第三十話 『招かざる客』
戦争時期、原因は不明だが、シャンハイは山に囲まれてしまった。災後、これらの断崖絶壁は、外来者がネオシャンハイにたどり着く、最大の敵と化す。
特に泰山のある一角。ネオシャンハイから見ても無人区のため、片付ける人もいないのせいで、いまだに、たくさんの死体が転がっていて、その多くはすでに白骨化した。
骸たちは、今静かに、男二人の決闘を見ている。
百吼は目に見えない剣を操り、諸葛夢に猛攻する。どの一撃も重く、当たれば即死か重傷に必死。剣の軌道を読むには、百吼手の動きを見るしかない。
諸葛夢は、地面に刺さった大剣の隣で、ほぼ素手で戦っている。百吼の攻撃を捌いたら、すぐパンチやキックで反撃、そしてある程度距離開けたら、大剣で追撃。
諸葛夢は遠近、百吼は中、二人は己の得意レンジ争奪戦を繰り返す。飛ばされる刀気、大剣叩く振動、元々人気のない場所も、急ににぎやかになる。
どれぐらい戦ったのか。太陽はすでに高く登る。久しぶりの快戦、珍しい好敵手、百吼は何よりもこの戦いを楽しんでいた。
しかし、いまだに疑問が残る。なぜ諸葛夢の耐久力が急に増したのか。数時間にも及ぶ死闘、あの大剣を操って、最初のと違って、全く疲れの様子がない。
そして、あの妙なアレンジを加えた、皇剣地魔陣。
「殺すのが惜しい、だが、まずは鼻をへし折ってくれよう」
力をため、力強くの一振り、強力な刀気が放つ。前のやつより強く、早く、諸葛夢は慌てて大剣で防御するが、それでも数歩後退された。
「あの魂無き鉄の塊と、皇剣地魔陣を使いこなせまいといったはずだ。」
百吼は構える。武器は見えないが、ポーズから見ると、病院の時、吸血後の構えと一緒だ。
「今日は楽しかったが、もっと精進するのだな」
言い終わったら、百吼は急に無数の剣突きを繰り出す。攻撃の密度も速度も破壊力も大きい、防御も回避もできない。
病院でも同じの連続突きにやられて経験があるから、今度は高くジャンプする。しかし、これこそ百吼の狙いだった。空中の諸葛夢は、影を感じる、頭を上げると、百吼はすでに自分の上にいる。
一蹴り
くぼみができてしまうぐらい、諸葛夢は重く、地面に落ちた。次の瞬間、無数の剣突きが、雨のように、空から降りこんで来る。
わざと外したのか、急所に直撃はない。が、それでも結構の数が諸葛夢の体を貫く。周りは、すぐ赤く染めてしまう。
百吼は着地して、ゆっくりと諸葛夢に向かい、見えない剣を指して、
「これこそ、チェックメイトだ。」
「果たしてそうかな?」
「なに?」
なぜか、重傷の諸葛夢はまだ余裕そうな態度をする。疑問を感じるその時、すぐ近くに、巨大な爆発音をする。
爆発の逆方向に、人の気配がする。見ると、小山の上にロボットを操っているアンジェリナと、同乗する緑髪の青年、さらに隣に三人と一匹がいる。
「百吼、もうやめなさい!あなたは今包囲されたのよ!」
「何が包囲だ。五人しかいねえし、固まってるし」
「うっさいわね……とにかく!早く武器を捨て、投降しなさい!」
「すまんな。拙者に武器捨てるなど、できぬ相談だ」
「え、えっと、な、なら、次の一撃は……」
「もちろん、あいつに打てよ!」
「だめだよ、林宇、リニアレールガンの威力じゃ、死んじゃうよ。」
「あいつはあんたを殺そうとしてるんだぞ。バカか司馬のお嬢様よ」
二人が口論しているとき、アンジェリナは急にまた一発、砲弾を発射する。
ちょっとだけ動こうとする百吼は、急に左手辺りに高温を感じる。そして片手の服が焼かれて、すぐ隣でまた爆発する。そのあと、砲弾の飛ぶ音が聞こえてくる。
