第三十二話 『諸葛幽』
やっと病院から帰った二人、しかしまだまだ事件はいっぱい起こる。
新元4年9月15日。
2週間の隔離期間が終わって、アンジェリナと諸葛夢はやっと学校に戻れた。
午前中はベラ・ジノヴィエヴァの葬式を参加し、午後学生会(生徒会)に用事があって帰ろうとするアンジェリナだが、古天仁に呼び出された。
病院で起こったすべての出来事、剣魔のことや、ゴブリンなど、深追いしないうえ、他言無用でお願いしたいと。
今の状況じゃ、催眠術で一部の記憶を消すのはもはや無理だし、カイからも、アンジェリナは催眠術などが嫌いで、彼自身も記憶喪失のトラウマがあって、この手段は嬢様に使わないで、との頼みもある。
そのため、古天仁はいろんな調査を行って、あるアンジェリナの秘密を発覚した。魔族の件の代価として、あの秘密も、古天仁は口にしないと約束した。
性質は極めて似てる2つの秘密、洩れたら民衆はパニックに必死。そう考えると、アンジェリナはすぐ承諾した。
そしてもう一つは、ベラの検死報告書ができた。病院の出来事でアンジェリナの頭脳に感服する古天仁は、ぜひ彼女の意見を聞きたいと、コピーの入った封筒をアンジェリナに渡して帰った。
親友の検死報告書は読みたくない、しかし親友を殺した真犯人は見つけ出したい。
躊躇いながら、アンジェリナはカイと一緒に、車で学校に戻ろうとする。
「ハナちゃん、学校に戻って」
……
「ハナちゃん?」
車は全く反応しない。故障かな?
と思って、アンジェリナは車のボンネットを開けると、乱雑で置いたケーブルや電線、そして本来はハナちゃんの本体、ボードを置けるためのスペースが見えてくる。
「ええええええ?ハナちゃんが盗まれたああ?信じらない!!」
と、アンジェリナは絶叫する。カイもすぐ確認しに来たが、やはり間違いはないだろう
「くそ、だれがやったんだ?」
「ま、まさか……」
「嬢様、心当たりあるの?」
「あ、うん、証拠ないから、適当なこと言っちゃダメ。とにかく、あと警察に通報するから、とりあえず学校に戻ろう。カイやん、運転お願いね。」
「了解」
帰る途中、アンジェリナは検死報告書を読む。
「正面から鋭利物によって、頭部切断され即死?」
「このエリーってやつ、すごいな」
「鋭利だよ。え、い、り。でもおかしいな」
「なんで?」
「もし百吼が犯人だったら、彼の剣捌きだと、真正面はおかしくない?ふつうなら左か右から斬られるでしょう?」
「でも、待ち伏せとか、通りすがりの状態で斬ったら?」
「鬼路の状態と百吼の腕から考えると、可能性は低いと思うな……、それに、所持品の中に、携帯式トーチバーナー?」
「あ、あれは確かに、夢が発見した……どうした?」
「いや、これって、もしかして、倉庫の放火事件とのつながりが……」
「なんで?」
「このトーチバーナーで放火したとか」
「へ……
……
あれ、これって、ベラが放火の犯人じゃないか?」
「カイやん……。いいえ、違うよ。もし本当にこのトーチバーナーは倉庫放火事件の凶器であれば、犯人はベラに冤罪しようとしたんだよ。」
「なんで?」
「このトーチバーナーに、指紋がついてない。そして、ベラのほかの所持品は、カバンや、ノート、ペンなどしかなくて、一つ、ないとおかしいなものが持ってないよ。」
「ないとおかしいなものとは?」
「手袋だよ。カイやん」
「なんで?」
「トーチバーナーに指紋がついてないってことは、使用するとき手袋を着用したってこと。そして放火した後、どっかに処分するときも、必要なの」
「でも、処分するときちゃんと拭けばいいじゃない?」
「なら、なぜカバン入れる前も拭くの?犯人だったらとにかく早めに現場から離れる必要があって、捨てる時に拭くなら、カバンに入れたものは指紋がついているはず」
「じゃあ、まず犯人は手袋をつけて放火して、トーチバーナーをカバンに入れて逃走して、しかし途中うっかり手袋をなくして、そしてやべえ、と思ったら、いきなり殺されたとか?」
