第二十七話 『泰山決闘』
ついに決戦が始まる。この戦いの行方は?
新元4年9月11日、地平線から太陽はまだ見えないが、空の色はすでに少し変化した。ネオシャンハイを囲む山の一角、かつて泰山と呼ばれた場所。
不審者が勝手に入らないように、あちこち張られたバリケード、そして審査や病院送りのために設置した城門と衛兵所、中には熟睡している衛兵たちがいる。
城門から泰山につなぐ細い道、この辺りの断崖絶壁から降りて、ネオシャンハイに入るには、避けては通れない道。
道端の巨石上、剣魔百吼が立っている。深夜最後の風に吹かれながら、久しぶりに見つけた好敵手を楽しんで待っている
ジリリリリリリリリリ
金属を引きずって、地面と摩擦する音。諸葛夢は、巨大な武器をもって、やってきた。
目は見えないが、心眼で武器を観察し、百吼は溜息をする。
「どうやら一晩で武器を探すのが無理な注文だ。そのような武器で、どうやって拙者と戦う?」
百吼は石から飛び降りて、帰ろうとする。
「今日は見逃してやろう。いい武器手に入れたら再戦しよう。だが、少女の命はないと思え、雇い主の依頼もあるしな」
突然、後ろから殺気が感じる。しかも猛スピードで接近してきた。振り返ると、諸葛夢はすでに後ろで持ち上がった武器を振り下ろしてきた。
その武器は長くて重い。このままじゃ防げ切れないと思い、百吼はすぐ右側に避ける。一応避けたが、バランスが悪く、すぐには反撃できない。
武器は地面に叩き込み、固い石の地面が大きな切口が開ける。それとともに、激しく振動し、百吼の足は微かにしびれる。
反撃のチャンスを与えずに、諸葛夢はすぐ左方向に、武器を振る。遠心力を利用したいのか、遠回りして、円を描きながら、もう一度百吼に切りかかる。
動作が遅いからか、百吼はすでに気づき、重心を大幅降ろし、一撃を避けた。
できる者同士の対戦では、高さを捨てるのが痛いが、百吼はそれを機に、諸葛夢の足に切りかかる。
諸葛夢ももちろんこれを読んだ。武器の慣性を巧みに操り、地面に刺し。これを支えとして、百吼の下段切りを避け、さらに顔面に蹴りを入れた。
百吼は慌てて鞘で防御するが、この一蹴りでかなり弾かれた。
諸葛夢はすぐ武器を抜き、追撃するが、百吼は紅朧で二回振って、バツ状の青い刀気が諸葛夢に飛ぶ。しかし刀気の威力が弱いか、諸葛夢は防御もせず、武器を縦に持ち、刀気を弾きながら突進する。
これで避けようがない。だが威力は弱いと判断する百吼、すぐ刀で防御するが、押されて巨石にぶつかる。
百吼は身動きが取れない一瞬、諸葛夢はすぐ後ろに後退して、もう一度横斬りを繰り出す。
狼狽して避けたが、巨石は一刀両断された。ギリギリバランスを持ち直し、右足を力いっぱい地面を踏む、百吼は再度バツの刀気を放つ。
今回の刀気は先より明らかに強く、諸葛夢はさらの追撃をあきらめ、武器を盾として、刀気を防げた。
これで、二人は再度距離が開け、各自構え直した。
前にここまで気持ちよく戦ったのはいつだったのだろう。百年前?千年前?人間相手なら、初めてかもしれない。と、百吼は思う。
諸葛夢の所持する武器、剣に見えるが、刀身だけで二メートル以上の長さで、幅は三十センチにも及ぶ。柄らしき部分も1メートル以上あり、しかしどう見ても茎に布を巻いただけ。
パッと見ると、重さは数百キロにも及ぶが、ここまで自在に振り回すとは、自分の“目”に狂いはないと、百吼は自慢げに思う。
「おぬし、その武器は?」
「知るか。借りたものだ。それに……」
「これから死ぬやつに教えても意味がない、か?おぬし、たしかムウって言ったな。」
「あいつ、余計なことを……」
「拙者は百吼、剣魔百吼と申す。名を聞こう」
「諸葛夢」
「では諸葛殿、もう一つだけ問おう。なぜ、拙者は剣魔だと、しかも中高位まで」
「俺は猟魔人だ。これぐらいはふつうだろう?」
「猟魔人なら拙者もむろん知っている。」
百吼は刀を構え直し、
「だが、格まですぐわかるものはほぼいない。おぬし、もしや『全魔宝典』を?」
「うるさいな。どうでもいいだろう?どうせ今日死ぬんだし」
「死人に口なし。どうせなら、教えても構わぬだろう」
「は?」
「失敬。聞いたばかりのくだりを使ってみたかっただけだ。では、そろそろ再開しよう。休息はもう十分だろう?」
その言葉を聞いて、諸葛夢は一瞬、ぎくりと動揺する。
図星だ。最初は速戦即決を狙ったが、相手は意外と粘る。あのままで戦うと、いずれ自分がやられる。わざと自分に休憩時間を与えるとは、かなりの余裕が見える。
先百吼の刀気は青い、血の強化効果はもうほぼ残っていないと判断する。だとすると、また強化する気だ。
諸葛夢の予想通り、百吼は自ら刃を握り、手のひらから血が垂れ、刀は再び赤く光る。
「紅朧は本初吸血剣の血爵と違って、半永久的に強化は無理だ。だが、利点もある、血の持ち主の力と比例して強化可能だ。では、死ぬ準備はできたかな?諸葛殿!」
話が終わったら、百吼は消えた。
諸葛夢はすぐ大剣を地面に刺し、百吼の気配を探る。
右、いや、左だ。
諸葛夢はすぐ左に向かう。こういう高速の攻防では、大剣は極めて不利だ。だから素手で対応する必要がある。
方角は正解だが、相手のスピードは予想以上だ。すでに懐に入った百吼は、赤い残像とともに、紅朧を諸葛夢に刺す。
ぶすっ
赤く光る妖刀紅朧は、諸葛夢の体を貫く。
善戦したが、再強化した百吼はやはり強い。妖刀紅朧は諸葛夢を貫く。諸葛夢の運命は?
次回を待て!