第五十六話 『人類滅亡カウントダウン』
ついに、災後の人類に隠されている真相が明かされるのか。
大災、人々は、あの時の出来事を、こう呼んでいる。疫病、日照り、洪水、地震、戦争。まるで格闘ゲームのコンボみたいに、一度触られたら、次々とダメージを受け、全く抵抗する手段はない。
元々100億にも及んだ人口は、災後は、1億未満になってしまい、しかも実際に生存確認され、戸籍登録したのは、5000万人未満。
人々は地上に戻って4年、全力で自分の故郷、自分の新しい家を再建している。仕事に没頭することで、過去のことを忘れ、前に進めたい。しかし、一見強そうな人々は、内面は実に脆い。
もし今の時点で、人々に、あと二年ぐらいで、地球は謎の暗闇に覆われ、人類、すべての命は消えてなくなる、と伝えたら、どうなるのだろう。
最初に暗闇を発見したのは、ある海上探検隊だ。現在航海技術を持つ人材はほとんどいないから、ネオシャンハイの人は原則として、近海で漁業しかしない。しかし、自分の故郷日本が消えたとのうわさを聞いて、一部の人は、探検隊を組み、日本海に向かって出発した。
しかし、結局航海経験が浅いうえ、電子設備もほとんど使えなくなったため、間違ってさらに東の太平洋方向に航行してしまい、目の前の景色に愕然した。
暗闇、あるいは黒い霧というべきか、水平線を完全に覆い、視野の届くところまで満ちる。度胸の据わる若い航海士は、試しに救命ボートで接近してためしてみたが、あらゆる暗闇に接触したものは、齧られたのように、飲み込まれ、消えてしまう。木の棒も、縄も、鉄棒も、そしてかの航海士の人差し指も。結局救命ボートも飲まれ、二隻目のボートを出してやっと航海士を救い出し、幸い命の別状はなかった。
あれから、ネオシャンハイを中心に、科学者たちは暗闇についていろいろと調査して研究し始めたが、進展はほとんどない。あれは空間か、エネルギーフィールドか、バリアの一種か、それとも腐蝕性の強い物質か、それすら、わかってない。
あちこちから情報を集め、今知っているのは、アメリカ州を中心に、西は東経150度、東は東経40度、南北は南極北極まで、地球の大半はすでに暗闇に覆われている。
地上、地下、水中、いろんなルートを試してみたが、すべて失敗に終わった。暗闇はまるで魔法のように、どうあがいても必ず現れる。そして人類は今空を飛ぶ手段はない。
民衆をパニックに陥らないため、暗闇の件は最高機密として扱われ、いろんなところにバリケードが設置され、船も全部政府管理下に置き、されに、関係者の筆記ノートすら、暗闇に触る部分は必ず消し、事故での漏らしも防ぐ。
しかし、この秘密、どこまで隠せるのかは疑問だ。最新の観察結果、暗闇はどんどん広がっている。今のスピードでは、あと二年ぐらいで、地球全体は暗闇に覆い尽くされる。つまりさらに数か月たてば、一部の地域では、すでに可視範囲に入り、民衆はパニック必至。
でも、人類はまだ運命に見放されてないようだ。ある偶然の出来事で、原因もまだ解明されてないが、ネオシャンハイには、空間の裂け目が存在し、あれに突入できれば、遥々遠い惑星、しかも人類の生存できる惑星に辿れる。
空間の裂け目を開くため、二つの要素が必要のようだ。一つはゾルド水晶、一つはストーンヘンジ。前者ならネオシャンハイは持っている。他の都市にもあったはずだ。集めれば何とかなるかもしれない。問題は後者だ。
イギリスのストーンヘンジはそもそも使えないはず。それに、いまイギリス自体も暗闇に飲み込まれ、行って確認することは無理だ。しかし、まだ希望は残っている。晨曦病院で隔離観察期間で、いろんな外来者と話して、どうやら中国大陸にもストーンヘンジが現れたそうだ。あれなら使えるかもしれない。
もしまだ使えるストーンヘンジを発見出来たら、ゾルド水晶をセッティングして、明珠山の八卦図を完成できれば、人類の使えるワープゾーンで、あの惑星に行ける。
しかし、時すでに遅し、何もかも終わった。
………………
…………
……
「おい、娘!まだ死んでないじゃろう、なんでいま走馬燈を走ってるんじゃ?それに、いちいちしゃべってわしに言ってもな」
アンジェリナはかろうじて目を開け、先はどうやら夢を見て、しかも寝言をいっぱいしゃべったようだ。目の前は湿っぽい地面と、血の跡だ。起きたいが、無理だ。痛い、全身の骨が折れたのようで、痛みがすぐ脳髄に伝える。
「ちょっと待ってろ。わしは回復魔法をかけるから」