「ま、まあ、その可能性も否定しないわ。だから、今日学生会の仕事を終わったら、もう一度倉庫辺りの現場調査しようね」
しばらくすると、二人は車から自転車、そして最後は学生会の教室に到着した。しかし待っているのは、またもや事件だった。
「ええええええ?学生のデータは全部消えた?」
「ええ、新入生また二人来るので、データ入れようと思ったら、中に何もないわ」
ミカエラは答える。すぐパソコンを付けて確認したが、やっぱり間違いはないようだ。
「データ修復とかは、可能かしら?」
「新メディアは無理だよ。削除されたデータは本当になくなってしまうから」
「困ったわね。これって、もう一度磁気テープから転送必要があるってことかしら?」
「ええ、作業は時間がかかるのね」
「いいえ、本当に困るわよ。たぶんあなたの想像と違って」
「え?どういうこと?」
「あなたがいないとき、実験室辺りが、幽霊が出たって噂があったの。そして、実際に幽霊を見て、発狂して病院に運ばれた大学部の女子も本当に出たわよ」
「えええええ?ゆゆゆ、幽霊?」
「だから、作業時間は昼に限るの。昼休みの時間を使えば、数日もかかるのかしら?」
「あ、あははは、そ、そうだよね。お昼なら、幽霊は出ないよね。資料転送は明日からにしましょう」
といいながら、アンジェリナはミカエラの持っている新入生の資料を見て、
「カイやん、今すぐ電脳実験室にいこう。すぐデータ転送作業をやる!ミカエラ、明日また!」
「え?ちょっと?」
「え?ちょっと?」
アンジェリナはすぐ一枚の新型ディスクをもって、カイを引っ張って、学生会の教室を後にした。
新入生資料の中に、二つの名前が記載されている。大学部二年生、林宇、そして高校部三年生、林娜。
実際に電脳実験室にたどり着いたのは、すでに太陽が沈み、大分暗くなった時間だ。
幽霊の噂のせいか、実験室の中に多くの設備はもうほかのところに移って、実験をやっている生徒もいない。そこにいるのは、一人だけ。
(む、ムウ?なんでここに?どうしよう、気まずい。異星で結構ひどいこと言っちゃったな。よく考えると、あの状況は仕方ないよね。ムウもアンジェリナを守るためにやったんだよね。
そして、病院の時またアンジェリナを救ってくれた。まるで、ヒーローみたい。
どうしよう、まず、謝るのかな?)
「何やっているんだ?」
諸葛夢は先に話し出す。
「あ?え、ちょっと、学生会のやることがあって、それより、ムウは何やってるの?」
「ちょっと調べたいことがある。しかしここのパソコンは……」
無理もない、WindowsもIOSもLinuxもない。使えるOSのはDosのみ、いろんなコマンドを覚えなければ、うまく動かせるはずもない。
「じゃあ、アンジェリナが手伝ってあげるから、何を調べたいの?重要な秘密や個人情報はダメだからね。」
「人を探してるんだ。ここにいるかどうか」
「名前は?」
「諸葛幽」
「え?諸葛って」
「ああ、わかった。はてお前の妻だろう?結婚したら夫の苗字に変わるのだろう?」
カイは突然口挟む。
「現在の中国にそういった習慣はない。姉だ」
「あ、ははははは、そうだよね。だと思ったよ。」
なぜか、ちょっとほっとしたアンジェリナ。
「でも、諸葛幽って名前の生徒いないよ。」
「まさか、お前は全校生徒の名前全部覚えているのか?」
「ええ、そうだよ。信じないならテストやってもいいよ」
「じゃ、俺がやる。嬢様、いいか、生徒番号413793はだーれだ。」
「王飛、去年高校卒業して、現在は医学大学の大学生」
「すげえな。まあとりあえず検証しようか。えっと、俺は先、何番って言ったっけ?」
「……」
「……、
ま、まあ、でも、アンジェリナの記憶違いかもしれないよ。とりあえず調べてみるね。えっと、諸葛幽
幽か、いい名前だね。そういえば、最近この辺りに、幽霊が出るって」
「なんでいい名前から幽霊につながれるんだ?」
「うわああああああ!幽霊だ!」
パソコンをいじってるカイは急に絶叫する。
はて、本当に幽霊が出たのか?幽霊の正体とは一体?
次回を待て!