第四十三話 『エイシャント シンボル』
北条玲の力で、木造の扉を燃やして脱出と図る一行。しかし、ジャックはやはりシンボルのほうが気になる模様。ちょっとしたクライマックス?
暗い牢屋の突き当りに、氷、炎、翼、顔で作り上げた彫刻のシンボル、私はこれを見て、ぼーっとしている。
なんでなんだろう。何であんなにムキになったんだろう
玲ちゃんはただ、助けを呼びたいだけ。私が気絶している間、廊下の出来事を私の脳内に送って、あの研究室にいかに重要なものが隠されていると。
直接助けてって言われても、夢だと思ってスルーされるかもしれないし、彼女は私が日本語出来るとは知らなかった。
ではなぜ怒り出したんだろう。最近仕事のストレスかな?それとも生理?
実際に言葉出してないのは、不幸中の幸いか。
あの後、玲ちゃんは何言ってるのかはわからないし、覚えてない。ただ、めまいだけ。
今みんなは控室で、玲ちゃんの超能力でドアを燃やしている。私は新鮮の空気吸いたいといって、また牢屋の廊下に戻った。
新鮮な空気あるわけないか。
しかし、あのシンボルのところに戻ると、石はまだかすかに振動し始める。
「どうしたんだい?急に黙り込んで」
ジャックはついてきた。
「何でもないわ。ちょっとめまいだけ」
「アニタ、ちょっと考えてみたか?あの扉を燃やしても、出口がなかったら、どうする?」
「研究所のルートを試すしかないでしょう」
「上は化け物だらけだぜ。それに、あのとじったドアを開けるには、まず電源を消して、そしてドアを開けっぱなしにして、再度電力回復して、そして、やっと、ここから出られる。現実的だと思うのかい?」
「じゃあんたはいい方法があるわけ?」
「あの小石を試してみたらどうだ。もしかして新しい道が開けるかもしれないぞ」
「冒険者の勘かしら?」
「まあね。このシンボルはきっと何か意味あると思うよ。牢屋に飾りはいらないだろう?」
石を取り出し、シンボルに近づけば、あの振動は少し激しくなる。
まさか、この石は彫刻の一部?例えばどこかに挿めば隠しドアが開けるとか?
しかし残念。年代であちこち欠けてる部分はあるものの、石がはめるぐらいのくぼみなどはない。顔の目に刺さっても、全くの反応なし。振動以外は。
ジャックも試してみるが、結果同じ。
あの振動はどういう意味だろう。でも、シンボルの上に通るとき、若干だが、振動の強弱が変わったような気がする。
まさか?
もう一度試す、確かに、一部の線に近づくと微かに強くなり、離れるとまた弱くなる。
私は石をもって、彫刻全体を確認する。振動が強く反応するのは線の十数本。そしてこれらの線を沿って、石で描く。
まるで文字のような線だ。でも私の知らない文字。あの古代種族の字かしら?
「なんでこう描くのがわかるんだい?」
「線に近づくと振動するでしょう?」
「振動?」
ジャックは不思議そうに私を見る。
全部一通り描くと、シンボルは光り始め、
ガラガラガラガラ
という音ととともに、壁全体が下におろして、下に向く階段が現れた。
「まさか、本当だったとはな」
「本当?」
「ああ、上の牢屋に監禁された時、隣部屋のデブから聞いたんだ。この下に宝があるかもって」
ジャックは懐中電灯を点け、
「行ってみるか?」
「でも、ロイと玲ちゃんはまだ……」
「いや、あっちはあっち、こっちはこっち、もしかしてこちらにも出口があるかもしれないだろう」
といったら、ジャックは階段で下に向かう。数歩あるいたら、私に手を振る。
確かに、木造の扉は必ず出口につながるとは限らないし、今手伝えることもない。下に行ってみたら、新しい発見あるかも。
と思って、私はジャックの後ろについて、下に降りる。
石でできた階段、1.5メートルぐらいの広さ、特に飾りなどはないが、かなり磨かれて平坦なつくりで、なぜか威厳すら感じる。
しかしこの階段はどこまで続くのだろう。懐中電灯の光にも届かない奥深く地下は、化け物と違う意味で怖い。
フォン!
