第四十五話 『再度の停電』
拉致された北条玲を追って、アニタとロイは再び研究所に戻る。衝撃の最後
A&E研究所B3下の古牢屋。玲ちゃんは超能力で火をおこし、そして扉を破壊した。しかし再び力を使いすぎて気を失った。
ロイは玲ちゃんと看護している時、後ろから足音が聞こえ、振り返ると、血まみれのイーサンだった。
まだ状況を把握してないその時。イーサンは急にトーチでロイを殴った。
倒れているロイは、玲ちゃんが拉致されたことを目撃した。
イーサンはさらに下の密室に行かなかった。では、上に向いただろう。
たぶんイーサンが穴で積んだ障害物をどかしたのだろう。だから脳みその化け物共は簡単にここを見つかった。
でも、なぜイーサンは玲ちゃんを誘拐するのか。いや、これ以上深く考えないほうがいい、っと、自分に言い聞かせる。
とにかく、今はロイを連れて、脳みそ化け物が、もしかして紫の炎人と戦ている真っ最中に、玲ちゃんを探しながらここから脱出を図るべきだ。
歩きながら、ジャックのことや、棺桶や、炎の人型のこと、全部ロイに教えた。
「墓荒らしのジャック、紫炎の人、三匹の脳みそ化け物、そしてあの緑毛の怪物。今日はハロウィンか。」
「次のトリックオアトリートはお菓子を求めるのではないわよ」
「でもよ。イーサンの野郎はどこへ逃げたのかはわからないだろう。緑毛の怪物もいるかもしれないし、ほかの化け物共もそのうち来るかもしれないぜ。」
「心当たりなら、ある」
「どうしてわかるのか」
「わからないわ。女の勘かもよ」
急にまた眩暈が来る。頭の奥深くから、ある数字が出てくる。非常に大事な数字だ。忘れちゃいけないような気がする。
何回も何回も繰り返す。黙読し始める。
「どうした?」
「何でもない、早く行きましょう」
B1のロックされたドア、本来はイーサンのカードキーであけるつもりだったが、もう必要がない。ドアは無理やり破壊された。血痕から見れば、やったのはイーサンだと判る。
私は、今夜のスタート地点に戻った。もしかして、ここは私の終点かもしれない。後は、あの子、いいえ、私に任せましょう。
記憶頼りで、私たちはすぐ最初の実験室に辿る。
ロイは、一蹴りでドアを破った。
懐かしいすら感じる部屋だ。かつて私が座った椅子の上に、玲ちゃんが今座っている。
私と似たような鉄仮面がかぶられ、いろんなケーブルやキューブが、彼女の頭や首に刺さる。
そして地面に倒れているのは、イーサンだ。全く反応がない。もう死んだ。
ロイはすぐ玲ちゃんを助けようとするが、急に動きが止める。
この前も見た光景だ、エミリーと同じく、イーサンの頭も膨らみ上げ、あっという間に、中から脳みその化け物が出てきた。
化け物はすぐ私たちに襲い掛かる。
幸い、この化け物は前の見た三匹より小さい。やはり元の人間の特徴が残すのか。
ロイはすぐテーブルを持ち上げ、化け物に投げる。そして体でテーブルを抑える。化け物は触手で反撃するが、ロイには届かない。
「アニタ!早く逃げろ!今のうちだ!」
玲ちゃんを助けたいが、化け物はすぐ彼女の隣だ。逃げ出せば何とかなるかも。
私はすぐ実験室から逃げ出し、入り口のドアに猛ダッシュ。パスワードもない、認証システムもない、レバーを引けば、すべてが終わる。この子たちも助ける。
ガチャ!
ドン!スー
レバーを下ろした瞬間。周りは再び暗闇が覆う。
どうやら、ヒューズはまた跳んだ!
でも、何も見えないぐらい暗いではない。なぜなら、二つの光源が、私に近づいてくる。
淡い、緑色の光、電弧も閃く。これはご無沙汰の緑毛の怪物だ。
眩しい、紫の光、炎のごとく燃え盛る。これは地下で遭遇した炎の化け物だ。
ドカン!
さらに、実験室から、イーサンの脳みそ化け物も来た。二匹のあとを追って、私に迫ってくる。
一巻の終わりか。後ろは数百キロの鉄のドア。前の三匹違うタイプの化け物。逃げる場所はない、待っているのは死のみ。
体が熱い、体内の何かが、腕に流れていく。そして、腕辺りが光り始める。
鈴だ。アンジェリナの鈴が、眩しく光り始める。首輪をほどいて鈴を手にする。
つぎの瞬間、鈴が変形し始める。丸い鈴が数個の立方体になって、分解し、合体し、最後は細長い形になって、中で無数の光点が現れ、集中する。
鈴の形は大砲のようだ。そして発射口から、巨大な、ビームのような、光の柱が発射される。
光の柱は、あらゆるものを熔かして焼き払う。怪物も、天井も、一瞬して蒸発される。
脱力感が私に襲って、ガタっと倒れた。
抜けたのは気力などだけではない。体中の血も吸われたのようだ。そして、記憶も。
気を失ってない、意識はまだある。光の柱で打ち抜かれた穴から、夜空が見える。美しい夜空を観て、そんなにうれしくなるのは、人生で最初にして最後。
本当は、あいつと一緒に見たかった。
何か騒いだ音がする。怪物はまた生き残ったやつがいるらしい。でも誰かが怪物を退治してくれたようだ。
怪物を倒した若者、青い髪のイケメンは、私が知らない。でもなぜかよく知っている。毎日一緒にいる友達みたいだ。
そうだ。これではっきりした。なぜ今夜私は急に名探偵みたいに頭がさえたのか。なぜ私のできるはずもない日本語がしゃべれたのか。
若者は鉄仮面の金具を素手で壊して、私の頭がようやく解放された。
「じょ、嬢様!大丈夫?」
「嬢様?そっか。私はアニタではない。あたしはアンジェリナだ」
結局、アニタはアンジェリナだったのか。しかし、なぜアンジェリナは自分がアニタだと思い込んだのか。そしてロイと北条玲の生死は?
次回を待て!




