第二話 『黒と白』
新元学園の新旧校舎をつながり、学校鬼路と呼ばれる通路の中に、一匹巨大な怪物が、変わった鳴き声をしながら、野獣のように、ある少女を睨んでいる。
アンジェリナの前に立っている怪物は、全身長い毛に覆われ、身長2メートル以上のでかぶつだ。頭の上に目が六つで、淡くて緑色が光っている。口は円筒状で、なかは尖ってる歯がいっぱいある。逞しい両腕のまえに、固く、鋭く爪が左右三つずつ生え、金属のような反射光をしている。
アンジェリナはそこまではっきり見えなかったが、それでも尻餅をついて、座ってしまった。
「こ、これ、また夢? それともドッキリ? ねえ、全然面白くないから、もうやめて!」
怪物はアンジェリナの言葉を無視して、ゆっくりと前進する。
「れ、冷静だアンジェリナ、冷静。ええっと、こ、こういう時は、勇敢なヒロインを思い出せばいい、え、ええっと、例えば、ジャンヌダルク、巴○ミー、あと、ゴキブリ退治で火星に行くお姉ちゃんたち……って全員死んでんじゃん!」
ノリツッコミであった。
しかし怪物は受けるはずもなく、爪を高く揚げる。このままでは、軽く一振りだけで、アンジェリナは両断されるのだろう。抵抗しても無駄だと思って、アンジェリナはキャーと悲鳴を上げ、腕で目を遮る。
ボディガードと自称して、毎月給料もらったのに、いざというときはいない。怪物に食べられたら、絶対カイの前で化け出てやる。
と考えながら、アンジェリナはちょっと変だと思う。なぜなら、全然痛みが感じない。
即死の場合、痛みが感じないらしい。もしかしたら、目を開けると、怪物は今むしゃむしゃと自分の足をかじっているかもしれない。
目を開けてみると、無傷だ。頭を上げ、目の前に、怪物以外にもう一体の黒影がいる。どうやら振り下ろした爪攻撃は、この影が止めてくれたみたい。輪郭から見ると、男性のようだ。
「うわ、ありがちなヒーローがヒロインを救うシーンだ!」
「お前、先からうるさいぞ」
「は、はい、すいまへん。」
男は軽く爪を引っ張ったら、怪物はバランスを崩した。前に傾く怪物の顔面にパンチ一発。2メートル以上の巨体が、空中でグルグル回りながら数メートルも飛んだ。
男はぽきぽきと指を鳴らしながら、数歩あるいたら急に猛ダッシュする。怪物の膝を踏み台として、高く飛ぶ。空中からもう一回パンチを繰り出す。
またの顔面直撃だ。しかし、今回のパンチはさらに重く、怪物は完全に地面にねじ伏せられ、固い地面も、亀裂が入る。
攻撃後、男は受け身をとって再度体勢を整えて、怪物に向かって構える。
やっと起き上がった怪物は怒ったのか、吼えながら男に襲い掛かる。だが、怪物の爪攻撃はすべて男に捌かれ、ただただ周りの壁や柱だけに切り刻んだだけ。昔年のごみや雑草が崩れ、太陽の光がちらっと鬼路に入ってくる。
十数回の攻撃をかわしたら、男は右足から蹴りを入り、怪物の左膝を重く蹴った。そして、再度バランス崩れた怪物の顔面に回転蹴りを入れる。
再び蹴り飛ばされた怪物、今回は鬼路の外側に重く吹き飛ばされた。
これで怪物もやっと理解した。目の前の人の敵ではないと。すぐさま、後ろの森に逃げ込む。
男は怪物を追撃しない。逆にアンジェリナに向かって歩む。鳩みたい目が丸くするアンジェリナの前でしゃがんで、ポケットから小さな懐中電灯を取り出し、そしてもう片手の人差し指がアンジェリナの眉間に指す。
「あなたは今とても眠い。」
「いや、先眠ったばかりで全然眠くないよ。」
「だまれ!」ポンと殴った。幸い怪物撃退時の力量を使ってない。でなければアンジェリナは永眠になるのに違いない。
