第四十八話 『宝地図』
ケイトの悲鳴、一対何が起こったのか?
新元4年9月17日、土曜日。三字バザール近くの住宅地、ある部屋。
外の悲鳴を聞いて、アンジェリナ、カイ、飛田俊はすぐ倉庫から出て、リビングルームに行く。
そこで、マスクにプロテクトを着用した、迷彩服の男が、数人立っている。全員クロスボウを所持している。
ケイトは、肩に矢が刺され、地面に倒れている。
「ケイト!」
一番緊張するのはアンジェリナだ。すぐケイトのそばに駆けつける。男たちはクロスボウでアンジェリナに撃とうとするが、あるオールバック金髪の男に止められた。
「クロスボウの前で、気安く動くのは、感心しませんな。お嬢さん」
「あなたたち!何者!」
「私たちの正体を知ったら、命とりになりますぞ。それより、私たちが探しているものを持っているようだな」
「え?あなたたちは読書会のメンバー?本好きなら、まずは礼儀をちゃんと勉強しなきゃ」
「減らず口は、体に刺す矢の本数を増やすだけだ」
男の合図で、5本の矢がアンジェリナに飛ぶ。その瞬間、カイは跳び出し、体を空中で一回転して矢を掴む。両手それぞれ二本、そして口に一本。
五人の迷彩服は驚いて動揺した。再度クロスボウに矢を入れようとするその時、カイはすでに目の前にいる。パンチキックですぐ四人を倒し、さらに一本背負いで最後の一人を投げ飛ばした。
そして、次のターゲットは金髪男だ。ストレートの一撃、しかし、巨大な手が、カイの拳を掴む。
褐色髪坊主頭の大男だ。ちょっと誇張とも思われる筋肉でタンクトップの迷彩軍服。
カイはまだちゃんと大男の様子を確認出来てないその時、大男のワンパンで、部屋の向こう側にぶち飛ばされる。穴をあけるぐらいにぶつかって、倒れた。
「まさか、ここで覚醒者と出会えるとはな」
金髪男は呟く。
「かくせいしゃ?」
「ああ、古さんも俺や夢をこう呼んでるよ。嬢様」
カイはガレキから立ち上げ、どうやら大事に至らなかったようだ。
「口封じするか?」
大男は、金髪男に聞く。
「いや、覚醒者なら、我々大事な同胞ですよ。いずれ受け入れます」
「残りは?」
「そうですね。下賤なる一般人は殺すべきです。しかし、お嬢さん、あなたたち今日運がいい。おとなしく宝地図を渡してくれれば、見逃してやりましょう」
カイも太刀打ちできないなら、無理やり抵抗したら、さらに被害が広まる。アンジェリナは合図を送って、飛田俊は羊皮紙を金髪男に渡した。
なぞの男たちは去ったあと、アンジェリナはすぐケイトの傷を確認するが、ケイトはアンジェリナを強く振りほどく。
「なんであたしの名前を知ってるの?」
「ア、アニタが教えてくれたんだ」
「嘘よ。あいつは他人の前にあたしのこと絶対言わない。はん、あんたも結局アニタの何かを狙ったのね。それとも何、あたしをネオシャンハイから追い出す気?別にいいのよ。出りゃいいんだろう?」
ケイトは、かろうじて立上げ、片手で何かを探し始める。
アンジェリナはすぐ、ある小さい引き出しから、包帯、消毒液などを取り出し、
「と、とにかく、今すぐ手当てを」
「よく調べたのね。なに、監視カメラでも付けたのか」
しかし、片手で処理は不可能だ。仕方なく、ケイトはアンジェリナに任せた。
実際に対応したのはカイだ。戦闘後の対応は慣れてるし、先大男一撃のダメージは大分回復した。素早く矢を抜いて、消毒、止血、繃帯。プロ級の動きだ。
処置の時、痛さでケイトは汗いっぱいかく。アンジェリナは汗を拭き、ケイトの後頭部をマッサージし始める。
「な、なんで、このマッサージの方法知ってるの?これは、あいつがいつも……」
「ケイトさん、幽霊って、信じてるのかな?」
「あたしは子供じゃないし」
「そうね。厳密にいうと、幽霊じゃない。でも信じようと信じまいと、アンジェリナはね。数日前、アニタと一緒に冒険したの」
「冒険?」
「うん、荒唐無稽の冒険だけど、あの時、アニタはずっとケイトのことを考えてたの」
「だから」
「いいえ、頭を共用してるから、アニタの考え事は、わかっちゃうの。いっつもケイトを思うのよ。でも最後、アニタは消えてなくなったの。消える前、アンジェリナに頼んだ。倉庫の貴重品をケイトに渡してくれって。残念ながら、一番重要な宝地図は奪われたけど」
「あたしはね。お金はどうでもいいんだよ。宝地図なんかはクソくらえってんだ。あたしが欲しいのはあいつだけだ。あいつが戻ってくれれば、貧乏だっていい、ネオシャンハイから追い出されたっていい」
涙が、ケイトの化粧を溶かし、一瞬でチーターになった。
「ごめんね。アンジェリナは、人を生き返らせる方法知らないの。でも、アニタは、最後に、ケイトへの伝言があるの。
強く生きろ、あたし最愛のくそビッチ」
この言葉は、魔法のように、ケイトのあるスイッチを押した。アンジェリナの胸の中に、ケイトは号泣する。その時、アンジェリナはケイトを抱きしめ、一生懸命に撫でる以外、何もできなかった。
ケイトの情緒安定したのは、すでに夕方の時間だ。彼女が眠ったことを確認し、飛田俊を送ってから、アンジェリナとカイは学校へ向かう。
車の中
「ああ、とんだ一日だ。あの宝地図(←宝の地図、の方が自然ではないでしょうか)のことは本当に腹立つな。そう簡単に奪われたとは、情けない」
「奪う」
「え?」
「奪われたものなら奪い返す。あれはアニタがケイトに残したものだ」
「おお、嬢様、やる気ね。でもどうやって?」
「宝地図の内容ならアンジェリナは全部覚えてる。それに、もしかして近道を知ってるかも」
「じゃあ、すぐ行こうか。先にお宝を見つかって、あの悪いやつらに、ざまあみろってんだ」
「でも、まだムウとの約束が」
「夢も一緒に連れて行こう。あのデカイやつ手ごわいよ。万が一出くわしたら、あいつの力が必要だ」
「うん、でも、どうやってムウを説得するんだろう」
「そうだよな。あいつ、関係ないことなら関わりたくないよな」
二人は黙り込んで、車は続けて新元学園に向かう。
新元学園の電脳実験室、土日のこともあって、この時間はすでに誰もいない。先についた諸葛夢は、仕方なく、パソコンでテトリスをやって、時間をつぶす。
そろそろスコアカンストの頃、カイは慌てて実験室に入る。
「むむむむ夢、やばいよやばいよ。じょ、嬢様、嬢様が、ま、また誘拐された!」
え?また誘拐されたの?
次回を待て!