第五十五話 『千年樹妖』
大空洞の黒い玉は、魔界の穴?
いつも通りに前回の続き、カザキリと羽丸が諸葛夢、アンジェリナ、カイ三人を地下最深部まで連れ、たどり着いたのは大きな空洞。
高さは二十メートル以上もあり、周りに蓄光の鉱石がいっぱいあって、淡く青く光っている。周りの鍾乳石もかなりカラフルのため、夢幻的、幻想的な洞窟に見える。
しかし、三人は洞窟を観賞することなく、ある大きな、空中に浮いている黒い球に気が引かれる。
直径十メートルぐらいの大きなボールだ。外側は眩しいヘイローが纏っていて、そしてまわりの空間が若干に歪んでいる。真ん中の黒い部分も、単純に真っ黒ではなく、微妙に黒さが変わりずつ、たまに虹色にも見える。
これは空間の裂け目に似ていると、アンジェリナは考えているが、諸葛夢にとって、別の重要なものを思い出す。
魔界の穴だ。古天仁が言ってた封印すべし、魔界とつながっている大きな穴。通常、魔族は召喚術によって人間界にやってくるが、とてつもない強力な魔族が召喚されることは滅多にないうえ、そもそも現在召喚術のできる人間は少ない。
しかし、魔界の穴を潜れば、魔族はほぼ制限なしで往復可能になり、人間界にとって大きな脅威になる。この穴は新元学園の近くにあると判断し、諸葛夢を入学させ、見つけ出して封印するつもりだった。まさかこんな地下に隠されているとは。
でも、まだ確信できない。これは魔界の穴であることを気づかなかったカイは、一人でカザキリと羽丸の後ろについて、さらに大空洞の奥に行った。
大空洞の突き当りには、大きな樹がある。枯れて葉っぱが全くない樹だ。枝や根がなければ、巨大なボロい板かと思われるだろう。それに、もっと不思議なのは、太陽の光が届くはずのない地下、なぜ樹があるのか。
「「父上」」
カザキリと羽丸の呼びかけによって、樹の一部が開け、目と口と化し、真ん中老けた顔が見える。
「おお、お前たち、戻ってきたのか。おや、なぜ人間をここまで連れてくるのじゃ?それに、髪はどうした?」
「父上、髪は母上が編んでくれました。そして、母上も、一同の二人も悪いやつではありません。我々と協力して墓荒らしを撃退すると約束しました」
「そうですそうです。母上は我々に名付けてくれました。俺は羽丸、兄弟はカザキリ」
「母上?」
大樹はまだ状況を把握してないそのごろ、会話を聞いたアンジェリナはすぐ大樹の元に駆ける。
「ああ、これはアンジェリナのことを言ってるの。あ・な・た~」
「あなた?」
「アンジェリナは母なら、あたしたち夫婦になるじゃない?」
「ふぉふぉ、これはこれは、愉快な娘さんじゃのう。せがれの話では、おぬしたちは墓荒らしではないと?」
「そうそう、俺たちは違うよ。でも、まずお宝を見せてくれたらうれしい」
カイはすぐ口を挿む。
「宝より、俺はあの黒い空間の裂け目を知りたい」
諸葛夢もやってきて、
「あれは、魔界につなぐ穴なのか?」
「魔界?穴?」
諸葛夢の突然の話で、アンジェリナは驚愕する。
「ほお、若いのによく知っておるのう、まさか、猟魔人なのか?」
「ああ、答えろ。あれは魔界の穴か、それに、お前は魔族か」
「ほお?若者よ、どうやら魔族に恨みでもあるような口ぶりじゃのう」
諸葛夢はしばらく沈黙して、
「ああ、俺の親父は魔族に殺された。だから魔族を見過ごすわけにはいかん」
「え?諸葛淼博士は魔族に殺されたの?」
隣のアンジェリナは、目を丸くして、思わずの呟く。
「なるほど、親の仇か、どおりで憎しみを感じるよのう。じゃが、それで魔族全部を憎むのか?」
「きれいごとはどうでもいい。俺は猟魔人だ。人類に仇をなす魔族なら、殺す」
「では、わしをも殺すのか?」
「お前は魔族ならな」
