第四十四話 『紫の炎が人と化す』
炎の人型は果たして敵か、味方か?
古代、大富豪や官僚たちは、金銀財宝を自分と一緒に埋葬するが、墓荒らし対策として、迷宮的な構造や危険なトラップなどは用意する。
だから最初はちょっと違和感があった。
墓ではないが、もし本当に黄金が隠されていれば、隠しドア以外何も用意されてないのがおかしい。
せめて吹矢や落とし穴ぐらいは用意できたんだろう。
でも今となって、やっとわかった。
罠などはいらない。番人がいるんだ。
ジャックの悲鳴は、この部屋に満ちる。眩しい紫色の炎を越して、歪んだ表情がやっぱり見える。
炎の人型は、ジャックを捕まって、一瞬で彼を燃やし始めた。
今のうち逃げなくちゃ
ジャックが燃え尽きたら、次は私の番だと、自分に告げる。
幸い、先の争いで、イーサンのカードキー、ジャックの懐中電灯は落ちている。
すぐこれらを拾って、私は階段の上に登る。
よく出来ている階段だ。そのおかげて、ほんの少しの時間で、私は階段を登り切った。
カードキーを手に入れた今、たとえ木造の扉は行き止まりであっても、ロイと玲ちゃんを連れて脱出できる。
しかし、まだ番人の控室に向かっている途中、どっか聞き覚えのある音が聞こえる。すぐ空いてる牢屋に身を隠す。
エミリーの脳みそ化け物だ!たぶんジャックの悲鳴を聞いてこっちに来たのだろう。
でも、来たのは一匹じゃない!
エミリーのあとに、似たような脳みそ化け物が二匹、“上半身”はちょっと太いのと、“片手”がだらんと垂れてる二匹。
これって、ボッブとセン トウブン?
なぜか、脳内にこの二つの名前が浮かんでくる。
幸い、三匹の脳みそは私を気づくことなく、悲鳴を求めて、階段の下に向かった。
これは好機!相打ちになってくれたら、残りはあの緑毛のやつだけ。とにかく今のうちに、ロイと玲ちゃんと合流しないと。
走って、すぐ控室に辿る。
木造の扉は確かに破れた。燃えこけたと無理やりこじ開けた痕跡はある。しかし開けた隙間から、見えるのは石や泥でふさがれた空間。
結局出口なんてなかったのか。
ではロイと玲ちゃんはどこ?懐中電灯で部屋中を探したら、見つかったのは倒れたロイだけ。
彼の頭にたくさんの血が出てる。隣はちょっと曲げたトーチ。
幸い、息はまだある。
「ロイ、大丈夫?何があったの?玲ちゃんは?」
「い、イーサンの野郎!あいつが俺を襲った。そしてAKILAを拉致しやがった!」
北条玲が拉致された?今は脱出の好機だが、果たしてアニタは脱出できるのか。北条玲の行方は?イーサンは果たして何をたくらんだのか?
次回を待て!