両側の松明は自動的に火が付いた。びっくりした私は、ジャックの腕を抱く。
「大丈夫だ。松明だけだ。にしても、どういう原理だ?何かセンサーでもついてるのか」
ジャックは懐中電灯を閉じ、私を連れてさらに下に向かう。両側の松明は、まるで私たちを迎えるのように、次々と、付けていく。
そして最も異様なのは、火の色は紫色だ。
さらに数分歩いたら、私たちは最下階に辿り着き、あそこは巨大な部屋がる。そして部屋の真ん中は、巨大な棺桶。
「間違いねえ!」
「まさか、棺桶を開ける気?」
「あったりまえだ。せっかく見つけたんだ。開けないわけなかろう」
いろんな怪物を見てきたけど、やはりこれ以上マミーとかはもう見たくない。
「大丈夫だ、たぶん死体はない。」
ジャックが力いっぱいで押すと、石の蓋が開ける。
確かにジャックの言った通りだ、死体はない、死体のほかにも、何にもない。分厚い埃以外は。
「な、なぜだ。黄金は?」
「残念だったわね」
ジャックは髪の毛を掻きながら、棺桶の前で歩き廻る。
「本当は何か入ってるのかしら?」
「黄金だ。とある大富豪の埋蔵金だ。あの大富豪の墓はすでに調べつくした。黄金はない。しかし宝地図は見つかった。
あの富豪と深く関わった官吏がいて、衙府の地下牢に隠されたはずだ!」
「では、あなたは冒険者というより、墓荒らしね」
これを聞いて、ジャックは笑い始める。
何か変
と思っている最中に、ジャックは急に近づいてきて、片手で私の首を絞める。
「本来なら埋蔵金をちょっと分けてもいいんだがな。でもお前は知りすぎたようだ」
といいながら、ジャックは自分のポケットを漁る。見つかるはずもないものを探す。
変だと思って、ジャックは自分の腰を確認する。その隙に、私はナイフを取り出し、ジャックの太ももに刺さる。
「うおおおおお、サン オブ ザ ビッチ!」
動脈かなんかに刺さったのか、かなりの出血量だ。しかも結構痛いらしくて、ジャックは罵りながら、地面でグルグル回る。
「て、てめえ、いつのまに?」
「先あなたの腕を抱いた時よ。ちょっと借りった。っていうか。元々エミリーのものでしょう」
「な、なんで」
「なんでって、あなたのことを疑ってるの。そんな危険人物にナイフを持たせるわけないでしょう」
「なぜ俺を疑う?しつこく財宝を言ったからか?」
「いいえ、もっと前だわ。
普通見つかるはずのない焚焼室をあっさり見つけたり、セン トウブンの死体を漁ってるのにパウルの死体にびっくりして触らないといったり、そしてこのシンボルにやけに詳しい……」
「ああ、わかった。まいった。俺は確かに墓荒らしだ。お金に目が眩んだ。先ほど襲ってすみませんでした」
「パウル殺したのもあなただね」
「な?なぜこれを言う。俺はパウルの死体を触らないからか?」
「一つ、質問したいんだけど。私のこの鉄仮面に血痕あるのかしら?」
「血痕?あるけど、何の意味がある?」
「ちゃんと証拠を残して、安心したわ」
「何の証拠だ?」
「あら、この痕跡に見覚えがないのかしら?あなたが遺したのに」
ジャックはやっとわかったのように、黙り込んだ。
「そうだわ。これはパウルの血痕だと思うよ。焚焼室に凶器は見つからない。外にも同じ、人を撲殺できるほどのものがないのよ。だから、犯人は凶器をもって逃走したと踏んだわ。
そして、あの時の状況、凶器は己を守る武器にもなれる。そう簡単に捨てない……」
「残念ながらあの鉄棒は緑毛の怪物にバラバラされたんだ。結局証拠はない」
「何言ってるの?あなたが私に殴ったのは木の棒よ。ロッカールームで鉄棒を見つかって木の棒を捨てたのでしょう。だからいまだにあっちで眠ってるはず」
どうやら、もう逃げる場所はないようで、ジャックは頭を下げ、
「ああ、あいつは急に黄金7割の要求を持ち出さなけりゃ、殺すことはなかったのによ」
「死んだボッブも仲間ね」
「ああ、なんで知ってるんだ?」
「あんな大きな穴を掘ったのに、あなたきれいすぎ、逆に先ボッブの死体を見たとき、彼の服は埃っぽい。穴を掘ったのは彼ね。」
「俺もちゃんと手伝ったよ。」
ジャックは両手を上げ、
「はい、婦警さん、俺を逮捕してください」
「ここから脱出してたら、ちゃんと警察に届くわ。それに……
黄金を手に入れて、ここから出る方法考えてない、っていうオチはないよね。カードキーやらパスワードやら、早くよこしなさい」
ジャックは大笑いして、
「完敗だ完敗だ」
そしてズボンのポケットから、カードキーを取り出して、
「これはあのイーサンとやらが仕事を終わって、焚焼室から出たときに落としたんだ。」
私がカードキーを受け取ろうとするとき、ジャックは急に跳びあげる。私を押し倒し、そしてナイフも奪った。
「ベイベー、お前の頭は本当にいい、だが甘いんだよ」
ナイフを高く上げ、私を刺そうとするその時。
周囲の松明の炎が激しく燃え上がり、火は松明から落ちって集まり、融合して変形する。
あっという間に、人の形になった。
ジャックに殺されかけているその時、炎が人の形になる?果たしてこれは敵か、味方か、アニタの運命はいかに
次回を待て!