顔を横にして、やっとアメシストが見える。すでにボロボロで亀裂がいっぱい入ってるステッキから、温かい光が放つ。光はアンジェリナの体を包み、痛みは大分鎮まれ、やっと立ち上がった。
元々かわいい魔法少女の服も、汚れと血でめちゃくちゃ。外の鎧も全部壊され、ごく一部しか残ってない。
「幸いわしはあんさんの防御力を大幅上げた。それに、この鎧もなかなかのもんよ。一命を取り留めたのじゃ」
「ムウとカイやんは?」
「まだ上であのアンディっていう化け物とたたかってる。しかしあんさんもそう簡単にやられたんじゃ、たぶん三分も持たんじゃろう」
「じゃあ、早くアンジェリナを上に連れて!」
地底の大空洞両側に崖があって、下は地下水脈だ。今アンジェリナは地下水脈の隣にいて、上の石壁に、大きな穴がある。あれは怪物アンディの一撃で、吹き飛ばされたアンジェリナが、壁とぶつかったときに残った跡だ。
時間をちょっとさかのぼって、三人は大樹と話している真っ最中に、巨大な何かが壁を壊して、大空洞に入る。あの怪物こそ、ゴブリンたちを殺した真犯人だ。しかも、アンジェリナはなぜか見覚えがある。
よく考えると、あれは確かに、A&E研究所に閉じこまれた時、北条玲が夢で見せた、喧嘩している二人の中の一人、A&E研究所の所長、アンディだ。体はかなり筋肉質になって、数倍も大きくなったが、髪型や髭、そして服装から見れば、たぶん間違いはない。
研究所でエミリーに殺された人は、全部狂暴化した。だからなぜアンディだけは行方不明になったのか。今となってやっとわかった。しかし、ほかの被害者と比べると、アンディの変化はかなり大きい。
怪物アンディが大空洞に入ると、すぐ三人に襲い掛かるが、体力大分回復した諸葛夢とカイ、そして魔法少女に変身したアンジェリナの相手ではない。すぐ、アンディはボールのように、三人と間で往復して飛び回る。数回したら、大樹近くに打ち飛ばされた。
大樹も、この怪物に興味を持ってるのように、根を触手のように動かし、怪物アンディを吊り上げた。
「おお、めずらしいじゃのう、これは噂の、混沌者、いや、ただの混沌獣か」
しかし、まだ見ている最中に突然怪物アンディは自分を縛っている根を振りほどき、手で捕まった根はすぐ枯れてそして灰になった。
「まずい、あいつは樹妖のマナを吸収する気だ!」
諸葛夢はすぐ何かひらめく。アンジェリナとカイはまだ状況を理解していないその時、怪物アンディは大樹に突進して、パンチで樹幹にぶち込む。
「や、やめろおおお!わ、わしはこの世の最後の!!!!!」
と叫びながら、マナはまるで肉眼で確認できるように、何か光っているものが、どんどん怪物アンディの体に取り込む。
アンジェリナもすぐ状況がまずいと気づき、アメシストと一緒に数個の巨大なファイアボールを作って、怪物アンディに打つ。すべてのファイアボールは命中したが、全くの無傷だった。
魔法が通用しないなら、アンジェリナは自ら怪物アンディに駆ける。諸葛夢は止めようとするが、時すでに遅し、アンジェリナはもう怪物アンディの死角に突入して、そして全力で飛び蹴りを繰り出す。
カシャン!
金属破裂の音が聞こえる。激痛もすぐ足の骨から、全身に拡散する。よく見ると、自分の全力の一蹴りは、怪物アンディの指一本で止められ、逆に、足の鎧は粉々になった。
そして次の瞬間、目の前のアンディは消えた。すぐ背後に現れ、アンジェリナの頭を捕まって、地面に陥るほど叩く。
諸葛夢とカイはすぐ助太刀に来るが、怪物アンディは振り向くもせず、片手で二人の攻撃を軽々く捌く。
これを機に、アンジェリナは怪物アンディの掴みを振りほどく、地面から高く飛び、そして両手を上げる。アメシストが使用禁止とされた技で、反撃するつもりだ。
しかし、下を見ると、残っているのは、驚愕な顔で、自分方向を見ている諸葛夢とカイだけだ。気づけば、後ろに何かいる。どうやらまだ後ろが取られた。
怪物アンディはアンジェリナにパンチの一撃。アンジェリナの鎧は全部粉々になって、自身も砲弾のように、大空洞の壁に吹き飛ばされた。壁にぶつかって、直径十メートルぐらいの穴をあけ、そして下に落ちる。
「じょ、嬢様!」
カイは緊張してアンジェリナを助けようとするが、怪物アンディはすぐカイの前に現れ、咆哮する。
どうやら、この場の全員を皆殺しのつもりだ。
果たして、大樹のマナを吸収して強化されたアンディに勝てるのか。
次回を待て!