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サイゴヒーロー ~魔を狩る人~  作者: 古蘭佐
第二章 入院しても穏やかじゃない
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第二十九話 『姿を持たぬ怪物』

洞窟の中に、見えない何かと戦っているカイ。一体何が起こったのか。

 新元4年9月11日泰山某所、石室から逃げ出したアンジェリナだが、真っ黒の通路で匍匐前進中、急に光点と遭遇する。


 動きから判断すると、獣の目だ。


 全力で息を呑み、音も一切出さずに後退するが、匍匐移動じゃ、四足の獣から逃れるはずもない。やはり、だんだんと距離が詰められる。


 やがて目の前に移動した獣、クンクンとアンジェリナの匂いを嗅いで、そして顔をなめ始める。


 この感触は良く知っている。


 アンジェリナも獣を触ってみる。フサフサの毛並みで、尖った口。50センチぐらいの大きさで、首輪も付けている。


「パウズ?」


「ワン!」


「わあああ、やっぱりパウズだ。久しぶり、アンジェリナを助けに来たの?」


 暗くて見えないが、自分の犬を撫でるアンジェリナと、久しぶりに会えた主を舐めるパウズであった。


「さ、いこ、外へ!」


 パウズが同行すると、さらに勇気づけたアンジェリナ、もうしばらく進んだら、前に光が見え、やっと外に出た。


 と、思ったら、結局まだ洞窟らしきの内部で、目の前によく知っている人影がいる。


「古さん!カイやん!なんでここに?」


 男の二人もびっくりする。


「じょ、嬢様、こっちだって聞きたいよ。なんでこんなところに?」


「話がめちゃくちゃ長くなるし、アンジェリナが先に聞いたんでしょう。まずカイやん答えて」


「えええええ、えっと、その……」


 さすがにパウズと散歩途中で、古天仁が急にゴブリン退治を依頼しに来て、ついに犬まで連れてきた。そしてゴブリンが見つからず、あちこち探したら、急にパウズが小さい穴に入り込んだ。っと、カイは言えない。


「いや、あれね。俺が泥棒を追ってたところで、カイ君と出会って、そしてなんやかんやで犬を連れてここに来ちゃったよ。」


「ここに泥棒いるんですか?それに、パウズは警察犬じゃないですよ。」


「わりいわりい、今後気を付けるよ。でも、この辺りに泥棒の巣窟あるのが不自然じゃないぜ。物を盗んでネオシャンハイから脱出して売り払うとか」


「まあ、わかったわよ。でも、古さんとカイやんと会えてよかった。」


 アンジェリナは立ち上がって、服についた埃を何回も叩く。


「あ、そうだ、早くここから出て、ムウと百吼の決闘を何とかしないと!」


「夢?平安古(ひやこ)の血統?」


「言ってないよ。」


「まあ、慌てるな、司馬の嬢ちゃん。ムウはそんなにやわじゃない。逆に、詳しい事情何も知らないまま、うかつに関わると、こっちがやけどするから、ゆっくりと話そう」


 これも一理があると思い、アンジェリナは病院の出来事を二人に話す。


 三人が話している途中、パウズは急に慌てだす。不安そうに、先の穴を睨む。


 真っ先にパウズの異変を気づいたのはカイだ。しかし、同じく穴を観察しても、何の異常もない。


 しかし、確かに何か違和感がする。


 パウズを追って洞窟の奥に来た時、古天仁が松明を発見して火をつけた。しかし、なぜか、今壁に付いた松明を見ると、若干歪んでいる。


  普段目を細くするカイは、さらに全力で細目して、この歪みを見る。


 突然


「危ない!」


 と叫んで、アンジェリナを庇って押し倒し、同時に古天仁をも蹴り飛ばす。


 ズバッ


 とでかい音とともに、三人間の地面に、長く白いあとが現れる。何か鋭いものが地面を削ったのようだ。


 アンジェリナと古天仁はまだ何が起こったのかはさっぱりわからない状態、その時、カイはこの見えない何かがこっちに向いていると気づき、アンジェリナを退け、力をため、腕に放つ電光が一点に集中して、光剣を作り出す。


