第三十九話 『轟天雷鳴剣』
A&E研究所は新元学園の遠くないところにある。では新元学園で一対何が起こったのか?
夜、新元学園、大学部電脳実験室につながっている通路に、三人がいる。
「拙者は、司馬殿に用がある」
しゃべっているのは、剣魔百吼だ。アンジェリナが答えようとするが、カイは先に話し出す。
「お前か、嬢様を誘拐した変態!まだ嬢様を狙う気か。今度はこの俺が相手だ。」
すぐカイはアンジェリナに向き、
「嬢様、俺はあいつとタイマン勝負する。とりあえず安全な場所へ、ついでに夢のやつを呼んでくれ」
「タイマンとは一体何なんだろう」
でも、百吼の実力はアンジェリナも一応知っている。とにかく実験室に行って、もしかして諸葛夢を見つかるかもしれない。
「わかったわ。カイやんも気を付けて!」
百吼はやはりアンジェリナを捕まりたいが、カイはすぐ光剣を出してそれを阻止する。
「ほう、闇雷剣か?」
「は?これは雷光剣っていうだ。たぶん」
カイはすぐ百吼に切りかかる。百吼も武器を取り出し、この一撃を防御した。
「残念だが、拙者は今ちゃんとした刀を持っておらん。このなまくらでご勘弁を」
百吼は、鞘から、ごく普通、というより、映画撮影ための道具みたいな刀を抜いた。
「な、なぬい?なめやがって!」
カイは雷光剣を操り、百吼に猛攻する。何十回も剣を交わり、カイの息は段々苦しくなってくる。
いくらスビートを上がっても、いくら力を入れても、すべての攻撃は百吼の模造刀に捌かれ弾かれる。そのためか、普段よりも、体力の消耗が遥かに激しい。
武器は悪いのか、カイをもてあそんでいるのか、百吼はあんまり反撃しない。
こういった状況でも、このままでは、相手より、自分が先につかれて倒れる。ではイチかバチか、カイはわざと、百吼に下段攻撃を繰り出す。
急に下段が攻撃されまくって、百吼はちょっと不愉快だ。数回カイの攻撃を弾いたら、思い切って跳ぶ。
これは狙いだ!
カイの光剣は眩しく光る。空中の百吼に再度数回突き攻撃。剣からの電弧が飛び道具として、空中にいる百吼に飛ぶ。
百吼はもちろんすべての電弧を弾けたが、着地した瞬間、すでに後ろが取られた。カイは弓歩して、縦横、十字斬りで切り刻む。
やった。この必殺技は巨大ロボットでも一撃必殺だ。魔族でもただでは済ませまい。
しかし、舞い上がった埃が静まる。ここから見える百吼は、無傷だ。ただ、おさめた刀を逆持ちして、鞘にバツの傷跡は残る。
「な、なに?」
「下段だけ攻撃しているとき、まさかと思ったが、本当に轟天雷鳴剣を繰り出したとはな」
「轟天雷鳴剣?」
(なんだ。この技名、聞いたことがある。しかも、なんか懐かしい)
「残念ながら攻撃の意図が読まれやすいうえ、技自体の完成度も低い」
「う、うるせえ」
「拙者は闇雷属性の攻撃はできぬが、轟天雷鳴剣のやり方は知っている。では教えてやろう。本物の轟天雷鳴剣。授業料は、おぬしの命だ」
言ってからすぐ、百吼の刀から、ものすごいの刀気が発生する。しかしこの刀気は、斬撃というより、気圧みたいなものだ。
カイはこの刀圧に押され、地面に叩かれた。そしてどういうわけか、地面はトランポリンのように、カイを高く跳ねる。
空中で体勢を制御できないカイに、数発の刀気が命中。
再び地面に落ちた瞬間、猛ダッシュの百吼が、縦横、十字斬りがカイの体に切り刻む。
「いい人材だがな。残念だ」
「何が残念だ?授業料がもらえなくなったからか?」
カイの声を聞いて、百吼はちょっとびっくりする。いつからか、カイは二本目の光剣をもって、この光剣からビリビリの音が聞こえる。
「もしこれが実態の剣だったら、上にもバツの跡が残るだろうな」
「なるほど、先ほど拙者の対処方法を学んだのか」
「ああ、完成度が高いとはいえ、同じ轟天雷鳴剣だ。それに、二本の雷光剣を使って、両方向の防御に賭けたのだ。そして、俺は防御だけではないぜ」
カランカランカラン
百吼の持っている模造刀は数段に切断された。
「やはりいい人材だ。」
模造刀とはいえ、自分の繰り出す轟天雷鳴剣を破り、さらに気づかないうちに反撃できるとは、百吼は嬉しそうに、
「拙者は百吼だ。名を聞こう」
「カイだ。」
「フン。今日は拙者の負けだ。武器なしじゃ、これ以上の戦はできぬ。司馬殿との話は日を改めて、また会おう」
といったら、百吼は高く跳んで、消えた。
「いや、もうくんなって」
カイは座り込み、休憩し始める。
かなりのダメージを負ったうえで、疲労困憊だ。もし百吼がもっといい武器を持っていれば、絶対負けるだろう。いや、轟天雷鳴剣を食らった時点で死ぬ。
カイが休憩しているとき、古天仁と諸葛夢が来た。
「お、カイ君、ここで何やってるんだい?」
「先はめちゃくちゃ強い魔族を退治したぜ。あれ、ところで、夢、お前はなぜここに?」
「?」
「嬢様は一緒じゃないの?」
「いや、俺たちも先強い魔族を追い払ったよ。司馬の嬢ちゃんは知らないぜ」
「じゃあ、電脳実験室でパソコンをいじってるのかな」
「せやな」
古天仁は、重傷の二人を担いで、三人で大学部に向かう。
実験室の窓はまだ開けっぱなしだ。電気もまだついている。しかしアンジェリナはいない。
「嬢様?嬢様?」
カイは何回も呼んだが、返事はない。
「これは?」
諸葛夢は、地面に落ちている一枚のディスクを拾う。ディスクから、微かの焦げた匂いがする。
「ああ、これは先嬢様が持てた」
カイはディスクを奪い取って、
「あれ?なんだが、このディスクに電気が走ったのような気がする」
「わかるのか」
「まあ、カイ君は雷属性だからね。間違いはないだろう」
「なるほど、地雷か」
「どういう意味だ?」
「いやいやいや、今はそういう場合じゃないだろう」
「あ、そうだ。嬢様がいない。大事なディスクが落ちてる。しかも高圧の電流で焦げた……これ、どういう意味なん?」
「「……」」
「?」
「嬢ちゃんは誰かに襲撃された可能性が高いな」
「え?なんで?」
「「……」」
「こいつと同じ雷属性の覚醒者か、スタンガンを使ったのか」
「スタンガンって、なに?え?ん?」
「つまり小娘はまた誰かに誘拐された可能性が」
「ええええええ?マジで?どどどどどどうする?今パウズを連れてくるのか?」
「パウズは訓練された警察犬じゃないんだ。この前はたまたまあの洞窟に入って、嬢ちゃんを見つけたがな。」
三人は途方に暮れる時、ある少年が走ってくる。
飛田俊だ。
「た、た、大変だ!リンゴちゃんは誘拐された!」
アンジェリナは誘拐されたのは間違いはないようだ。では彼女の安否は?
次回を待て!