第四十話 『秘密兵器』
話はまたA&E研究所に戻る。アニタは、地下から脱出方法を探る。
ちょっと今までの情報を整理するわ。
ここはネオシャンハイ南部、A&E研究所地下のさらに地下、スタッフも知らない地域、ある牢屋。
私、ロイ、そして行方不明のジャックは、セン トウブンという男に誘拐されてきた。ある頭脳関連の人体実験の被験体として。
そしてイーサンはここのスタッフだが、雑務係で、詳しい情報は知らないし、私のマスクを開ける方法も、B1ドアのパスワードも知らない。
彼はキーカードを所有したが、たぶん逃げる時どっかに落ちてしまった。
あの恐ろしい狂った女は、ここの副所長、そして所長の元カノのエミリー。発狂の原因はまだわからない。
そして私が目撃した殺人現場で殺されたのは、セン トウブンらしい。これも因果応報、ざまあみろってこと。
B2電力管理室の緑毛の怪物について、まだ謎。イーサンも分からない。
そして今、私たちの目の前に立ちふさがるのは、分厚い木造の扉だ。ロイは何回も体当たりしてみたが、びくともしない。
しかし、この部屋は番人の控室なら、この扉の向こうに出口はあるはず。
「このドアは頑丈すぎる。何か大工の道具があれば、開けれるかもよ。」
ロイは部屋中を見まわって、机の上のロウソクを気づく。
「火で燃やそうか?」
「たぶん無理だわ。こういった加工した扉は、木造とはいえ、ろうそくの火力じゃ到底無理。それに、ここ空気も足りない。」
「もし、火炎放射器を使ったら?」
「こんなもの、この研究所のあるのか?」
「あ、ダメです。あれはB2の焚焼室にあります」
「焚焼室?何を燃やすの?」
「死体ですよ。実験失敗で死んだ被験体はあちらで燃やして、証拠隠滅するんです。」
この話を聞いて、怒ったロイはまたイーサンを乗って殴った。
私だってムカッと来るわ。でも痩せこけてるイーサンと比べ、ロイはかなり大柄に見える。これ以上殴ったら、本当に死ぬ。
ロイを止め、
「この焚焼室って、どこにあるの?先私もB2に行ったが、電力室以外何もないわ」
「で、電力管理室の向こうにあります。か、隠しドアみたいな作りで、雑具なども積んで、普通は見つからないです。」
イーサンは泣きづらでこたえる。ロイも拳を下ろし、
「でも、上にはあのクレイジービッチと怪物がいるだろう?本当に戻る気?」
「選択余地ないわ。一生ここにいるつもり?」
「何か武器があれば……」
「武器?」
急に脳内何かひらめく。
「ここの所長から、何か秘密兵器の話を聞いた?」
「ひ、秘密兵器?な、ないと思いますよ」
「じゃあ、B3の突き当りのドアは、どこにつながるの?」
「B3廊下の突き当り?ああ、あそこに確か特殊の研究室があって、僕もあんまり入ったことないですよ」
「あんまり?じゃあ、入ったことはあったわね。中の様子は?」
「様子といわれても、結構実験室らしくて、長~い、真っ白の廊下で、さらに突き当りに大きな白いドア……」
「大きな白いドアは一個だけ?」
「ええ」
夢の中に見た景色と全く一緒だ。
「間違いないわ。あの白いドアの中に、すごい兵器が隠されているわ。きっと」
「なんで知ってんのか?」
「先夢で見た」
「は?」
ロイは目を丸くして、
「夢を根拠して、俺たちが危険を冒して武器を探せってのか?」
「たちじゃなくて、あなた一人だけよ」
「生涯一緒って誓ったんじゃん?」
「いつ誓った?」
「ここで警察が来るまで待てばいいじゃない?」
「た、たぶん、警察は来ないと思いますよ。この研究所は結構前から疑われたが、何度調査してもこの地下室がばれたことないです。だから……」
ロイはまた殴ろうとするが、私は彼を止め、
「いい?ロイ。私だって夢の話は信じたくないもの。でも、アンディとエミリーの名前はちゃんとあってる。こんな偶然ある?」
ロイは、無言で自分のスキンヘッドを撫でる。
「私ももちろん上に行くわ。私はB2の火炎放射器をとりに、あなたは秘密兵器を探しに、これで生存率がぐっと上がる」
「一緒に行けばよくね?」
「いいえ、時間がないわ。うろついた化け物どもがいずれここ発見するから、早めにやったほうがいい」
