう。




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