「おまえは今とても眠い。俺は三つ数えるから、数えたら一分間寝る。目覚めたらここ5分間の出来事は全部忘れる。いち、に」
「のポカン」
「三!」叫ぶと同時に男は再度なぐった。
気絶するほどの力を使ってなく、アンジェリナはちゃんと昏睡した。催眠術はたぶん成功だと判断し、男は闇へと消える。
一分後、アンジェリナは男の言う通り、目が覚めた。
「あれ、アンジェリナ、歩きながら寝たのかな。」
服についた埃を叩き落しながらアンジェリナは思う。やっぱり他の病院に行って再度検査を受けたほうがいいかもしれない。
腕時計再度確認したら、朝会あと三分未満。ノートをカバンに入れて、全力教室に向かって走り出す。三分以内1キロ走った成績はけして悪くない。が、結局間に合わなかった。
教室に入ると、シンちゃんこと沈先生は、ちょうど転校生を紹介しているところだ。
「シ、シンち、ゼーゼー、沈先生……」
遅刻に怒ってるが、アンジェリナの状態を見ると、沈先生も仕方なく、とりあえず座らせ、そして、続けて転校生を紹介し始める。
転校生に一番興味津々なのは、女子生徒たちだ。なぜなら、転校生は銀髪赤目、黒い服装、身長の高いイケメンだ。
「では、まず自己紹介してください。」
「諸葛夢だ。英倫中学から転校してきた。」
「……」
「……」
「もうちょいしゃべって」沈先生はちいさい声で言った。
諸葛夢は後頭部をボリボリ掻いて、やっと言葉が出た。
「よろしく」
「……」
「……」
「おっほん、ええっと、諸葛さんはね、英倫中学で、成績優秀、そしていろんな研究の手伝いをし、社会復讐に大きく貢献した。これからわが校の大学部に入学希望し、入学試験も合格した。そして、先に高校部に転校してもらって、先にわが校の文化、校風を勉強してもらうことにした。これで、大学に入学したら、さらにスムーズな学習や研究ができ、将来ネオシャンハイの再建設に役立つ人材になれるであろう。では、みんな拍手を!」
この拍手は、沈先生自身に向かわせたのか、諸葛夢に向かわせたのかはわからない。パチパチパチ、女子のほうが一番力入れた。
「では、諸葛さんは、一番後ろ、班長の後ろの席に座りなさい。」
いきなり学校のリトルマドンナの後ろに座れるとは、転校生は運良すぎだと、男子たちはかなり不満のようだ。このリトルマドンナは現在ハンカチで全力汗拭いてて、魅力のかけらもないのにもかかわらず。
諸葛夢はクラスメイトの議論を気にもせず、一番後ろの席に座った。転校生紹介の件が終わったから、沈先生はやっと本題に入る。朝会の、いつもの一人のトークショーだ。やっと息整えたアンジェリナ、本を前に立てて、こっそりと諸葛夢に振り向く。
「おはよう、諸葛さん。あたしアンジェリナ、司馬アンジェリナ。このクラスの班長です。」
と言いながら、手を伸ばして握手しようとする。しかし、諸葛夢はアンジェリナの手を無視して、全く無表情でトークショーを観賞し続ける。ちょっと気まずいと思って、アンジェリナは手を下ろして再度諸葛夢を見る。
「諸葛さん、あたしたち、どっかであったことあります?」
この話はちょっと意外だ。諸葛夢も思わずに、目の前の女の子を見始めた。
最初からちょっと気になってたが、なぜ高校三年生の教室に小学生がいるのか。いま近くよく見ると、思ったほど小柄じゃないが、それでも精々中学生ぐらいだ。
金髪碧眼で、大きなポニーテールの髪型をしている。顔つきは東洋美人と西洋美人を足して二で割ったような、典型的なハーフの顔つきで、確かに美しい。男子生徒の不満や愚痴も理解した。
