第三十三話 『リトル ボーイフレンド』
幽霊の正体とは?
ホラー映画教訓の一つ、危ないところは夜には行くな。
しかし、林宇林娜の入学手続きを一刻も早く済ませたいアンジェリナは、夜になったのにもかかわらず、カイを連れて電脳実験室に行く。
そこで、姉の情報を探る諸葛夢と会ったが、次に来るのは恐怖だった。
「うわああああああ!幽霊だ!」
パソコンをいじってるカイは急に絶叫する。アンジェリナと諸葛夢もすぐ窓の外を見る。
髪の長く、肌が真っ青な女の顔だ。三人を睨んでいる。そしてチラッと消えた。
魔族ではないかと思って、諸葛夢はすぐ窓から出て、幽霊を追う。
「カイやんも一緒に追って!幽霊事件の真実を暴くのよ!」
「お、おう、わかった!」
……
「なんで動かないの?」
「足がまだ震えて力が入れない。嬢様は?」
「左に同じ」
「ははは」
「ははは」
「おお、大分治った。じゃ、行こうか」
「いいえ、カイやん先に行ってて、アンジェリナはとりあえず林宇と林娜のデータを入れておく。後で追うから」
「わかった。じゃ、行ってくる」
「行ってらっさゃい。
……、幽霊って、どこにも通じるんだね」
と呟きながら、とにかく作業に集中するアンジェリナ。
古天仁と一緒に行動する時期、カイはいろいろ学べた。覚醒者っていう突然変異の人類は、マナというあちこちに存在する、特殊のエネルギを利用できる。
そのマナを使って、いろんな特殊能力を使ったり、自分の体を強化することは可能だ。カイの光剣も、マナを雷に変化して、形成したものだ。
そして、マナを吸収して使うとき、マナの渦巻きが起こし、この渦巻きは人の指紋や声紋のように、人それぞれが違う。
カイはどうやらマナに結構敏感なタイプで、相手を特定したり察知したりが得意。微かの諸葛夢の渦巻きを感じ取りながら、後を追う。
遠くないところですぐ見つけた。花壇の近くて、諸葛夢は幽霊の被り物を付けている少年を、片手で持ち上げている。
「は、はなせ!このバカでかいの!」
「なんだなんだ、結局幽霊っていうのはガキのいたずらか?」
「何がいたずらだよ。おらはちょっとリンゴちゃんをびっくりさせたいだけだ」
「これはいたずらっていうの、あれ、リンゴちゃん?」
カイは少年の被り物を外して、
「ああ、お前か、飛田俊!」
「知っているのか?」
「ああ、嬢様に付き纏う面倒な奴だ」
「リンゴちゃんの彼氏だよ」
「何が彼氏だ?ストーカーの間違いじゃないのか?」
二人の口喧嘩を見て、諸葛夢は飛田俊を下ろす。どうやら魔族じゃないのようで、ここに長居は無用。帰ろうとしたら、ぷんぷんと怒ってるアンジェリナは来た。
「ああ、シュンちゃん、探したよ!」
「あ、リンゴちゃん、会いたかったよ~」
抱こうとする飛田俊だが、アンジェリナとカイが同時に阻止した。
「シュンちゃん?学生データを削除したのは、あなたでしょう!」
「な、何のことやら?」
「とぼけないで!先アンジェリナはデータをもう一度確認したら、OSにデータ削除のログが残ったわよ!しかし学生データ管理ツールにはない、わざとログを消したのでしょう。管理ツールのログ消す方法を知ってて、OSのほうが知らないのは、OS完成前に抜けたあなたしかいない!」
パチパチパチ
「さすがリンゴちゃん、いずればれると思ったよ。ねえ、仲直りしようよ」
「何か仲直りだ!べーだ。あ……」
「お、気づいたか?磁気テープのデータもちゃんと消しといたよ」
「な、なんでそんなこと?データ全部再入力するのにめちゃくちゃ時間かかるよ!」