ロイは、また黙り込んで、自分のスキンヘッドを撫でる。というより、めちゃ擦ってる。
しばらくして、ロイはちょっと笑った。
「まいったな。ホラー映画では、黒人はいつも真っ先に死ぬんだよな。」
「大丈夫。化け物どもの音をちゃんと注意すれば、きっとうまくやれる」
「餓死より、化け物どもに食い千切られるほうが格好いいもんな。わかったよ。行けばいいんだろう」
ロイはイーサンを見て、
「じゃあ、こいつはどうする?」
私が話す前に、イーサンは立ち上がり、
「ぼ、ぼくも一緒に行きます。焚焼室の案内はできます」
そりゃそうだろうね。女一人はやはり心細いし、いかんせんこの焚焼室の場所はわからないもの。
ロイはB3の秘密兵器、私とイーサンはB2の火炎放射器、役割分担を決めたら、私たちは牢屋のところに戻る。
戻るとき、牢屋突き当り壁の彫刻は、私の注意を惹く。無数の曲線が、火と氷の形になる。真ん中の線は文字か、人の顔に見える。
何かのものを語っているシンボルに見えるが、なぜか邪悪な雰囲気もする。
「アニタ?」
なぜ牢屋にあんな彫刻があるのか、疑問を思いながら、私はロイとイーサンのあとで、上に登る。
ミニスカだもの。
B3に戻って、すぐ隣に死体がある。
危うく下にもう一度落ちるところだったが、ロイは私を引っ張る。
「こ、これは誰?」
声を小さくし、私は問う。
「俺が入った時、すでに死体がある。知らないよ」
「ああ、ボッブ、かわいそうに。来世は長く生きよう、真神はあなたにご加護を」
といいながら、胸に大きなZ字を描く。これはイオガンルブン教のハンドサインだ。
「この人も、ここのスタッフか?」
「いいえ、あなたと同じここに監禁されてたんです。食事を配るときちょっと会話したので、名前だけは知ってます。」
先慌ててこの部屋に逃げ込んで、死体があることは全然気づかなかったわ。
とりあえず。三人を息を殺し、外の音を聞く。
クレイジービッチの笑い声もなければ、緑毛の怪物の足音もない。
ドアは開ける。少しずつ、そして隙間から、私たちの頭がこっそり出て、周りの環境を再度確認する。
ロイは廊下を見て、
「アニタ、本当に交代しない?」
私だってB2に戻りたくない。でも、ジャックのことは心配だ。B2で、一度ジャックの安否を確認したい。
「女を一人行動させる気?」
「そっか」
ロイは納得したのように、B3廊下の奥に向かって、私とイーサンは階段のところに向かう。
階段辺りも静かだ。私が逃げたとき、ジャックと怪物と戦う音がもうない。幸い、彼の死体もない。
B2に戻って、血痕はやはりたくさんある。イーサンは壁を押して、ある扉が開けた。扉の輪郭はレンガの隙間と一緒だから、確かに一見わからない。
ここが焚焼室か。
扉を閉じ、イーサンは電気をつけた。部屋の中に、人がいる!
悲鳴を上げようとするとき、よく見たら、ジャックだ。
ちょっとハグしたいが、傷だらけの彼を見て、やはりやめた。
「ジャック、無事だったのね!」
「アニタ!お前も無事か!」
ジャックは隣のイーサンを見て、
「こいつ、誰だ?」
「あ、イーサンっていう、ここのスタッフよ。それにしても、あなたすごいわね、あの怪物から生き延びれるなんて」
「ああ、このことなんだが……」
ジャックは、袖て顔を振って、何か言いづらそうな表情をする。
「な、なによ、まさかもう死んだ、今は幽霊とても言いたいわけ?」
「いやいや、ちゃんと足あるだろう」
「じゃあ、何よ」
ジャックは眉を顰め、
「ここから話すことなんだが、俺自身も信じたくないよ。アニタ、あのクレイジービッチに殺された研究員は、まだ覚えてるかい?」
「ああ、当然。あいつが私たちをここに誘拐してきたもの」
「え、そうなの?」
ジャックは一瞬びっくりして、
「俺があの怪物と戦っている真っ最中、あいつは笑いながら立ち上げ、怪物に襲い掛かったんだよ。」
死んだセン トウブンが復活?にわかに信じがたいことだが、この研究所は一体何が起こったのか。果たして、秘密兵器と火炎放射器は手に入れるのか。
次回を待て!
次回更新は日曜日になります。