大樹はしばらく黙り込む。突然、振動が起こり、空洞頂上の数本の鍾乳石は二回動いた。
「せがれよ。どうやらまた侵入者が来たようじゃ。わしはこの若者たちと話がある。侵入者を撃退してくれ」
「は、父上」
「ところで、父上は我々の名前をどう思いますか?」
「羽丸にカザキリか、いい名前じゃ、これからわしもそう呼ぶのじゃぞ、羽丸、カザキリ」
カザキリと羽丸は楽しそうに、大空洞を出て、侵入者を探しに出かけた。二匹が出たところ、大樹は会話に戻る。
「見ての通り、わしは千年樹妖じゃ、妖怪類なものじゃから、魔族っちゃいえば魔族じゃがな」
「あなた、何って名前なの?あたしはアンジェリナ、そしてムウとカイやん」
「わしに名前などない。生まれてから、ずっとここであの穴を守ってきたじゃから、名付ける余裕はなかったわい」
まだアンジェリナが名付けると申し出てない時、カイは先に口を挿む。
「あれ、でも、あんたは財宝を守るんじゃないのか?」
「ふぉふぉ、確かに、わしは頼まれて、財宝も守ってるのじゃ」
大樹の口の下、さらに別の穴があけ、中からたくさんの金銀財宝が現れる。カイはすぐ財宝のところに駆けつけ、今回の褒美はどちらを選ぶのか、いろいろと悩み始める。
「バカな。つまりこの魔界の穴は千年前に存在したとても言うのか?」
「いや、最初に、あの穴は魔界につながるものじゃなく、パラダイスにつながるのじゃ。じゃが、どういうわけか、急に魔界につながるようになったのじゃ。」
「パラダイス?つまり一千年前の人は、生きて天国に行きたいから、こういった穴を見つけたの?」
「いや、そうでもない。あれは子孫が逃亡するための穴じゃ」
「「「逃亡?」」」
三人は思わず同時に話す。
「予言者の話では、人類は千年後、つまりグレゴリオ暦2010年あたりに、とてつもないおおきな災厄に見舞われる。そして、子孫が滅亡の危機から逃げるため、あの穴を用意したのじゃ」
「災厄って、大災、第三次世界大戦辺りのこと?それなら、もう終わったわよ」
「果たしてそうかのう?」
「え?」
大樹の一言で、アンジェリナはかなり動揺した。
「アンジェリナ殿よ。先ここに入ってきたとき、わしはおぬしら三人を観察した。おぬしの表情はかなり特別じゃ。
珍しいものを見る、というより、命の綱類のものを見つけたのように、愉快な表情じゃ。人類の災厄は、本当は終わったのではなく、始まったのではないかのう」
これを聞いて、アンジェリナは完全に黙った。表情も珍しいほど暗くなった。
「どういうことだ?」
これを見て諸葛夢はアンジェリナに聞くが、もちろん返事はない。代わりにカイを見ても、カイは慌てて目をそらして、金貨をかじり始める。
しばらくすると、アンジェリナはやっと口を開け、
「今地球は、半分以上は暗闇の覆われているの。西半球はすでに全部飲み込まれ、暗闇もまだどんどん広がっているの。今の計算では、あと二年ぐらいに、地球全体は覆われ、残りの人類も、おそらく全部死ぬ」
そして、アンジェリナは諸葛夢を見て、
「でも、アンジェリナはもう……」
と言っているその時、アメシストは急に飛び出す。
「待って、何か急に近づけてきたぞ」
次の瞬間、ドカンと大きな音、分厚い石の壁が壊れ、中から巨大なものが入ってくる。三人すぐ思い出すのはヴァレリー、しかしヴァレリーはすでに死んだし、巨大物はヴァレリーより倍以上大きい。
諸葛夢とカイはすぐわかった。ゴブリンたちを殺したのはこいつだ。しかし、先に思わず叫んだのはアンジェリナだ。体にはモリモリの筋肉に破れた研究員の白衣を纏っている。この白衣ならよく知っている。
「ア、アンディ?!」
突然現れたのは、A&E研究所の所長、アンディ?かなり変異したアンディ、アンジェリナと諸葛夢は対処できるのか。
次回を待て!