「心配すんな。おらはちゃんとバックアップ取ったよ。このバックアップのディスクが欲しけりゃ……」
「あ、それなら、あなたのお兄さんの所に置いたでしょう」
「え?」
「シュンちゃん、学校で友達いないもんね。それに、大雑把だしおっちょこちょいだし、小さいディスクならすぐなくしちゃうでしょう?それなら、動漫社※に隠したほうが一番いいじゃない?」
「え、ええええ?」
「図星みたいだね。カイやん、行こう。ムウも一緒に行かない?動漫社では、面白いものいっぱいあるの」
どうせ電脳実験室に戻っても姉の情報探せないから、諸葛夢もアンジェリナと一緒に、旧校舎に向かおうとする。
「ま、まって、リンゴちゃん、も、もう一つ、おらはもう一つの手札を持ってるぜ」
「なによ?」
「ハナちゃんの行方は知りたくない?」
「え?」
「ベラの葬式、おらも行ったよ。そしてリンゴちゃんの車で何かをやっている連中を目撃した」
「犯罪現場を目撃したのに、なんで警察呼ばないの?」
アンジェリナは全力で飛田俊のほっぺを引っ張る。
「ら、らから、えんごはあんとらからおりのはめのへふははよ」
「嬢様、こいつ、何言ってるんだ?」
「だから、リンゴちゃんと仲直りのためのてふだだよって」
「聞き取れるのか」
諸葛夢はちょっぴり驚く
「いてて、ねえ、一回デートしようよ。古本屋巡り、ジャンクフード、あ、あと、アホボディガードとバカデカイを連れても大丈夫だからさ」
「ムウはバカでかいじゃないの!」
「へ、夢、お前はバカデカイってさ」
カイはなぜか得意気に諸葛夢をあざ笑う。
「……」
「あれ?なんか変?」
「は~、わかったわ。一回だけね。」
「やった!」
「もし嘘ついたら……」
「リンゴちゃんに嘘つくのは無理だよ。じゃ、そういうことで、土曜日また!」
去ろうとする飛田俊、
「ディスクは確かに動漫社の教室にある。ついでに、このお化けのマスクも返しといて、動漫社のハロウィン道具だからさ!」
飛田俊の後ろ姿を見て、アンジェリナは思わず顔を手で覆う。
「なんだか、シュンちゃんとかかわると、頭が痛くなる」
「誰だあいつ?」
飛田俊、アンジェリナと同じく飛び級の天才少年、歳は一つ上だが、今は高校二年生。
歳が近いし、あんまり友達がいないため、かわいそうと思ったアンジェリナはよく彼と一緒に昼ごはんを食べる。そのためか、自称アンジェリナのボーイフレンド。
しかし、性格が悪いうえ、いたずらが好きすぎて、平気で小動物を殺す。そしてとうとうパウズにも手を出してしまったから、夏休みの時で大ゲンカして、絶交になった。
動漫社のある旧校舎に向かいながら、カイはなるべくアンジェリナに聞こえないように、小さい声で諸葛夢に説明する。
飛田俊がパウズにやらかしたことを聞いて、諸葛夢も思わず眉を顰める。
夜になったら、本来高校部の教室に生徒がいないはずだが、ある教室だけ、まだ電気がつけている。
遠い外から、窓越しに、飾っている美少女フィギュアや漫画本などが見える。
旧校舎の正門に回って入ろうとするが、動漫社の教室から、助けを求める声が聞こえてくる。
※動漫社、つまり漫画研究部やアニメ鑑賞部みたいな部活。近年中国では、日本のアニメを動画ではなく、動漫と呼ぶ若者が多い。動く日本漫画の略語として使われる。おっさんたちは納得できない様子
幽霊事件は一旦終了のようだが、動漫社ではまた何かが起こった。一体だれが、どうして助けを求めたのか。
次回を待て!