 身が見えないが、風圧で、何となく相手の攻撃を感じ取って、数回、光剣で防御成功した。防御時に、空中に火花が舞い、飛ばした火花は何かとぶつかる。


 これで、自分の前に巨大な何かが存在するのがわかる。歪みで大体の場所を特定し、試しに、カイは一回蹴りを入れた。


 ドカン


 見ごとに命中した。どうやら怪物は蹴り飛ばされ、壁にぶつかった。


「嬢様、古さん、気を付けろ、透明の化け物がいる!」


 古天仁はすぐアンジェリナと合流して、


「カイ君、何か感じ取ったのか?」


「いや、わかるのはでかいだけ、なんか生き物ぽくないっす。」


 話っている途中、怪物は再びカイに襲い掛かる。光剣で防御したいが、今回は攻撃軌道を読み間違ってしまった。すぐ防御をあきらめ、後ろ大ジャンプで回避したが、胸辺りはやはり斬られて、かすり傷ができてしまう。


「カイやん、傷口の血を使って!」


「この血で、相手を呪い殺すのね!」


「ちがーーーう!血痕で相手の位置を把握するの」


「こいつと結婚するの?」


「……」


「あ、そうか」


 カイはやっと理解したのように、手で傷跡の血を拭て、怪物の方向にばら撒く。


 血が怪物のボディに付き、空中にあちこちに血の跡が見え、攻撃軌道まではやはりわからないが、一応見やすくなる。


「やるね。嬢ちゃん。どこから戦闘経験積んだの?」


「いやああ、もしいまバニーガールがいたら、古さんが鼻血が噴き出して、これで相手の姿が完全に特定できちゃうのにな」


「は?」


「なんでもないです」


 こういう時は、諸葛夢が恋しくなる。


「しかし、攻撃軌道が読めなくては、カイ君はやはり不利だ。」


 急に何か思いついたか、


「古さん、このトレンチコート、貸して」


「なんで?」


「早く脱げ!」


「わわわ、わかったよ。千切るな!」


 アンジェリナは古天仁のトレンチコートをもって、すぐ先の穴に戻る。しばらくすると、何かを包んで、外に出る。


「カイやん!気を付けて!特に目!」


 古天仁のトレンチコートを振る。すると、中からたくさんの土が舞い上がって、怪物の体にべったりと貼りつく。


「先、自分の服の埃を叩くとき気づいたが、ここの土って、ちょっと湿っぽくてべたべたするのよね。」


 カイはケホケホと咳はするが、目は無事だ。これで、怪物大体の輪郭は見える。


 二メートルぐらいの高さで、鎧武者のように無機的な姿をし、右手は非常に長く、剣のような形がする。たぶんあれは武器だ。


 土はいくらべたべたとしても、粘着力が弱く、ボロボロと落ち始める。


「カイ君、今のうちだ!」


「ああ、わかってるっす!」


 カイの光剣は、土砂降りのように、怪物に突き刺す。空中に無数の火花が飛び散る、が、相手は結構固く、あんまり出ごたえがない。


 もしこの見えない怪物はロボットだったら、もしかして火器を持っているかもしれない。


 ふと思う古天仁は、


「カイ君!必殺技を使え!持久戦は危険だ」


「おうよ!」


 古天仁の指示を聞いて、カイは一歩踏み出し、弓歩(きゅうほ)※体勢で数十発の突きを繰り出す。


 ほぼ全部食らった怪物は後ろに倒そうになったその時、カイは素早く背面に回り込み、再度弓歩をする。


 今回の弓歩は、踏み出すの足が力強く、石の地面にくぼみを開けるほどだ。カイはこの体勢で、上に向かって、猛烈な一振り、バランスの崩れた怪物は、両断され、爆発した。


 カイはグルグル後転して爆発から逃げ出した。とどめたかどうかはわからないから、しばらくまた警戒する。


 どうやらもう安全のようだ。カイは汗を拭き、アンジェリナの元に戻る。その時、林宇兄妹も現れた。


 一行はちょっとした会話をし、洞窟に出ようとする。しかし、パウズはまた何かに警戒し始め、今回は巨大は黒影が、ゆっくりと迫ってくる。


 黒影を見て、林宇は思わずに絶叫


「えええええええええええ?俺の鉄甲人二号がなぜ勝手に動き出すの?」



 ※中国拳法で頻繁に使う体勢、片足はまっすぐ、もう片足は曲げて、重心降ろして立つ。一般的なスポーツでもよくこの体勢で準備運動するが、安定性が高いためか、上半身の攻撃力を増す効果があるとかないとか。


林宇の鉄甲人二号が勝手に動き出す?

次回を待て!

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