しかし一番気になるのは服装だ。まずめちゃくちゃ大きな首輪をつけている。首輪のサイズをもうちょっと大きめにすれば、完全にベルトだ。首輪の前に、紫いろの鈴がついている。現在若者のファッションかな、と、ふと思う。
そして服のほうは、先暗闇の鬼路ですでに気になった。どう見てもセーラー服だ。災前日本の女子学生がよく着てる制服に似てるが、中国では特に制服着用する伝統がなく、クラスのほかの生徒たちも制服着てないから、一人だけ浮いている。自分の真っ黒な服と対照的に、アンジェリナの服は白がメインだ。
そう、先鬼路でアンジェリナを救ったのは、ほかではなく、諸葛夢だった。たしかに催眠術はつい最近習ったが、成功したはずだ。それでも自分をうろ覚えているってことは、この子娘の精神力は極めて強いかもしれない。
でも、それだけだ。
「人違いだ。」
「でも……」
「でももかももない、うるさいな。」
「ぶう」
どうやら転校生はめちゃくちゃ無愛想の人だと、アンジェリナは思う。先猛ダッシュしたのせいか、また睡魔が襲ってきて、彼女は本の後ろで再び寝た。
アンジェリナのとなりに座っているのはカイだ。今日お芋先生の機嫌がいいのか、あんまり説教せずにカイを帰らせた。先の会話を聞いて、カイはイラっと来た。
何だその態度は、朝会終わったらこの転校生を一発殴ろうと、カイは思う。
カイは確かに喧嘩強いが、暴力傾向やサディストではない。ただ、彼の勘では、この転校生も結構喧嘩強いのようだ。せっかくいい相手が来たのだ。ついでに腕試しもやってみたい。
45分の朝会はすぐ終わった。振り向くと、諸葛夢はすでにいない。逃げ足早いなと思って、カイはすぐさま教室から出る。しかしそれでも諸葛夢の姿はない。あきらめようとすると、窓から鬼路に向かってる諸葛夢を見た。
「すげえ早いな。どうやって、窓から飛び降りたのかあいつ?」
三年の教室は四階にある。四階から無傷で飛び降りるのは、カイもできる。しかし問題は、窓が全部閉っている。
どんな手品を使ったのか、この転校生にさらに興味を持つカイは、窓を開け、自分も飛び出し、こっそり諸葛夢を尾行する。しかし諸葛夢は鬼路に入らず、さらに東の森に向う。
あの森に何かあるのか。
と思って、カイは引き続き諸葛夢の後を追う。
森に入った諸葛夢は、ポケットから小さな金属のかけらを取り出し、あちこちに振ったり向けたり、全く意味不明な行動をとった。
「のぞき趣味は感心しないな。」
数回の行動したら、諸葛夢は突然しゃべる。
「いつ気づいた?」
カイも仕方なく、木の後ろから出た。
「誰かさんが四階の窓から飛び降りたときだ」
「げ」
「見世物じゃないから、さっさと帰れ」
「なんだよその態度。先もそうだ。今すぐ教室に戻って、嬢様に謝れ、さもなくば……」
と、微笑みながら、カイは指をぽきぽき鳴らした。
「なんだ、犬か。ここディスクないぞ」
この話を聞いて、ちょっとむかっと来たカイは、諸葛夢に向かて飛び蹴りを出す。躱されたが、着地してまたすぐストレート数発打つ。
諸葛夢は全てもパンチをかわし、最後自分の左手がカイの左手、右手が右手を掴んで、二人はXの字になって、やっと攻撃が止まった。
「どうだ。犬の攻撃も悪くないだろう。もうちょっとやらせてよ。転校生さん!」
いつも笑ってるような細目をしているカイも、興奮で目が開け、きらきらと光る。
「俺は犬の散歩に、ん?」
「散歩人?」
カイはすぐ諸葛夢の警戒を理解した。上から殺気を感じる。頭を上げ、上を見ると、巨大な何かが落ちてくる。このままじゃまずい。やっと二人が手を離れる。巨大物が着地の衝撃で二人とも数歩後退され、周りは埃が舞い上がる。
やっと鎮まったところで、そこに現れたのは、六つ目の怪物だ。