第五十一話 『漁夫の利』
諸葛夢とカイは大ピンチ
前回の続き。カイは特殊な危険察知能力で、たくさんボールの中、諸葛夢が言ってたコアを見つけた。二人協力でコアを破壊しようとするその時、カイは力が尽き、雷光剣は消えてしまった。
諸葛夢が抑えているボールが力強く振りほどく。さすがに今度こそ人間二人の危険性を分かったのように、部屋中のボールは適当なバウンドではなく、一斉攻撃で仕掛ける。スピードも威力も前より数段増したため、諸葛夢とカイは全力で防御するが、それでもかなりのダメージを受けた。
二人を壁際まで追い込んで、ボールたちは再度融合し始め、合体して二人にトドメをさそうと考えたのだろう。
「もう終わりか、夢、また何か技ないのか?」
「ないな」
「じゃあ、来世でまた会おう」
「お前と会いたくはない」
二人が話しているその時、しゅっと、一本の矢が飛んできて、コアのボールに直撃。
うぎゃあああああああああ
と悲鳴して、ボールたちはまず水のように溶け、そして再度前の二匹に戻った。
「し、しまった、兄弟、我々のコアが……」
「そ、そうだね。ブラザー、まさか人間どもがまだ増援がいたとは」
「そうだよ。お前たち、卑怯だぞ。兄弟、早く父上のところに戻って、新しいコアを頂こう」
「同感だ、ブラザー、戦術撤退、戦術撤退」
「撤退の時、あのきめ台詞を言おう、兄弟」
「了解、ブラザー、せ~の」
「「覚えていろよ」」
二匹は、すぐ逃げた。部屋に残ったのは、ポカーンとしている二人だけ。
「な、なんなんだあいつらは?それに、先の一撃は?」
「しるか」
(しかし、あの矢、まさかな)
「俺たち本当に運がよかったな。ああいう状況でも勝てるなんて。でも、あの二匹、一体なんだ。めちゃ強かったな。」
諸葛夢はちょっと黙り込んで、
「わからん。俺の知らない魔族だ」
「へえ、諸葛大先生も知らない魔族がいるんだ」
(そうだ。俺の知らない魔族がないはずだ。ではあれは魔族じゃないのか。とにかく、さっさと小娘と合流して脱出するほうがよさそうだ)
「休憩は終わりだ。前に進むぞ」
「ええ?何が休憩は終わりだ、だ?まだ30秒も経ってないよ?」
「あの二匹が弱まった今は好機だ」
「何が好機だ?今の俺はさ、パチンコを持っている子供よりも弱いぜ」
「じゃあ、ずっとここで待ってろ。のちにテロリストどもが来る」
「覚醒者同士に、テロリスト呼ばわれるとは、心外ですね」
部屋の向こう側から、人の声が聞こえてくる。カイのよく知っている声だ。二人は振り返って確認するその時、大きな男が急に現れ、分身したかのように、二人をパンチで吹き飛ばす。
二匹の黒い化け物との闘いでかなり体力消耗した二人、これでしばらくは立てない。
「こいつらはあのテロリストどもか」
「ああ、でも、女が一人増えた」
金髪シニヨンにメガネ、そしてスーツ姿の女性が一人。手元に、羊皮紙を持っている。アンジェリナの地図から見ると、正規ルートは遠いうえ非常に難解な構造だ。それに、カイの話では、オリジナルの羊皮紙はさらに内容がわかりずらい。
「たぶん、地図を解読して、ここまで連れてきたのはあの女だろう」
「勘が鋭いですね。少年。しかし、勘頼りでここまで来れるとは思いませんがね。一体どんな手段を使って我々を超えてきたのです?」
「おえしえてやんないよ」
カイの言葉を聞いて、金髪男は手を上げ、後ろの五人は、すぐクロスボウで二人を狙う。しかし、午後と違って、矢の先端に、電気氷炎など、いろんなエフェクトがついている。エフェクトの無い矢でも、紫に変色した。
「午後は一般人の女だから油断はしました。今度は違いますよ。当たったら、かなり痛い。だから、これからの言葉をちゃんと考えてからしゃべりなさい」
「脅かしは無駄だ。こんな奴に嬢様の話を話すもんか……あれ?」
「お前、よくこんな頭でここまで生きてきたね」
「嬢様?」
「午後現場で女が二人いた。短髪か金髪の小娘だろう」
大男が口を挿む。
「たぶんあの金髪の小娘でしょうね。あの時すでに特別だと思いましたが、」
金髪男は顎を撫でながら、
「でも、何より私の心を痛んだのは、巨大な力を持つ覚醒者が、一般人の犬になり下がりましたとは」
「一般人が嫌いのか」
「いやいやいや、勘違いされたら困ります。私は決して一般人が嫌いわけではありませんよ」
金髪男は再度顎を撫で、諸葛夢に、
「一般人はゴミです。ゴミを嫌う必要がありますか?ただ、ゴミを見つけたら、掃除するべし。これだけのことですよ」
「まさか、一般人を全部殺すとでもいうのか。流行らないよ、今どきに」
「残念ながら、答えは、イエスだ。あなたの勘はまた当たりましたよ。第三次世界大戦に感謝すべきです。あの無能共を大分消滅してくれました。あと一息です。あのごみ共を地球から徹底的に抹消して、覚醒者主宰の新時代がもうじきくるのです」
「結構大変だぞ」
「それはご心配なく、素早く一般人を消滅する方法は、こっちにはあります。ただ、活動資金が困ってます」
「だから財宝を狙ったのか。納得」
「ではいかがですかね?我々の同胞になってくれたら、今日は再度見逃しても構いませんよ」
「残念ながら、答えは、ノーだ」
「じゃあ、兄貴、こいつらを殺すか?どうせ一般人の犬になったんだ」
大男は、諸葛夢を踏んで、金髪男に聞く。
「ルイス、どう思いますかね?」
金髪男は、女性に聞く。
「殺すならさっさとやりなさいな。新しく買った靴は汚れちゃうわよ」
「では、我々の顧問もそうおっしゃったので、死になさい」
大男は左手が諸葛夢、右手がカイ、ふたりの首の掴んで、体を持ち上げる。
「なるべく苦しまずに、な」
「ああ、ちょっと力を入れたら、あの世行きだ」
大男の話が終わると、ドカンっという爆発音とともに、石造の壁がぶち壊れ、中からはまぶしい光と、人影が見えてくる。
壁を壊してきた人物とは一体?
次回を待て!