「動かないでよ。このリニアレールガンの弾速は音速の七倍以上。それに、アンジェリナは射的ゲームが得意よ、〇び太よりも得意!」
だが、百吼一番驚いたのは、砲弾の速度や威力などではなく、アンジェリナ読みの正確さだ。これはまた興味深いだ。
「面白い、ではその音速七倍の砲撃と拙者の速度、どっちが上か、確かめさせてもらおう」
百吼が構えようとする。だがその時、先アンジェリナの砲撃であけた穴から、緑色の小人がたくさん出てきた。
数十匹のゴブリンだ。棍棒などの武器を持っている。カイと古天仁はすぐわかった。これこそ昨日古天仁が追おうとするゴブリンだ。しかし元々は三匹しかないが、どうやら先の一撃で巣窟に命中したようだ。
ゴブリンの大軍は二手に分かれて、数匹は諸葛夢に、残りはアンジェリナ達に向かう。
カイはすぐ光剣を作り出すが、多勢に無勢、諸葛夢は今戦えない、林娜と古天仁も期待できない。唯一頼れるのは、諸葛夢支援のために作ったレールガンだ。
「嬢様、とりあえず、そのレールガンで頭数減らそう……」
……
「嬢様?」
「だめだ、司馬のお嬢様は寝ちゃったよ!」
「ええ、マジ?じゃあ、お前がうてよ。」
「無理だ、詳しい操作方法がわからんよ。」
「災厄だな。仕方がない、古さん、一つ頼みがあるっす!」
「わかった。家族に、最後まで立派に戦ったと伝えておくよ」
「遺言じゃねえっすよ。一緒に戦ってくださいって言いたいっすよ。」
「いや、無理無理、俺、頭脳派だからね。」
「じゃあ、あたしが戦うわ。何か武器とかがある?」
「え?」
カイはちょっと名乗り出す林娜にびっくりするが、すぐ手元の光剣を林娜に渡す。
「いや、ダメダメ、林娜を巻き込むな!」
「兄貴は黙ってて!そこでアンジェを守るのよ。アンジェの身に何があったら、承知しないわ!」
「は、はい……」
妹の気迫に圧倒される林宇、そして急に笑い出す古天仁。
「なに笑ってるのよ。おっさん!」
「ああ、わりいわりい、カイ君、俺にも雷光剣くれ、女子も戦っているのに、男として、さぼりができないな。」
カイはすぐ二本の光剣を作り出し、一本は古天仁に渡す。
「でも、二人とも注意して、雷光剣は俺の手から離れると、時間たったら消滅する。」
「ああ、わかったわ。光剣がなくなったら、相手の武器を奪って使う。行きましょう、二人とも!」
林娜は、光剣をもって、男二人を連れ、登りあがってきたゴブリンを攻撃し始める。
一方、諸葛夢の周りに、すでに数匹のゴブリンがいた。しかし、百吼がいる以上、うかつに動けない。
「魔族同士の殺し合いはごめんだが、その若造に手を出したら、この妖刀紅朧の錆になるがよい」
話が終わったら、すごい量の魔力が百吼の体から放出する。これでゴブリンたちは完全にビビった。
「最初からその力を使えばよかったのに」
仰向け寝てる諸葛夢は口元の血を拭きながら。
「おぬしこそ、今日は全力を出し切ってないと見える。なぜ?」
「出せる全力なんてないよ。」
「とぼけるつもりか……ん?」
何かを感じる百吼、
「どうやら今日の邪魔者が多いのようだ。また会おう、今度こそ、おぬしの全力を見せてもらおう」
すると、百吼は一瞬で消えた。
邪魔者がいなくなった。ゴブリンたちはすぐ鈍器をもって、諸葛夢に襲い掛かる。
ボキバキ
骨の砕けた音がする。
いよいよ大詰めか?百吼は一時撤退したが、今度のゴブリンの大軍。果たしてゴブリンたちに勝てるのか。
次回を待て!